物語は突然に

かなめ

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それぞれの立場

改めて

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朝食をと言われて、思い出したかのように鳴るお腹。顔が真っ赤になったのが自分でも解る。汗をかいた訳でもないのに暑いし。
ぎゃーーーーーー、恥ずかしいぃぃぃ!
き、聞こえてないよね?私、小さいしね?聞こえてないって──
「済みません。結構お時間とってしまいましたから、お腹空いちゃいましたよね」
クスクス笑いながら言われちゃいました…。聞こえちゃったんデスネ…そこはスルーしてほしかったデス…。て言うか!こんだけサイズ違うのに聞こえちゃう私の腹の虫って、どんだけ!?渋メンさんも咳払いしながら視線を逸らしてる…。穴があったら入りたい。けど穴は無いから、もういっそ、もう一度クッションの下敷きになりたい。
そんな感じで悶絶している私をおいて
「直ぐ支度しますので、少々お待ちくださいね」
部屋を出て行く二人。支度すると言って、何処に行くのか、何故二人で行くのか、気にしたほうがいいような気もするのだが。だがそれよりも。鳴り止まない腹の虫をどうにかしたくて、それどころじゃなかった。…だって女の子なんだもん!重要だよ!?








「…で、彼女は何だって?」
「彼女は私達がまだ出逢っていない新しい種族なんだそうです」
部屋を出て少し歩いてから聞いてみたら…新種族?何だ、その話は。どう言う事なのか歩きながら説明を聞く。
内容はというと、彼女は古代魔術言語を使うニンゲンという種族で、両親の不幸の最中に何らかの影響で此の地に来て、そして私と逢って今に至ると言う事だった。先ほど彼女が泣いたのはその両親の事だったとも。そして今は彼女に朝食を用意するのだという。まぁ、お腹を空かせているようだったし、それは良いとして。
「なあ…お前は彼女の話をどう思ったんだ?」
今の今までに、使が誰の目にも留まることなく存在出来るものだろうか?何処かしか、何かしらの伝記にでも少しは記されていそうなものだと思うのだが…どうなのだろう。自分はそこまで種族間の伝記に詳しい訳では無いから解らないが、ジリスなら解りそうだと思う。
「そうですね…
正直に言わせてもらうなら、有り得ない、ですかね…」
ジリスの言葉にそうだろうと自分も頷く。普通に考えれば確かにのだ。古代魔術言語というのは、数千年とも言える歴史ある種族しか使わない。それだけ古いものなのだ。そんな古くから現在まで存続している種族が誰にも知られていないとは考えられない事である。
「ですが…」
「む?」
歩みを止めて、
「彼女…嘘を言ってるような感じがまるで無いんですよねぇ…」
困ったような顔を此方に向けて、そう言ったのだった。思わず視線を逸らす。
そう、自分もそう感じたのだ。自分は話は解らない。だから彼女の事をただ見ていたのだが、嘘を吐いている素振りは無かったのだ。隠している事くらいはあるかもしれないが、それは此方をよく知らないのだから当然と言えるくらいのもので、此方にだって隠し事の一つや二つあるのだから、どうというほどのことでは無い。

問題は全て事実だった場合だ。

まだ知られていない古代魔術言語を使う種族が、何らかの影響で自国から強制的に連れ出されたような形でこの国付近にいたという事。

「マズいな…」
「そうですねぇ…」
ほぼ同時に溜息が出る。
「取り敢えず、王には報告だけしておく」
本来なら、彼女の保護も自分がすべきなのだが如何にも自分では会話もままならないので、そうも出来ないのだ。
「済まんが、彼女の事、宜しく頼む」
面倒事を押し付けるような形になってしまって申し訳無さでいっぱいになる。せめて何事かあった時には直ぐにでも駆けつけるので何でも言ってくれと頭を下げる。
「大丈夫ですから、そんなにお気になさらずにいてください。
取り敢えず彼女に朝食を出した後、一度彼女を連れて屋敷に戻るので、その旨もご連絡をお願いしても宜しいですか?」
その願いに勿論と応えると、ジリスは一回笑顔を浮かべてから厨房のほうへと向かって行ったのだった。
さて。自分も王に報告しなくては。

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