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アンデッドの村
宣誓
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「……その羽根の無い妖精の特徴などは解っているのですか?」
ドキッとした。
ジリスさんは…どう思ったんだろう。何を聞くつもりなんだろう。何を考えてるんだろう。
「…黒いんだとよ。
…そんな妖精見た事ねぇが、アイツが言うには自分と同じ黒だとさ」
「羽根の無い黒い妖精ですか…」
……黒。黒って髪が?服が?それらだったら確かに私にも当て嵌まる。黒髪なのは言うに及ばずだが、服なんかは喪服だった。まさか本当に私の事…!?
いやいや!
もしかしたら肌が黒いとかかもしれないし!
焦っていた私は魔族が言った他の部分に気づかないまま、知らず胸の前で手を組んでいた。別に何かに祈ったわけじゃない。それなのに、組んだその手は力を入れ過ぎていて白くなっている。
「……手伝いましょうか?その妖精探し」
「な…っ!!」
「なんだと!?」
思わず声が出てしまったが、たまたま同時に発した魔族の声の大きさに上手くかき消された。
手伝うって。
「どういうつもりだ!?」
先程よりも一層低い声で質問してくる。
怖い。何がって。
「…別に驚くほどではないと思いますが…その妖精探しの片が付けば帰るのでしょう?」
「…あぁ」
「私としては貴方には早々に帰ってもらいたいのですよ。理由は説明しなくともお解りでしょう?その為には手伝い位します、と言う話です」
「………」
「それで?
この村でその妖精を探していたという事は、何か確信でもあったからですか?」
「…………」
魔族は答えない。ジリスさんはそんな様子には気にも留めずに話を続ける。
「探索魔法か何かですか?それとも目撃情報でもありましたか?羽根の無い黒い妖精…なんて、目立ちそうですしね?」
「………どういうつもりだ」
同じ声で同じセリフ。いや、さっきより機嫌が悪そうにも聞こえる。だが、それへの返答も変わらず。
「それに関しては言いましたよ?
貴方には早々に帰ってもらいたい、とね」
そう。さっきもそう言っていた。でも。
「それだけなら国に言やあ済む話だろうがっ!
どういうつもりだ!?何で俺を手伝う!?テメェに何のメリットがあるっつぅんだよっ!」
その通りだと思う。
国同士での決まりを破ってそこにいる魔族。そしてジリスさんの立場であるならそれは無視出来ない。それならば何故、国に報告しないのか。
今、私はジリスさんの服の胸ポケットにいる。そう一緒にいるのだ。魔族の言う、その妖精が──私である可能性が高い──そう考えれば、むしろわざわざ国に報告するほうが手間だろう。そのまま手渡しでもすれば良いのだから。
ゴクリと、喉が鳴った。
怖い。
私をどうするつもりなんだろう。
怖い、怖い、怖い。
私はどうしたら良いんだろう。
「メリット…ですか」
「そうだ。わざわざ俺を手伝おうとするなんざする意味が解らねぇ。何を企んでる?俺に何をさせようってんだ」
「企むとは人聞きが悪いですねぇ。
別に何をさせようなどとは思ってません。…まぁ、理由は簡単ですよ」
「理由?」
(理由……)
「えぇ。
私は所用でガルシア神国へ向かう途中なのですが、ここで貴方を捕まえて、尚且つ国へ戻って手続きをして、それからまた再出発…となると、ガルシア神国へ着くのはひと月後…下手をしたらもっとかかる事になってしまいます」
「……それで?」
「彼方から請われた事もありますし、これでも急いでまして。なので、妥協点を提示しただけです」
「…それを信じろってぇのか?」
「なんでしたら…誓っても構いませんよ?勿論、その時は貴方にも誓っていただきますが」
(誓う?)
誓うって…それが何の保障になると言うのか。
いやそれよりも。確かにガルシア神国へ行くのが目的ではあるが、別に急ぎの用だった訳では無いはず。そもそもその用は私が帰る為の方法を探す為のモノであって、直接的にはジリスさんは関係ない話なのだ。
それなのに………。
「宣誓か……」
考え事をしてる間に魔族が何やら呟いている。宣誓って何を大袈裟な。
「どうしますか?」
「……………」
魔族のほうも考え込んでいるのか返事がない。
私…私はどうしたら良いんだろう。
逃げる?いや無理でしょ。どうやって此処から逃げると言うのか。戦う…なんて、もっと無理!口喧嘩ならいざ知らず、いやそれも負けそうだけど、喧嘩だってした事ないのに戦うとか無理ゲー過ぎる!
いやいやいや…落ち着け、私。
何も別にジリスさんが私を魔族に渡すとは決まってない。そうだよ、まだ何も言ってない。
…でももし、そうだったら…?
…何か煩い。耳元でバクバクと音がしている。そんなバカな。何の音だって言うのか。何の…いや、これは自分の心臓の音だ。何故か耳に聞こえる。何で。そんなバカな。心臓の音が耳から聞こえてくるなんてある筈ない。バカな事を、と考えて口許が歪みそうになる瞬間、気付いた。いつの間にか息を詰めていた事に。途端に咽せそうになるのを必死で我慢する。
どうする?どうなる?どうしたらイイ?
グルグル巡る思考につられて息切れまでしてくる。落ち着かせようにも落ち着けない。落ち着ける訳がない。
何をどうしたら良いのか解らない。
吐きそうだ。
そんな思ったのと同時だったろうか、
「…解った。それでいい」
そう、返事が聞こえた。
ドキッとした。
ジリスさんは…どう思ったんだろう。何を聞くつもりなんだろう。何を考えてるんだろう。
「…黒いんだとよ。
…そんな妖精見た事ねぇが、アイツが言うには自分と同じ黒だとさ」
「羽根の無い黒い妖精ですか…」
……黒。黒って髪が?服が?それらだったら確かに私にも当て嵌まる。黒髪なのは言うに及ばずだが、服なんかは喪服だった。まさか本当に私の事…!?
いやいや!
もしかしたら肌が黒いとかかもしれないし!
焦っていた私は魔族が言った他の部分に気づかないまま、知らず胸の前で手を組んでいた。別に何かに祈ったわけじゃない。それなのに、組んだその手は力を入れ過ぎていて白くなっている。
「……手伝いましょうか?その妖精探し」
「な…っ!!」
「なんだと!?」
思わず声が出てしまったが、たまたま同時に発した魔族の声の大きさに上手くかき消された。
手伝うって。
「どういうつもりだ!?」
先程よりも一層低い声で質問してくる。
怖い。何がって。
「…別に驚くほどではないと思いますが…その妖精探しの片が付けば帰るのでしょう?」
「…あぁ」
「私としては貴方には早々に帰ってもらいたいのですよ。理由は説明しなくともお解りでしょう?その為には手伝い位します、と言う話です」
「………」
「それで?
この村でその妖精を探していたという事は、何か確信でもあったからですか?」
「…………」
魔族は答えない。ジリスさんはそんな様子には気にも留めずに話を続ける。
「探索魔法か何かですか?それとも目撃情報でもありましたか?羽根の無い黒い妖精…なんて、目立ちそうですしね?」
「………どういうつもりだ」
同じ声で同じセリフ。いや、さっきより機嫌が悪そうにも聞こえる。だが、それへの返答も変わらず。
「それに関しては言いましたよ?
貴方には早々に帰ってもらいたい、とね」
そう。さっきもそう言っていた。でも。
「それだけなら国に言やあ済む話だろうがっ!
どういうつもりだ!?何で俺を手伝う!?テメェに何のメリットがあるっつぅんだよっ!」
その通りだと思う。
国同士での決まりを破ってそこにいる魔族。そしてジリスさんの立場であるならそれは無視出来ない。それならば何故、国に報告しないのか。
今、私はジリスさんの服の胸ポケットにいる。そう一緒にいるのだ。魔族の言う、その妖精が──私である可能性が高い──そう考えれば、むしろわざわざ国に報告するほうが手間だろう。そのまま手渡しでもすれば良いのだから。
ゴクリと、喉が鳴った。
怖い。
私をどうするつもりなんだろう。
怖い、怖い、怖い。
私はどうしたら良いんだろう。
「メリット…ですか」
「そうだ。わざわざ俺を手伝おうとするなんざする意味が解らねぇ。何を企んでる?俺に何をさせようってんだ」
「企むとは人聞きが悪いですねぇ。
別に何をさせようなどとは思ってません。…まぁ、理由は簡単ですよ」
「理由?」
(理由……)
「えぇ。
私は所用でガルシア神国へ向かう途中なのですが、ここで貴方を捕まえて、尚且つ国へ戻って手続きをして、それからまた再出発…となると、ガルシア神国へ着くのはひと月後…下手をしたらもっとかかる事になってしまいます」
「……それで?」
「彼方から請われた事もありますし、これでも急いでまして。なので、妥協点を提示しただけです」
「…それを信じろってぇのか?」
「なんでしたら…誓っても構いませんよ?勿論、その時は貴方にも誓っていただきますが」
(誓う?)
誓うって…それが何の保障になると言うのか。
いやそれよりも。確かにガルシア神国へ行くのが目的ではあるが、別に急ぎの用だった訳では無いはず。そもそもその用は私が帰る為の方法を探す為のモノであって、直接的にはジリスさんは関係ない話なのだ。
それなのに………。
「宣誓か……」
考え事をしてる間に魔族が何やら呟いている。宣誓って何を大袈裟な。
「どうしますか?」
「……………」
魔族のほうも考え込んでいるのか返事がない。
私…私はどうしたら良いんだろう。
逃げる?いや無理でしょ。どうやって此処から逃げると言うのか。戦う…なんて、もっと無理!口喧嘩ならいざ知らず、いやそれも負けそうだけど、喧嘩だってした事ないのに戦うとか無理ゲー過ぎる!
いやいやいや…落ち着け、私。
何も別にジリスさんが私を魔族に渡すとは決まってない。そうだよ、まだ何も言ってない。
…でももし、そうだったら…?
…何か煩い。耳元でバクバクと音がしている。そんなバカな。何の音だって言うのか。何の…いや、これは自分の心臓の音だ。何故か耳に聞こえる。何で。そんなバカな。心臓の音が耳から聞こえてくるなんてある筈ない。バカな事を、と考えて口許が歪みそうになる瞬間、気付いた。いつの間にか息を詰めていた事に。途端に咽せそうになるのを必死で我慢する。
どうする?どうなる?どうしたらイイ?
グルグル巡る思考につられて息切れまでしてくる。落ち着かせようにも落ち着けない。落ち着ける訳がない。
何をどうしたら良いのか解らない。
吐きそうだ。
そんな思ったのと同時だったろうか、
「…解った。それでいい」
そう、返事が聞こえた。
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作者様のペースで楽しく書いてください。
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