物語は突然に

かなめ

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今、ここにいる疑問

もう一つの話

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て言うか。何?二人とも結構エライ人?宮廷魔術師?お城に勤めてるって事?だからあの時お城に行ったんだ?!うわ~、何その驚きの設定。異世界にきたら取り敢えず初めに知り合いになるのは権力ある人、みたいなラノベ設定きた!え、何?やっぱりラノベかな?ラノベなの!?夢を見てる状態とかそんなヤツか!?そう言えばそんなラノベを読んだ事がーって、いっぱい読みすぎててドレか解らん!
寝てるの?私。
思いっきり頬っぺたをベチンッと叩いてみる。
「どっ、どうしたんです!?
大丈夫ですか?」
ジリスさんがメッチャ驚いてる。気にしないでください、ただの目覚まし行為デス。…痛い…。ちょっと強く叩きすぎた…。よく考えたら、此処に来た時に渋メンさん…じゃなくてウォードさんか。ウォードさんに思いっきりベチッとぶつかった事あるじゃん!全身これでもかってくらい痛かったっちゅうのに、夢な訳ないじゃーん!…何をしてるのか、私は。あ゛~…頬っぺた痛い…。
ジリスさんがアタフタしてる。
「あの、本当に大丈夫ですか…?」
「大丈夫デス、ただの喝入れデス」
「喝入れ…?あの、どういったモノなのか知らないのですが、それでも…あの、頬が…その、真っ赤になってますが…大丈夫ですか?本当に?」
痛そうですが、とか何とか呟いてる。痛いですよ?痛いけど、恥ずかしいからあまりそれには触れないでほしい。アレだ。ココは必殺の、話題転換だっ!
「それよりも!聞きたい事があるんですが!」
「えっ?あ、はい、何でしょう?」
ビックリしてる。大声すぎたかしら。
「あの~…ちょっと…疑問に思ったと言うか何と言うか…」
どうしよう?何て言えばいいのか。いきなりズバーッと聞いてもいいものかどうか。チラリとジリスさんを見る。その目には、私に対する害意のようなものは感じられない。どうする?この人を信じるか、信じないか。もう一度、チラリとジリスさんを見る。目が合った。さっきまで、何を聞かれるのかと不思議そうな顔をしていたのに、今は笑顔だ。目が合った時にニコッとした…さっき、大丈夫ですよって言ってた時のような笑顔。
信じよう。
あまいのかな?
でも。
「私…、私は、もしかして、此処に召喚された…そういう可能性があるんじゃないかと思ったんですが、どう、でしょうか…?」
真っ直ぐジリスさんを見て、言った。どう反応するのか。
ジリスさんは、それこそ驚愕そのものって顔して…その後、何かを考え込むように視線を逸らした。そして目を閉じて…肩を一回大きく動かしていた。深呼吸でもしたのかもしれない。目を開けた時は今までになく、厳しい目付きをしていた。ここまで、たぶん数十秒くらいだと思う。ジリスさんがもう一度目を閉じる。次に目を開けた時は、此方を真っ直ぐに見ていた。
「そうですね…。その可能性が高いと思います」
真剣そのものという目。その目を逸らす事なく続ける。
「正直に言えば、貴女が利用されようとしている、と考えています」
「利用?」
「はい。その目的は解りませんが、その可能性は極めて高いと言えます」
「待って、待ってください」
私を何に利用しようと言うのか。何も出来ないただの小娘だっていうのに。
「利用って、私は何も出来ませんよ?ただの一般庶民の小娘なんですよ?」
ジリスさんがちょっと困ったような顔をしている。
「そうですね。失礼ながら、私の目にも貴女は極々普通のお嬢さんに見えますよ」
「じゃあ、」
「問題はそう言った事ではないと思います」
え?どういう事?
「考えられる可能性の一つとしては戦争をおこすとかですかね」
…………………。唖然呆然ですよ。何処から出てきた、戦争なんて話。でもジリスさんは真剣そのものって感じだ。
「私達、イスタル族と貴女のニンゲン族は国としての交流がありません。お互いの事を全く知らない、そんな状態で今回、貴女というニンゲン族が強制的に召喚された…なんていう話が貴女の国に報告されたら。それがと誤解されたら、もしくは報告されたら。戦争が起きるには充分な話です」
な、ナルホドー。じゃないし。無い無い、戦争なんて。て言うか物理的に無理でしょ、世界が違うし。まぁ、ジリスさんはそんなの知らないから解らない訳で…。て言うか、ジリスさん達ってイスタル人て言うのか…どういう感じの人達なんだろう。まあ、それに関しては後で聞くとして。
「えっと…戦争は無いと思いますけど…」
「何故です?自国の者がいきなり攫われたようなものなのですよ?国として何らかの措置を取るのが当然でしょう?」
「それはそうなんですけど、たぶん私の国なら話し合いからだと思いますし、そもそも戦争とかしませんから」
「何故、戦争をしないと思うのですか?」
メッチャ信じられん、みたいな顔してる。
「法で決まってますし」
「法で!?」
「いくら自分の国の人間が攫われたと言っても、いきなり戦争に発展する事はほぼありません」
そんなんで戦争するとかだったら、北の人達ととうの昔に戦争しとるわ。
「そうなんですか!?それは…何と言うか、穏やかな種族ですね…」
「いや穏やかではないですけど」
「違うんですか!?」
「え~っと、昔、経験した大きな戦争の悲劇を繰り返さないように、という意味で法を定めたのであって、戦った事が無い訳ではないので、穏やかではないんじゃないかと」
「悲劇を繰り返さない為に…」
何と誇り高いのか…とか呟いてる。何か誤解が生じてる気がする。うん、きっと生じてる。
「まぁ、流石に国に攻め込まれたら戦うかと思いますが、今回みたいのはまず間違いなく話し合いで解決しようとすると思います」
「そんなに誇り高いのに、相手がした行為に対しては寛容であるとは…!何て素晴らしい種族なのでしょう…っ!」
……………………。
どうしよう、凄まじいほどの誤解が。
訂正しようにもジリスさんてば、自分の世界に浸って考え事してる。顎に手をやって考えるのが癖なのかな~。さっきもしてたし、朝もそんなだったような。
まあ、そんな事より。
本当にどうしよう?

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