転生したら悪魔になったんですが、僕と契約しませんか?

らる鳥

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幕間の章1『悪魔王と派遣召喚』

21 十二の座と派遣の悪魔

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 虚空に浮かぶ十二の座。
 その一つに座る僕の前で、円盤の針がクルクルと回転している。
 そしてカチリと、針は僕の前で止まった。
 ズァッと僕のいる座に魔力が注入されて行く。
「あ、僕ですか。ちょっと行ってきます」
 僕は残る十一の座の悪魔達に声を掛け、発光し出した座の召喚術式に身を委ねる。

 喚び出されたのは平原だ。
 空に現れた僕の姿を見、召喚主である女魔術師はグッとガッツポーズを取った。
 どうやら当り扱いしてくれてるらしい。
 女魔術師と共にあるのは、勇者に戦士、そして女僧侶。
 女僧侶の僕を見る目は複雑だが、それでもその瞳には期待感がある。

 一方此方を見て恐れ慄いているのは、魔王軍四天王の一人、リッチキングの……なんだっけ、なんとかだ。
 まあ良いや。そしてその他大勢のアンデッド達。
 リッチキングは数に任せて勇者を攻め立てたが、勇者達の守りは硬く、女魔術師の術式完成を防げなかったと言う所だろう。
 僕は其方に向かって両腕を向けた。
 別に魔王軍にもリッチキングにも恨みはないが、思いっきりやっても良いと言われてる。

 僕の担当は光の属性。
 光属性を扱える悪魔はとても珍しいらしいけど、僕は元人間だからか他の属性と変わる事なく扱えた。
 実は僕は割とレア悪魔なのである。 
 向かい合わせた掌の中で、光を反射し増幅させて行く。
 全力、全力か。よし、もっとだ。
 膨れて溢れ出そうとする光を、押し込んで圧縮、増幅して圧縮を繰り返し、
「レイ!」
 ……その全てをリッチキングとアンデッド軍団に向けて解き放った。
 光の奔流がリッチキングの悲鳴さえも掻き消して、後に残るのは更地となった平原のみ。
 術を解き放った僕は、召喚主たる女魔術師を見下ろし、一つ頷いて帰還する。


 そう、今回の僕の派遣業務は攻撃召喚魔法用の召喚悪魔だ。
 つまり呼び出されて一発攻撃をしたら帰還と言うピンポイント仕様だった。
「あ、お帰りなさい。レプト様」
 座に戻った僕に声を掛けてくれたのは、僕の隣の座、闇属性攻撃を担当する悪魔、ザーラスである。
 彼女は一見物々しく、如何にも悪魔といった感じの邪悪さが滲み出る様な風体をしているが、けれどもこの仕事が初めての僕に対しても実に親切にしてくれていた。
「いやいや、様なんてやめて下さいよザーラス。僕と貴女にそんな格差は無いですし、其れに女性に様付けされると、ちょっと照れます」
 そう、今回の仕事は僕一人じゃ無く、十二の座の全てに対応する悪魔が居るのだ。
 そして目の前の円盤、此れが女魔術師の術に応じて座の一つをランダムで選び、召喚を発動させる。

「グラーゼン様の友人を呼び捨てなんて出来ませんよ。其れに何ですかさっきの光の魔法。あんなの喰らったら私でも消し飛びますからね~、四天王のゾイドがちょっと哀れでした」
 きゃらきゃらと笑うザーラスの言葉に、僕の口元にも思わずつられて笑いが浮かぶ。
 そっか、あのリッチキングはゾイドって言うのか。そう言えばそうだった気がする。
「思いっきりやって良いって言われてたので、つい。戦いは苦手ですけど、大きいの撃つだけなら得意なんです」
 そう、駆け引きもなく只一発撃つだけなら、特に何も考える必要が無いし、実に気楽だ。
 今回の様な召喚形式は、もしかしたら僕に向いてるのかも知れない。
 ……まあ何も考えなくて良い分、面白みには欠けるけれども。


 その後も何度か召喚の術式は発動されたが、僕の出番は特にない。
 何せ十二分の一の確率だ。そう簡単には当たらないのだ。
 今召喚に応じてるのは剣の座の悪魔で、見事な十連斬が敵の魔竜を傷だらけにしている。
 あんなの僕が喰らったら細切れにされるんだろうなと思うと少し背筋がゾッとした。
「それにしても、あの量の魔力と引き換えに十二体の悪魔を用意って、これって収支あってるんです?」
 座での待機に出来る事は、召喚主である女魔術師、つまり勇者一行の旅を覗き見る事位なので、割と暇だ。
 其れに彼等も戦いの後は昂ぶるのか、夜は盛るので見てるとちょっと座の空気が気まずくなるし……。
 だからお喋りに興じる事が多く、特にザーラスとは座が隣り合わせだから特に打ち解けられていた。

「あぁ、レプト様は知らなかったんですね。この術式を作ったのはあの女魔術師の師匠なんですよ。彼女が魔王を退治するまでこの術式でサポートする契約で、もう魂を貰ってあります」
 ザーラスの言葉に得心がいった。
 だからこんなに効率の悪い術式なのかと。
 何せ用意された座は、剣、盾、炎、溶岩、水、酸、地、鉄、風、雷、闇、光の12属性。
 様々な状況に対応出来るように用意したのだろうけど、選択がランダムなせいで状況への対応性は全く無い。
 ハッキリ言えば無駄だらけなのだ。

「弟子の魔王退治の為に魂を差し出すって、随分弟子想いな師匠だったんですね」
 基本的に攻撃を望んで召喚されるので、盾の悪魔なんて完全に外れ扱いされている。
 防御力アップに魔法防御アップ、更に体力回復と滅茶苦茶サービスしてるにも関わらずだ。 
 まあ悪魔の能力が高いので状況にそぐわない属性の座が選ばれても、力技で大体何とかしてしまっているのだけれども。
「弟子がお孫さんだったらしいですね。余命幾許も無い状況だったので、何とか力になれる方法をと考えたんでしょう。でもさっきの魔竜が最後の四天王なので、まあもうあと少しですよ」
 そう、この術式は魔王を倒した後は効力を失う。
 女魔術師、勇者一行の旅を見守るのも、もうあと僅かだ。


 そして最後、魔王との決戦のさなかに、その悲劇は起きた。
 十二の座を選択する円盤の針が差したのは座のどれでも無く、針が止まると同時に急に全ての座がピカピカと光り出したのだ。
 あれ、壊れた?
 僕が首を傾げると、
「此処で引くとはあの女魔術師も持ってますね。其れとも祖父の愛の賜物でしょうか」
 けれども隣の座のザーラスは感心した様に唸った。
 次の瞬間、剣の座から順番に、全ての座に魔力が流れ出す。

「レプト様、準備してください。大当りです。剣から順番に全員が召喚されますから、私達は最後ですけど、〆なので派手に行かないと」
 大当たりで全員が召喚……。
 何とも遊び心に溢れた仕様だが、それってつまり……?
「えぇ、十二連撃です」
 ザーラスの言葉は、僕にはまるで魔王への処刑宣告にしか聞こえなくて、そして数瞬後、やっぱりその通り魔王は処刑された。
 どう見ても既にオーバーキルされてる魔王へ最大の光魔法を放ちながら、僕はこの世界の無常を知る。


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