物語は突然に

かなめ

文字の大きさ
上 下
15 / 77
最初の知識

古代魔術言語

しおりを挟む
「魔術言語では無いのですか…此れで…?」
私がさっき書いた落書きの紙を持って独り言のように呟く眼鏡さん。全然そんな大した物じゃないんですけど。ただの落書きなのに、そんな大袈裟な。眼鏡さんが本棚から一冊の本を持ってくる。
「此れには古代魔術言語が記されているのですが、これ…此方を見てください。此処に書かれているものは、先程のものと同じですよね?」
指された所を見れば、確かに『火』の文字が。て言うか、何、この本。国語の教科書?しかも…小学校レベルの。えぇ~、これが古代魔術言語の本って…本気ですか…?
流石にあんまりな感じだったので中身を確認させてもらおうと
「ちょっ、ちょっと見せてもらっても良いですか?」
「えっ、あ、はい。どうぞ」
眼鏡さんに許可をとってから、適当にペラペラ捲ってみる。よく見ると流石に国語の教科書ではないらしく、魔術としての使用方法が何たらとかも書かれていた。日本語全開で書かれているけど、一応魔術書らしい…バリバリ日本語だけど。本を閉じて表紙を見たら、『魔術の心得(中級)』って書かれてた…。中級って。小学校レベルなのに中級とはこれ如何に。じゃあ初級は何だよ、絵本とか?本気か、異世界!?それで良いのか、異世界!?もう一回、本を開く。適当に捲って、さっきの魔術としての使用方法云々の所を読む。魔術言語の成り立ちを知り、イメージを固定して正しい理解の元に言葉に力を与えると魔法になる…って何やねん。言葉に力を与えるって、どうゆう事?意味解らん。頭の中にハテナマークを浮かべてた私に眼鏡さんがまた声をかけてきた。
「あの…其方に書かれているものは読めるのですか?」
「読めますよ」
「でも、魔術言語としては使わないと…言う事でしたよね?」
「使わないですね」
「何故なのでしょうか?」
「何故と言われても…」
困る。そんな使用方法しらんし。眼鏡さんが心底不思議そうに此方を見ている。
「あの…言葉に力を与えるってのがよく解らないんですが」
正直に答えると、眼鏡さんはこれまた心底、意味が解らないというような顔をした。
「言葉に力を与えると言うのは、その言葉通りです。言葉にすれば良いのです。成り立ちを知り、意味を知り、正しい発音で正しくイメージをし、それをそのまま言葉に乗せていけば魔法として発動されます」
「そんなんでいいの!?」
おっと、つい本音がダダ漏れてしまった。いやだって、そんなんで魔法使えるようになるの?本当に?
「そんなのと言いますが…古代魔術言語は言葉が多く、その言葉の成り立ちを知る事は難しい事ですよ?しかもその意味も発音も正しくと言うのは本当に難しいのです」
……………………。
ソウカー。日本語って世界で一番難しいとか言われてるもんねー。ナルホドー。
取り敢えず古代魔術言語がバリバリの日本語で、メッチャ難しいって言われているってのは解った。そう言えば眼鏡さんの発音も日本語が話せる外国人みたいなアレな感じだし、正しく発音っていうのが特に難しいのかもね。でもそれなら、私でも魔法使えそうだよね。成り立ちと意味、それからイメージね。最初にファイヤーボールとか叫んでた時はそこまで考えてなかったし、今ならもしかして出来る…?

コンコン

そんな事を考えていたら、誰かがノックする音が。誰だろう。眼鏡さんがドアまで行って対応して、そして振り返って言った。
「済みません。話に夢中になって忘れてました。昼食の用意が出来ているので御一緒に如何ですか?」
「はい、頂きます」
返事がちょっと食い気味だったかもしれない。仕方ないでしょ、さっき運動もしたし、お腹空いてたんだもん。


しおりを挟む

処理中です...