物語は突然に

かなめ

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日々早々

新しい朝がきた。希望の朝…か?

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…何かボフボフ煩い。何処かで、あの、だの、済みません、だの言ってる声もする。煩い。誰だよ、セールスかよ、煩いよ!何時だと思ってんのよ!……時計…あれ…いつもココに…あれ?
あ゛!?
ガバッと跳ね起きる。ボフボフという音とともに揺れてる。ついでに
「あの、アイリンさん?朝ですよ?朝ご飯の時間ですよー。起きてくださーい」
なんて声も聞こえる…。ひぎゃぁぉあ!異世界ーーー!朝、早いな、異世界!まだ暗いのに、もう起きるんですかー?!外で困りましたねぇとか呟いてるのも聞こえてますよ?!取り敢えず急いで窓を開けて返事をする。
「お、起きてまーす!」
済みません。正しくは今、起きました、ですけど。
窓を開けてみて解った。うん、もう日が昇ってますね。しっかり朝ですね。済みませんでしたぁぁ!
「あぁ、起きてたんですね、良かった。おはようございます、朝食ですよ」
「お、おはようございます」
まだ、取り敢えず箱部屋の外へ出る。ジリスさんは私の姿を見て、
「着替えていたんですね。済みません、急がせてしまいましたか?」
昨日と違う服だったからか、そう言ってきた。済みません、起き抜けそのままの姿です。
「い、いえ、その、く、櫛が無かったので、ボサボサのままなんですけど…済みません…」
「櫛?あぁ…そうですね!うっかりしてました。済みません、鏡や櫛などの身仕度する物を用意していませんでした…済みません」
あるのか、櫛。私のサイズの櫛がある事に驚きですけど。
「済みません。今朝は魔法で仕度しても宜しいですか?」
そう言うや否や

『ドレッシー』

と呪文を唱えた。身体全体が白い粉のような物に包まれていく。まさかの小麦粉爆弾?!なんて事はなく。身体全体がスッキリしてる!髪までサラサラ~♫すご~い♫
「凄い!サッパリしました!」
ちょっと感動しつつお礼を言うと、いつもの笑顔で
「良かった。鏡や櫛は後ほど用意しておきますね」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「では朝食にしましょう」
よし。今度からこれをジリスマイルと呼ぼう。滅多に崩れない笑顔のジリスさんを見てそんな事を考えたりして。
「それで…今日なのですが、どうしますか?私は仕事なのですが、今日は通いの者も休みですし、自由にしてくださって大丈夫ですよ?」
「ほえ?自由に…?」
「えぇ。それとも私と一緒に来ますか?それだとちょっと変装してもらう事になりますが」
「変装?!」
何それ、面白そう!じゃなくて。屋敷に残っても出来る事は無さそうだし、一緒に付いてって帰る方法を探すほうがいいに違いない。そう、これだよ!別に屋敷に残っても昨日みたいに時間の使い道に悩むからだとか、変装が楽しそうだからとかじゃないよ!
「一緒に、行ってもいいですか?」
「構いませんよ。でもちょっと変装してもらいますけど」
「その変装ってどんなのですか?」
ちょっとワクワクしながら聞いてみる。いや違う。必要だから!必要だからですよ?!
「ご飯を食べ終わってからで大丈夫ですよ」
急いで食べよう。ご飯は相変わらず美味しい…って、あれ?さっき通いの人が休みって言ってなかったっけ?お?これ、ジリスさんの手作りですかっ?!もしかして今までのも…?
「あの、このご飯ってジリスさんが作ってるんですか?」
モグモグしながら(ちゃんと手で口元は隠してるよ?隠さなくても見えなそうだけど)聞いてみる。
「今日のは私が作りました。いつもは通いの者が作ってくれるのですが、今日は休みなので」
「お料理作るの上手ですね…」
完璧かよ、この人ぉ!
「いえいえ。一人が長いと自然に覚えるものですよ。私は結婚するのも遅かったくらいですし」
朝から絶好調のジリスマイルでそんな事を言ってるけど、私は知ってるよ!一人暮らしが長かろうと短かろうと、やらない人は全然やらないって事を。うちのお祖父ちゃんもお祖母ちゃんが亡くなってからずっと一人暮らししてたけど、全然やらなかったしね。
その後もちょっとした話をしながら朝ご飯終了。
「お粗末様でした」
「ご馳走様でした」
顔を見合わせて笑う。
「すぐに片付けますので、少しお待ちください」
そう言うと食べ終わったお皿をワゴンに乗せて運んで行く。うん、やっぱりジリスさん自身がメッチャ色々と出来る人なんだろうなぁ。何か…このままお世話になりっぱなしは良くないような…何か出来る事ないかな?お手伝いとか…サイズ的に無理すぎか。あ、それより今のうちに着替えるべきか。でもさっき魔法で綺麗にしてもらったのに着替えるとか意味ないような…。う~ん…する事ない。いや、出来る事がない。そう言えば付いてっても仕事の邪魔にはならないんだろうか?仕事ってどんな事してるんだろう。せめて仕事の手伝いくらいは出来るといいけど…。ジリスさんて司祭様とか言ってたよね。司祭様って何するんだろう。お祈りとか説教とか?あ、説法だったっけ?お城でそれはどうなんだろう?聞きに来る人いるの、それ?どっちかと言うと街中の教会とかそういう所でやるほうがいいんじゃなかろうか?…まぁ、異世界だし、地球とは違うのかもしれないし。解らんけど。侮れないしな、異世界。ていうか、今、何時なんだろう?時計がないからサッパリ…。時計がないもんなの?それとも、たまたまこの部屋にないだけなの?時計ないとか不便じゃないんだろうか。…むしろ多少ルーズでも許されそうだからいいのか?…うん、ちょっと異世界もいいなって思った。悪い事ばかりじゃないね。

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