物語は突然に

かなめ

文字の大きさ
上 下
33 / 77
日々早々

王宮へ

しおりを挟む
気を取り直して、いざ王宮へ~♫言うても私はジリスさんの服の中に隠れ中ですが。バスケットは遠慮したいと言ったら、代わりの案がなかなか出なかったので、それじゃあ胸ポケに入れてくださいって言ってみたのだ。最初は危ないからってなかなかOKしてもらえなかったんだけど、箱で運ばれると気持ち悪くなるから嫌って言ったら渋々OKしてくれた。これで外の様子をチラ見するのも可能だ!たぶん。
胸ポケに入って思ったのは〝羽根が邪魔〟だという事。よく漫画とかで胸ポケからヒョイっと出てきて~とかいうのは嘘だと解りました。絶対無理。あんなふうにすぐ羽根バッサーとか出来ないと思う。引っかかるし。それにただの胸ポケだと全身入らないし!魔法で拡張が必須ですよ。でもバスケットより居心地はいい。人肌でほんのり温かくて眠くなる。あかんあかん、寝たらアカン。
チョロリと頭を出して周りをソッと窺う。お?お城だ。もうお城がすぐ目の前に見えている。ジリスさんのお屋敷からお城までって案外近いのかな。他にも何か無いかとキョロキョロとしてみると、何か大きいお屋敷多いし…アレか、セレブな方々が住んでる地域って事ですか。つまりジリスさんもセレブ…。まぁ、お城で働いてて、しかもエライ感じの役職に就いてるみたいだし、セレブなのも当然か。それにしても…セレブな地域だからなのか、あまり人が歩いてない。たまに歩いてるのはメイドさん(みたいな格好してる人)とかだけで、後は馬車くらい。セレブって歩かないのかな。あ、でもジリスさんは歩いてるなぁ。まぁ、セレブでも歩く人は歩くんだろうし。当たり前だと思うけど…何か、何か、セレブって…。
門が見えてきた。門と言えば…あの怖い顔の門番さん!いや怖い目をした門番さん!慌ててポケットに潜る。また睨まれたら怖いし!ポケットの中で丸くなる。魔法で拡張されてるし、隠されてるし、大丈夫だと思うし、それ以前に何も悪い事してないけど、やっぱ怖いものは怖ーい!
「…………」
「…………………」
「……」
何か会話してる…けど、やっぱり何語か解らない。さっき変装魔法でメイクアップだったし…英語だったけど英語じゃないとは、これ如何に。英語だったらマスカレードかディス…ディスガイズだったと思う。英語じゃないけど、英単語発音の魔法はあると。だから私が英語で魔法を使った時も発動したのかも。でも意味や成り立ちは違うっぽいのに、地球の意味や成り立ちでも発動するのは何でだろう。…う~ん…解らん。何かな~、英語得意じゃないのにぃ。もっと簡単に言葉が解る方法がないもんだろうか。翻訳コ◯ニャクみたいなの欲しい!タスケテ、ドラ◯もん。
─────っ!?
いや!いやいやいや!閃いた!じゃなくて思い出した!言語理解だ!そんな魔法を何かのラノベで読んだわ!言語理解…意味は言葉を知識として理解出来てるって事…?いや、知識として解ってても理解出来てない物なんてたくさんある。言葉…言葉…いや、単語かな?単語を理解して、文法を使って、それが言葉として理解するってところかな?うん…例えば日本語だったら。海、山、川、そんなのが単語で、海という漢字と海そのままがちゃんとイコールで結ばれてないと知識として理解出来てない…って感じ…?大体、喋ってる時にそんなのいちいち頭に浮かべてないし。無意識に出てるもんでしょ。何ていうか、こう小さい頃からの習慣的な感じで海はこんな感じ~とか、そんなもんでしょ。あ、無意識にもう理解出来てるから、すらっと話せるって事?ん?だとしたら──
「アイリンさん」
「──っ!はいっ!?」
「着きましたよ」
は…びっくりしたぁぁ!考え事に夢中になってたら、いつの間にか着いてたらしい。いきなり声をかけられてメッチャびっくりした。ジリスさんの手を借りて机の上に出る。何かの書類が山のようにあるよ…。わ~お。
「窓際のほうが景色が良いですよ。其方に行きますか?」
窓際…確かに。中庭だろうか、花壇まである。
「じゃあお願いします」
「はい」
そっと掬うように手のひらに乗せて窓際まで運んでくれる。おお…近くに来ると尚一層、花壇の花が鮮やかでイイ感じ♡
花壇に気を取られていたら、ジリスさんが
「色々と準備もあるので、此処で少し待っていてください」
そう言って、部屋を出て行ってしまった。相変わらず行動が早い。仕事も出来ちゃう男なのかも。あ、エライ人だし、元々仕事出来ちゃうのか。…この世界には天は二物を与えずって言葉は無いんだろうか。いや、イイんだけど。
窓枠の縁の段差に腰かける。本当に羽根が邪魔だ…。私が慣れてないからだろうけど。コレもな~、本当に飛べたら便利なのに。……あっ!コレももしかして魔法で何とかなるんじゃね…?ちょっ、ちょっと試してみちゃおっかな…?


しおりを挟む

処理中です...