物語は突然に

かなめ

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最初の知識

新生活3

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「暇だ…」
お茶しながら待ってろって言われても、誰かと話をする訳でもなく、本か何かを読むでもなく、何もする事なく、本当にお茶だけでそんな長い時間過ごせないっちゅうの。いやクッキーもあったか。だからと言ってオマケクッキーがあったからって、どうしたって話だよ。暇には変わりない訳で。
机の上をウロウロしてみる。そう言えば、何かの本が置いてあったなぁ、と思い出して本のある場所まできて捲ってみる。ちょっと重い。当たり前か。自分より大きいし。どれどれ内容はっと………うん、読めん。デスヨネー。異世界の本とかちょっと、いや結構興味あったのに…チッ。お、あんな所にペンがあるし。持ち上げてみる。やっぱりちょっと重い。…インクにつけて書くヤツだね。暇だし、何か紙でもあれば落書きでもしていたいところなんだけど…無いなぁ。あ、あの引き出しとか見てみよう。机の隅のほうにある二段程の小さな引き出しをガタガタいわせながら引っ張るも、なかなか重くて出てこない。侮れないな、引き出し。やっとこ少しの隙間が出来たので、中を確認すると紙があるのが見える。
「やったね🎵」
一枚引き出して、何も書かれていないのを確認する。よしよし、暇潰しアイテムget~。何描こうかな~🎵紙を持ってペンの近くまで戻ると、フンフンと鼻歌まじりにインク瓶を開けようとして…って、これまた固くて開かないし。マジ固い。インク瓶あるあるだよね。良い感じに暇潰しアイテムを見つけたと思ったらコレだよ。も~!全身に力を込めて回そうとすると、ギリギリと音が鳴っている。もう少しで開きそう。更に力を込めて回す。
ぬっぅぅうっ!
…ギ……ギョリ…
回った!もう少しで開く!
更に力を込める。明日には筋肉痛になりそうなくらい力込めてる。
むぅあぁりゃああぁっ!
掛け声がいまいち乙女らしからぬ感じだけど、どうせ誰もいないので気にしない。格好も掛け声も『ちょっと見せられないよ』なアレだったが、その甲斐あって(?)蓋が開いた!
「よっしゃあっ!」
これでやっと暇潰しが出来る。
…暇潰しの為にこんなに頑張るとかどうなのって少し思わなくもないけど、其処はソレ。気にしたら負けだ。おもむろにペンを取り、インクをつける。
さて、何を描こう。先ずは慣らしとして、貝殻カップでも描いてみようかなぁ。





結構な良い運動になるね、これ。ラノベの妖精達、マジ凄い。尊敬するわ。いや、よくテレビとかで見る、あのデッカい書道のアレとかも実はこんな感じなのかも。しかも毛筆とかメッチャ重そうなのに。凄いな。
一旦ペンを置いて、お茶を飲む。まぁ、アレだ、このサイズでこんなペンで絵を描くとかもう無理ゲーかって感じでもう本当に何て言うかアレ。うん、アレよ、大体、こんなペンで描くとか慣れてないし、そもそもペン先がこう思ったように軽くは動いてくれないのが、もうダメダメすぎだし、それにこのサイズの紙に描くには、やはりそれ相応のサイズで描かないとね、こう、ほら、塗り潰れちゃったりとかしちゃうし…ゴメンなさい、紙の無駄遣いでした。仕方ないでしょ、描き難いんだってーーー!これ、アレじゃない、絵だから難しいんじゃない?字だったら、もう少し何て言うか見れる感じに仕上がるんじゃない?…たぶん。
よし、字を書いてみよう。あの書道的なあの、アレな感じで。…何て書こう。『火』とかで良いか。文字数もそんなに多くないし、イケるんじゃない、これ。
…………………。
今度はペン先を動かすのでは無く、ペンに寄り添うようにして書いてみる。
おっ!?良い感じじゃない、これ。やっぱり文字ならイケるじゃーん。よし、もうちょっとソレっぽく、格好良く書いてみよう。
…………………。
調子に乗って色々な文字を書いてみる。うん、案外、文字は上手く書けるって事が解った。
またお茶を飲む。どうでもいいけど、かなりの運動になるなぁ、これ。ペンがそれなりに重いせいなんだろうけど。
案外、書いている間に時間も経っていたのか、書いた物を見ながら少しボーッとしていると、ドアのほうからコンコンというノック音の後、直ぐに眼鏡さんが入ってきた。
「お待たせしました。もうお昼も過ぎましたし、そろそろ…って、此れ…此れは…っ!?」
入ってきたと思ったら、私の落書きを見てメッチャ驚いてる。え、何でそんなに驚いてるの?そんなに字が汚いですか?
「此れっ、此れは…っ、古代魔術言語ですよね!?あの…っ、もしかして魔術詠唱か何かの文字でしょうか?」
ぶはっ
思いっきり吹いてしまった。
真剣な顔して何かと思ったら、唯の落書きに何言っちゃってるんですか、この人。ドン引きしつつ
「いえ…暇だったので、ちょっと落書きしてただけですけど…」
と答えると、眼鏡さんは『火』の文字を指して
「落書き!?これが?
でも、これ、この文字は力ある言葉魔法呪文ですよね?」
と言ってきた。
呪文?これ、呪文なの!?これが!?って言うか!…バリバリ日本語なんですね…文字まで…。どうなってるの、古代魔術言語とやらは。

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