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高校生「菊池陽介」

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「変わらないことなんてねぇんだよな」
「急にどうした」
「いや、ドラマの影響」
「相変わらず単純だな」
 県立富士翔高校の三年七組、教室の片隅で菊地陽介と金井弘の内容のない会話が繰り広げられている。
 もうすぐ進路のことも決めなければいけない時期。陽介はまだ進学するか就職するかも決められていない。毎日をなんとなく過ごしてきたから、やりたいことも見つけられないでいる。
「空は青いなぁ」
「そうなー…。なぁ、進路決められたんか?」
「おー、それな。まだなーんもだ。ヒロは? 」
「俺は家業継ぐためにも大学で学ばんと。とりあえず進学」
「ほーか。さすがにその進路は参考にできねぇや」
「俺のこと参考にしようとしないで自分のやりたいこと探してみろよ」
 そんな指摘を受け、少し真面目に考えようとしてみたが、すぐに答えが出せるわけもなく、またうやむやなままに一日を過ごしていた。

 数日後、保護者を交えての進路相談があった。
「そろそろ何しようかって決まったの? 」
「いや…まだ」
「はぁ…今日の面談で少しは進められたらいいけど」
 親からもしつこく心配されているのだが、決められてない以上は何も言い返せない。
「やー、待たせてすみません。じゃあ面談始めましょうか」
 先生が前の生徒との面談を終えて、俺の番がやってきた。
「えー、菊池君は…まだ未定か」
「そうなんですよ…家でもそういう話になると不機嫌になってしまって、話し合いが進まなくて」
「とりあえず今日のうちに方針だけでも決めような」
「はい… 」
 その後の面談でも明確に決めることはできず、とりあえずやることを見つけるような名目で進学にしとこうということで話はまとまった。というか、まとめられた。そこに自分の意思は殆どなかった。
 
「昨日の面談で決まったんか? 」
「とりあえず進学だよ」
「進学にしたのか」
「したっていうか、されたって感じ。やりたいことないならそれを見つけるために大学行けばって」
「そんなんで決められてもなぁ」
「でも、そのくらいで決めてるやつも結構いるってさ」
 弘はかなりしっかりとした目的があって進学。陽介はなんとなく進学。同じ進学でも、意思の強さの違いがハッキリしていて、やる気にも差が出ている。
 弘は少しずつではあるが、成績が向上し、勉強にものめり込むようになった。対照的に、陽介はこれまでと同じようにただなんとなく毎日を過ごしている。
 それまでは漠然と過ごしていた陽介も、一番近かった弘が変わっていったことを感じ取り、焦りが出始める。
「なぁ、最近張り切ってんな」
「あー、もう近くなってきたしなぁ。陽介は相変わらずだな」
「やる気出ねえんだよなぁ」
「そんなこと言ってられる時期でもないだろーよ」
「ん…まぁそうなんだけどさ。ヒロも少し肩の力抜いたらどうよ」
「ラストスパートまで気は抜かねぇさ」
「ふーん」
「なぁ陽介、もう少し集中してみたらどうよ」
「なんも決められてないのに集中もなにもねぇよ」
「進学することは決めたんだろ?じゃあその為にやれることはあるだろ」
「まぁ…あるだろうけど」
 陽介の焦りは弘を道連れにしようとしていたが、弘はしっかりと前を見据えていたが為に、陽介の思惑にはまるで乗らなかった。
 本気ではなかったとはいえ、人を、それも友人を貶めようとしていたことに気づき、自己嫌悪に陥った。自分が駄目だからって人を巻き添えにして、無意味な安心感を得ようとしていた。
「なぁ、ヒロ。俺もう少し頑張ってみるよ」
「急にやる気になったのかよ」
 ヘラッと笑う弘に陽介もつられて笑った。この友人とは高校を卒業したら会う機会はグッと減る。だが、友人なことに変わりはないのだ。
 
 自分の不安を分かち合い、気持ちを知ってもらい、言葉をかけてもらう。それは悪いことではない。
 ただ、同じ状況へと引きずり込み、自分と同じような駄目な人間にして、安心感を得たって、それは相手だけでなく、自分の成長も止めていることになる。
 一歩前で踏みとどませてくれたのは弘だったからだろう。
 共に成長し合える、成長を喜びあえる友人を持てたことを、今はただ感謝する。
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