物語は突然に

かなめ

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神の書を求めて

vs古代竜

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が古代竜…。
小野篁と交流があり、日本語を話す竜。話し合いが出来るなら、話してみたい。もしかしたら帰るためのヒントを持ってるかもしれない。
そう思ったのだが、それは暢気な考えだったのだろうか、ジリスさんが杖を構えていた。その杖の先に何かの石を当てて

『エンチャントメイガス』

と唱えると杖が光り始めた。サラサラと零れ落ちるような光をまとわせたままのその杖を前に突き出して魔法を連発し始めた。

『マジックシールド』
『ブレス』
『ネーベルハオト』
『エレウ』

ここまで一気に唱えてから、ひとつ大きく息を吐く。
「良いですか?話し合いを試みてみますが、敵わなかった場合、迎撃しつつ隙を見て全力で退避する事。勝とうなどと思ってはいけません。良いですね」
「「「「了解」」」」
皆が一同に返事をしたのを聞いて、また大きく息を吐いている。
「ジリスさん…あの…」
「解っています」
そう言って弱々しい笑顔を作りながら
「可能であるなら話し合いをしたいところですが……正直、どう対応すべきか解らないのです」
また大きく息を吐いて、視線を古代竜に戻す。その表情はもういつものジリスさんのものではなくて。私は何て言ったら良いのか解らなかった。
さほど時間もかからず目の前に嵐と言っていいほどの風を起こしながら降り立つ竜。大きい。いや、今、私が小さいからかもしれないが…大きすぎて頭の方とかよく見えない。例えるならハムスターと人間くらいの差だろうか。勿論、私がハムスターで、竜が人間サイズとして考えて。…ハムスターもないくらいだったりして。いや、そんな事はどうでもよくて。
目の前に竜。燻んだような黄金色の身体に大きな羽根。見た目だけなら威風堂々、気高さも感じるような様といったところだろうか。
しかし…機嫌が悪いのか何なのか、只ならぬ気配もビシバシする。ハッキリ言って怖い。どんな状況、これ。竜ってこんなにホイホイと現れるものなの?!
「偉大なる竜よ、無知なる者に儀を問う事をお許しください」
ジリスさんの声に思わずハッとする。知らず竜の雰囲気に呑まれてたらしい。
「私達は貴方と争う意思は無いのです。何故この大陸にいらっしゃるのかは存じ上げませんが、どうか、どうかお目溢しを戴けませんでしょうか」
震えたりはしてないものの、緊張してるのが解る。いつもと違う硬い声。
竜はというと───

ギ、グ、グギャアァァォォォ

吼えた。
その瞬間、空気も大地も、空すら震えた──そんな感覚があった。
なぜこの竜は吼えている?
威嚇するため?そんな事はあり得ない。絶対的強者であろう竜がそんな事をする必要などないはずだから。
なぜジリスさんの問いかけに反応しない?
言語は通じるはずだ。ジリスさんが使ったのは日本語だったのだから。
何かがおかしい。
なぜこの竜は
何かがおかしい。本物の竜なんて見るのは初めてだし、比べる何かがいる訳でもないが、おかしい。何が?何処が?どうして?
……解らないけど、おかしいのだ。
どう言えばいいのか解らないが、変なのだ。
竜はというと、先ほど一回吼えた後、体を大きく揺らしている。何がしたいのかサッパリ解らない。ふと、揺らしてた体を止めたと思ったら、一度だけ大きく首を振り、口を開けた。開けた口の中で
何アレ?!
「全員、私の側に!早く!」
ジリスさんが叫んだ。叫ぶとか。ジリスさんが!?
まさか、まさか、まさかだよね!?

『マジックシールドッ!』
『マジックシールドッ!』
『マジックシールドッ!』
『ブレス!』
『ブレス!』
『ブレ』

ジリスさんの詠唱が終わる前に。
光。
光だ。
太陽が目の前にあったらこんな感じだろうか。

パリンパリン
バリンッ

何かが割れるような音がしたと思ったと同時に吹き飛ばされていた。いや、吹き飛ばされたのはジリスさんだろう。私は…ジリスさんが手でポケットを覆ってくれたおかげか、ほぼ無傷だった。何があったのか全く見えなかった。でも恐らくジリスさんが張ったであろう防御魔法を全て破壊して、更に私達を吹き飛ばしたのだ。
「ジリスさん!」
ジリスさんの呻き声が聞こえる。
他の人達は無事なんだろうか?
「ジリスさん!大丈夫ですか?!」

『ヒーリングオール』

「ジリスさん!」
ジリスさんの回復魔法だ!
ジリスさんが身を起こしたのだろう、視界が広がる。
「ジリスさん!」
「だ、大丈夫ですか…?」
私の位置からはジリスさんがどんな状態なのかまでは見えない。でも完全に回復はしてないのだろう、表情が歪んでいる。
「私は大丈夫です…。でも」
「わ、私も大丈夫ですよ」

『ゲネージング』

そう言ってもう一度回復魔法を唱えた後、何処から出したのか小瓶を口にしている。
「他の人達は…?」
「大丈夫。生きてますよ」
。無事とは言わない事で、どんな状態なのかが理解出来る。
竜はというと、何故かまた体を揺らしている。
「今の内に…」
何を言いたかったのか、言葉は途中で止まったので解らない。どうしたんですかと問おうとも思わなかった。
竜が。また口を開けて、またあの見えない渦を口の中で作っているのが見えたから。

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