井戸史上主義ラプソディー

姫宮未調

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2、少年たちの本音

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大小様々、カラーリングは多種多様。一家に一個ではなく、もう1人一個レベル。子どもは学校への通学用、旦那さんには職場への通勤用。

「ねーねー?中はどれもダンジョンなの?」

「ええ、そうですよ」

優しそうな奥さんが答えてくれる。

「じゃー、いつも同じダンジョン?」

「いいえ、毎日違うのよ」

トルネコ式だね。

「えー?だったら、遅刻しちゃったりするんじゃない?」

「まぁまぁ、ダンジョンはクリアすることに意義があるんです。早ければ表彰されますけど、皆毎日別々のダンジョンですから」

「それなら、寝坊とかしても起こられないね!」


◆◇◆◇◆◇◆


そんなやり取りをしている中……。


《悠真View》

「……なぁユーマン」

「名前を呼んでくれるのはありがたいけど、悠真でお願いするよ。」

「取り敢えず、ユーマン」

「……あんたもか。……なに?」

何度目かわからない溜め息をついた。

「……君はカリンのことが好きなのか?」

ぶっ!直球過ぎんだろ。

「好きは好きだけど、あんたのそれとは何か違う。
ちびんときから一緒だからな」

「?!幼いカリン……。さぞかし可愛かったんだろうな」

「アレを縮めただけ」

「可愛いじゃないか」

「……アイツを全面肯定したのはあんたが初めてだわ」

「ゼンメンコウテイ?」

「あー、要するに褒めるだけ褒めてるってこと」

マクシミリアン王子は納得がいったようで、頷いている。

「彼女は全てが素晴らしいよ……。可愛くて、自分を持っていて」

「まぁ……そうだな」

俺にはアイツは……、信念にすがりついているように見えてならないんだ。

「なんだよ?歯切れが悪いな」

「あ、いや。アイツ、あれで"17"なんだよなーって思って。どうでもいいだろうけど、俺は"15"な」

……リアクションが先過ぎて反応に困んだろ。

「……何でユーマンが同じ年なんだ。てっきり20くらいか………ふがっ!」

俺は王子の口を塞いだ。

「アイツとつるんでると"大人"びちゃうみてぇなんだわ~!」

更け顔なつもりはねぇよ!

「ぷはっ!いや、寧ろ……カリンが"12"くらいに……ぐぅ……痛いよ、ユーマン」

……王子の肩に力を込めた。

「……華凛が"12"に見えてたのに"プロポーズ"紛いのこと言いやがったのか、てめぇは」

「ゴメンナサイ。ユーマン、カオコワイ……」


◆◇◆◇◆◇◆


《マクシミリアンView》

「……俺は今まであんな女の子に出会ったことがない」

不思議な女の子だよ、カリンは。

「アレはどこにもいないだろ。存在が特殊だからな」

やっぱり個性ある女の子なんだな。

「俺は諦めないよ。いつか振り向かせてみせる」

「……頑張ってみれば?現段階では、同情買うしか気、引けないと思うぜ?」

そうだろうな。彼女は優しく、芯が強い。すぐに靡
なび
く女はつまらない。長い戦争の最中に舞い降りた天使、と言っても過剰表現ではないはずだ。願わくば、勝利の女神であらんことを。

「壁は高いほど登り甲斐があるものさ」

「アレは高嶺の花でもないぞ?」

「稀少価値はかなりあるじゃないか」

「珍しくはあるだろうけど……」

知り合いからのスタートで構わない。彼女は自分の限界を知っている。だから、無茶はしない。……するときは、本当に信じられる者の前でだろう。

「戦争の真っ只中だと言うのに、彼女の笑顔は癒しを感じるよ」

「確かに、嫌なことあってもどうでもよくなるよな。……傍目は能天気に見えるだろうから」

「……さっきから気になるな。何かあるのか?」

たまにユーマンの顔が曇る。俺はそれが気掛かりだ。彼女のことだろうから……。こんなに人が気になるのはいつぶりだろうか。

「何かあるってわけじゃないけどさ。アイツ、友だちらしい友だちがいないみたいなんだよ。いつも1人で"井戸巡り"してるんだ」

「あんなに明るいのにいないのか……。……そもそも、"井戸"なんて珍しいものでもなくないか?」

「俺たちの世界は、こんなに大量の井戸なんかねぇよ。日常的にありふれたもんじゃないからな」

「……そうなのか?」

「ああ、昔は一家に一個くらいはあったろうけどなー。俺たちの世界じゃ、地下水を汲むためのもんだし、今は必要ない。あんたのこの国とは用途が違う」

何とも興味深い話だ。移動手段ではなく、生活手段として使う世界があるとは。

「……では、何故カリンは馴染んでるんだ?」

「あー、アレな。ゲーム、平面で遊ぶ機械なんだけど、それのシステムに入る行動があるんだわ。アイツ、それにハマって、現実でも"入る"んだよ」

「なるほど。さしずめ、俺の世界は彼女にとっては"げーむ"感覚なのか」

キッカケはなんだっていい。興味を持ってもらえているのならば。
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