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オマケの章3
97 壊す為の世界、~アプセット大陸歴千年
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アプセット大陸歴四百年に始まった大陸全土を巻き込んだ戦いは、激化と沈静を繰り返しながら、およそ百年以上の長きに渡り続く。
隙を伺いながら互いに相手の戦力を削り合い、隙を見せれば一気に攻め込む。
この百年の間に、人間達は戦闘能力も向上させたが、それ以上に進んだのが戦術や戦略と言った戦い方の研究である。
例え英雄格の人間であろうと、陣形を組んだ魔術師達の放つ大規模、且つ多重の魔術の前には、討ち取られる事も証明された。
勿論其処で討ち取られるのは英雄『格』の人間だからで、本物の英雄ならばそんな窮地からも脱するのだが。
しかし百年以上戦えども、矢張りこの戦いに決着は付かず、更に魔物の強さと動きが上昇傾向を見せ始めた事もあり、人間達は己の信じる神に助言を請う。
そして預言で告げられた言葉は、
「敵対すれども、彼等もまた人であり、魔物と違って言葉は通ずる。今の窮地には矛を収めて手を取り合い、彼等の力と血を我が物とせよ」
三つの勢力共に同じ物だった。
まあ当然だ。
何せ僕とグレイとイリス、三人が停戦に合意し、血の交流を行う為に魔物の強さの段階を上げて、その動きを活発化させたのだから。
魔物の肉って形を通して、破壊神の力を取り込ませている此の世界の人間は、技術は兎も角、単純な生物としての力は他の世界の人間よりもかなり高い。
だがその強さの上昇傾向に、百年の戦争の終期では僅かに陰りが見え始めた。
その原因をヴィラが分析した所、恐らく三つに分割した地域内でのみ血の交流が行われている為、次なる成長に必要とする要素が、同じ地域内に存在しない状態になってるそうだ。
つまり血の交流を行わねば、遠からず成長限界に達するだろうとの事。
かと言っていきなり、今まで戦ってた人間と交われと言われた所で、感情的には付いて行かないだろう。
其処で僕等は人間達に干渉を行い、大陸の中央に中立地域を設ける事で物流を成立させ、物品や文化と一緒に血を混ぜ合わせる方針を取る。
この流れに大きく貢献したのが、アプセット大陸歴五百五十年に此の世界にやって来た、スキルと呼ばれる力を持つ異世界の人間達だ。
彼等は独自の概念を此の世界に多くもたらし、商業ギルドや冒険者ギルドと言った組織すらをも生み出した。
異世界からやって来た人間達の中には、各地の問題を解決して英雄と呼ばれたり、或いは血を混ぜ合わせる作業に大いに貢献した者だって居る。
勿論中には、禁止していた銃器等の科学が齎す力を再現しようとした者もいたけれど、此れに対しては警告を行い、其れでも聞き入れない者に関しては別の世界へと移動させて対処を行う。
何にせよアプセット大陸歴五百五十年からの百年程が、此の世界の文化が最も発展した時期である事は間違いが無い。
この時期に関しては、僕等も世界への干渉を殆ど行わなかった。
魔物の強さは順次上昇させて行ったが、血が交わり、成長に必要な要素を手に入れた人間達は更なる強さを手に入れて、其れ等を討伐しては肉を喰らうのだ。
特に魔物狩りに熱心だったのは冒険者になった人間達で、彼等は人間同士の争いよりも、対魔物戦闘に特化して行く。
逆に対人間を得意とするのが、騎士や魔導騎士と呼ばれる国に仕える軍人達だ。
この六百~八百年辺りはアプセット大陸歴の中でも有数に平和な時期だったが、三勢力同士の大規模戦争は起こらずとも、勢力内の国々の小さな戦争が絶えた訳では無い。
他にも物流が発達した事で、物を運ぶ商人や旅人を襲おうとする賊の類も一気に増えた。
因みにこの世界では、単なる下っ端の盗賊でも平気で魔術を扱うので、他所の世界とは其の脅威度は段違いである。
しかしそんな、物騒ながらも概ね平和な時期は其処までで、アプセット大陸歴八百五十年、世界は三度、大陸全土を巻き込んだ戦いの渦に叩き落とされたのだ。
切っ掛けは三つの地域の最奥で起こった。
中立地域や、或いは其処に近い場所程、新しい価値観が生まれて複雑化している為、僕等の誘導も徐々に難しくなっている。
だが逆にその流れに取り残された奥地ならば、未だに僕等への信仰と古い価値観の支配が強い。
故に僕等は其処を突き、戦いの流れを生み出したのだ。
と言っても大きな戦いの流れを僕等が作るのは、恐らくこれが最後だろう。
破壊神の目覚めまで、残る年月は僅か百五十年しか残っていない。
僕等は信心深い者達にこう告げる。
「此の世界の魔物を生み出すのは、今は眠る破壊神の力に由る物だ。そして魔物が年々強さを増すのは、破壊神の目覚めを待つ悪魔の仕業である。悪魔達は今、神を名乗って他の地域の人間達を影から操っている。急ぎ打倒せよ」
……と。
その言葉に嘘は無い。
唯一つ、自分が悪魔である事を伏せているだけだった。
けれどもその言葉を神託だと思い込んだ人間達、新しい価値観の芽生えに付いて行けずに鬱屈とした感情を溜め込んで居た者達は激発し、大陸全土を最後の大戦争に引き摺り込んだ。
戦いを厭う人間も、隣人が殺されれば剣を取る。
幾多の英雄が戦いの中で生まれ、多くの人間が死んで行く。
僕等の思惑通りに、大量の人死にと引き換えに此の世界の人間は益々強さを増した。
さぁ、そろそろ仕上げに入るとしよう。
戦いが始まり、矢張り百年程が経過した頃、人間達の間に一つの話をばら撒く。
此の世界に悪魔は三人居る。
一人は北部を影から操る悪魔。
一人は南西部を影から操る悪魔。
一人は南東部を影から操る悪魔。
そう、自分達に他の地域を攻めるように指示を出したのも、同じく悪魔だったのだと。
此の世界には元々、創造神、維持の神、破壊神が存在した。
破壊神は世界を壊そうとし、創造神、維持の神は其れに抗い、破壊神を眠りにつかせる。
しかし戦いで力の弱まった創造神と維持の神は、破壊神に仕える悪魔達に封印されてしまう。
悪魔達は此の世界に戦いと破壊をばら撒き、破壊神の目覚めを目論んだ。
そしてその目論見は成功し、破壊神の目覚めはもう間近に迫ってる。
この話を疑うならば、大陸の歴史を振り返れ。
神を名乗る悪魔達は常に、我等を争いに導いた。
今こそ真実に目覚めねば、悪魔を倒し、本当の神を救わねば、此の世界は手遅れになってしまう。
そんな話を、僕等は同時に、北部にも南西部にも南東部にも、ボロボロになってしまった中央の中立地域にも、一斉にばら撒いたのだ。
今までにも神の存在に疑問を抱いた者は居た。
その話は、僕等の行いも相俟って次第に信憑性を帯び、更に数十年が経過する。
遂に今、僕の前には、一人の英雄が剣を握って立っている。
「名乗れ人間よ。例え今更真実に辿り着こうとも、最早破壊神の復活は変わらぬ定め。一足早い絶望を欲するのなら、我が相手をしてやろう」
出来るだけ禍々しい、悪魔らしい姿にこの身を変じて、僕はその両腕を開く。
だが英雄は、口元に笑みを浮かべてこう言った。
「私の名はマスティア・ファーヴ。ずっと不思議に思っていた」
スラリと腰から抜いた剣は、遥か昔に僕がある英雄に贈った剣。
あぁ、あの英雄の血筋はちゃんと受け継がれていたのだ。
マスティアと、僕は互いに構えを取る。
「家伝の言葉に『我が血を受け継ぐ者は、何れ神を斬らねばならない。何れ訪れる災厄を討つ為に』と言うのがある。貴方が神なのか悪魔なのかはわからないが、この言葉は今この時の為にある。……そう言う事で良いだろうか?」
そして僕が頷いた瞬間、現界の為に造った此の身に、張った障壁を切り裂いて剣の一撃が届く。
現界の為の肉体とは言え、近接戦闘を苦手とする僕が相手とは言え、悪魔王に確かなダメージを与えたのだ。
正に至高の一撃と言って良い。
千年の結実が其処にあった。
「『我が神よ、ありがとう。後の事は我々自身が』此れも始祖が遺した言葉らしい。斬れたら言えって伝わっている」
成る程、彼女らしい言葉だ。
その言葉が七百年も残った事に、僕は驚きと、感動を禁じえない。
此の世界で、僕は数々の悲劇を引き起こして来た。
恨まれる事も、悪名を残す事も、覚悟して行動して来たのに、理解者が居た事に喜びを感じてしまう自分を、酷くズルく思う。
後の事は我々自身が。
僕はその言葉に従って姿を消す。
そうして影に潜んだ悪魔達の支配から解き放たれたアプセット大陸は、英雄達に率いられた軍が、其れまでのわだかまりを捨てて集まり、眠りより目覚めた破壊神と対峙した。
激しい戦いは地を砕いたが、人類最強と謳われた英雄、マスティア・ファーヴの、破壊神に対して特攻効果のある剣により、彼の神性は打倒される。
勿論不滅存在である神を、人が完全に殺し切るのは不可能だ。
しかし破壊神は人間に倒されてしまったが故に、僕への契約対価の支払いが不可能となった。
破壊神の契約は、世界を維持して発展させた対価として、其の世界を破壊した際に生じる魂を僕へと捧げる事。
最初は口汚く文句を言い、けれども僕が意図を変えないと知るや否や、必死に赦しを乞い始めた破壊神の胸に、僕はその手を突き入れる。
悪魔との契約の対価を支払えないなら、その魂で贖うしかない。
其れが例え神性であろうともだ。
こうして、此の世界から破壊神の存在は完全に消えた。
此れより後に世界がどうなるかは、破壊の定めより解き放たれた人間達が決める。
創造神も維持の神も、強くなり過ぎた人間には苦労するだろうけれども、僕等が干渉を止め、破壊神も消えた以上、やがてゆっくりと人間達の強さも衰えて行く筈。
もう千年経ったなら、此の世界がどうなったかを覗きに来よう。
そう決めて、僕等は自分の世界、魔界へと帰還を果たす。
隙を伺いながら互いに相手の戦力を削り合い、隙を見せれば一気に攻め込む。
この百年の間に、人間達は戦闘能力も向上させたが、それ以上に進んだのが戦術や戦略と言った戦い方の研究である。
例え英雄格の人間であろうと、陣形を組んだ魔術師達の放つ大規模、且つ多重の魔術の前には、討ち取られる事も証明された。
勿論其処で討ち取られるのは英雄『格』の人間だからで、本物の英雄ならばそんな窮地からも脱するのだが。
しかし百年以上戦えども、矢張りこの戦いに決着は付かず、更に魔物の強さと動きが上昇傾向を見せ始めた事もあり、人間達は己の信じる神に助言を請う。
そして預言で告げられた言葉は、
「敵対すれども、彼等もまた人であり、魔物と違って言葉は通ずる。今の窮地には矛を収めて手を取り合い、彼等の力と血を我が物とせよ」
三つの勢力共に同じ物だった。
まあ当然だ。
何せ僕とグレイとイリス、三人が停戦に合意し、血の交流を行う為に魔物の強さの段階を上げて、その動きを活発化させたのだから。
魔物の肉って形を通して、破壊神の力を取り込ませている此の世界の人間は、技術は兎も角、単純な生物としての力は他の世界の人間よりもかなり高い。
だがその強さの上昇傾向に、百年の戦争の終期では僅かに陰りが見え始めた。
その原因をヴィラが分析した所、恐らく三つに分割した地域内でのみ血の交流が行われている為、次なる成長に必要とする要素が、同じ地域内に存在しない状態になってるそうだ。
つまり血の交流を行わねば、遠からず成長限界に達するだろうとの事。
かと言っていきなり、今まで戦ってた人間と交われと言われた所で、感情的には付いて行かないだろう。
其処で僕等は人間達に干渉を行い、大陸の中央に中立地域を設ける事で物流を成立させ、物品や文化と一緒に血を混ぜ合わせる方針を取る。
この流れに大きく貢献したのが、アプセット大陸歴五百五十年に此の世界にやって来た、スキルと呼ばれる力を持つ異世界の人間達だ。
彼等は独自の概念を此の世界に多くもたらし、商業ギルドや冒険者ギルドと言った組織すらをも生み出した。
異世界からやって来た人間達の中には、各地の問題を解決して英雄と呼ばれたり、或いは血を混ぜ合わせる作業に大いに貢献した者だって居る。
勿論中には、禁止していた銃器等の科学が齎す力を再現しようとした者もいたけれど、此れに対しては警告を行い、其れでも聞き入れない者に関しては別の世界へと移動させて対処を行う。
何にせよアプセット大陸歴五百五十年からの百年程が、此の世界の文化が最も発展した時期である事は間違いが無い。
この時期に関しては、僕等も世界への干渉を殆ど行わなかった。
魔物の強さは順次上昇させて行ったが、血が交わり、成長に必要な要素を手に入れた人間達は更なる強さを手に入れて、其れ等を討伐しては肉を喰らうのだ。
特に魔物狩りに熱心だったのは冒険者になった人間達で、彼等は人間同士の争いよりも、対魔物戦闘に特化して行く。
逆に対人間を得意とするのが、騎士や魔導騎士と呼ばれる国に仕える軍人達だ。
この六百~八百年辺りはアプセット大陸歴の中でも有数に平和な時期だったが、三勢力同士の大規模戦争は起こらずとも、勢力内の国々の小さな戦争が絶えた訳では無い。
他にも物流が発達した事で、物を運ぶ商人や旅人を襲おうとする賊の類も一気に増えた。
因みにこの世界では、単なる下っ端の盗賊でも平気で魔術を扱うので、他所の世界とは其の脅威度は段違いである。
しかしそんな、物騒ながらも概ね平和な時期は其処までで、アプセット大陸歴八百五十年、世界は三度、大陸全土を巻き込んだ戦いの渦に叩き落とされたのだ。
切っ掛けは三つの地域の最奥で起こった。
中立地域や、或いは其処に近い場所程、新しい価値観が生まれて複雑化している為、僕等の誘導も徐々に難しくなっている。
だが逆にその流れに取り残された奥地ならば、未だに僕等への信仰と古い価値観の支配が強い。
故に僕等は其処を突き、戦いの流れを生み出したのだ。
と言っても大きな戦いの流れを僕等が作るのは、恐らくこれが最後だろう。
破壊神の目覚めまで、残る年月は僅か百五十年しか残っていない。
僕等は信心深い者達にこう告げる。
「此の世界の魔物を生み出すのは、今は眠る破壊神の力に由る物だ。そして魔物が年々強さを増すのは、破壊神の目覚めを待つ悪魔の仕業である。悪魔達は今、神を名乗って他の地域の人間達を影から操っている。急ぎ打倒せよ」
……と。
その言葉に嘘は無い。
唯一つ、自分が悪魔である事を伏せているだけだった。
けれどもその言葉を神託だと思い込んだ人間達、新しい価値観の芽生えに付いて行けずに鬱屈とした感情を溜め込んで居た者達は激発し、大陸全土を最後の大戦争に引き摺り込んだ。
戦いを厭う人間も、隣人が殺されれば剣を取る。
幾多の英雄が戦いの中で生まれ、多くの人間が死んで行く。
僕等の思惑通りに、大量の人死にと引き換えに此の世界の人間は益々強さを増した。
さぁ、そろそろ仕上げに入るとしよう。
戦いが始まり、矢張り百年程が経過した頃、人間達の間に一つの話をばら撒く。
此の世界に悪魔は三人居る。
一人は北部を影から操る悪魔。
一人は南西部を影から操る悪魔。
一人は南東部を影から操る悪魔。
そう、自分達に他の地域を攻めるように指示を出したのも、同じく悪魔だったのだと。
此の世界には元々、創造神、維持の神、破壊神が存在した。
破壊神は世界を壊そうとし、創造神、維持の神は其れに抗い、破壊神を眠りにつかせる。
しかし戦いで力の弱まった創造神と維持の神は、破壊神に仕える悪魔達に封印されてしまう。
悪魔達は此の世界に戦いと破壊をばら撒き、破壊神の目覚めを目論んだ。
そしてその目論見は成功し、破壊神の目覚めはもう間近に迫ってる。
この話を疑うならば、大陸の歴史を振り返れ。
神を名乗る悪魔達は常に、我等を争いに導いた。
今こそ真実に目覚めねば、悪魔を倒し、本当の神を救わねば、此の世界は手遅れになってしまう。
そんな話を、僕等は同時に、北部にも南西部にも南東部にも、ボロボロになってしまった中央の中立地域にも、一斉にばら撒いたのだ。
今までにも神の存在に疑問を抱いた者は居た。
その話は、僕等の行いも相俟って次第に信憑性を帯び、更に数十年が経過する。
遂に今、僕の前には、一人の英雄が剣を握って立っている。
「名乗れ人間よ。例え今更真実に辿り着こうとも、最早破壊神の復活は変わらぬ定め。一足早い絶望を欲するのなら、我が相手をしてやろう」
出来るだけ禍々しい、悪魔らしい姿にこの身を変じて、僕はその両腕を開く。
だが英雄は、口元に笑みを浮かべてこう言った。
「私の名はマスティア・ファーヴ。ずっと不思議に思っていた」
スラリと腰から抜いた剣は、遥か昔に僕がある英雄に贈った剣。
あぁ、あの英雄の血筋はちゃんと受け継がれていたのだ。
マスティアと、僕は互いに構えを取る。
「家伝の言葉に『我が血を受け継ぐ者は、何れ神を斬らねばならない。何れ訪れる災厄を討つ為に』と言うのがある。貴方が神なのか悪魔なのかはわからないが、この言葉は今この時の為にある。……そう言う事で良いだろうか?」
そして僕が頷いた瞬間、現界の為に造った此の身に、張った障壁を切り裂いて剣の一撃が届く。
現界の為の肉体とは言え、近接戦闘を苦手とする僕が相手とは言え、悪魔王に確かなダメージを与えたのだ。
正に至高の一撃と言って良い。
千年の結実が其処にあった。
「『我が神よ、ありがとう。後の事は我々自身が』此れも始祖が遺した言葉らしい。斬れたら言えって伝わっている」
成る程、彼女らしい言葉だ。
その言葉が七百年も残った事に、僕は驚きと、感動を禁じえない。
此の世界で、僕は数々の悲劇を引き起こして来た。
恨まれる事も、悪名を残す事も、覚悟して行動して来たのに、理解者が居た事に喜びを感じてしまう自分を、酷くズルく思う。
後の事は我々自身が。
僕はその言葉に従って姿を消す。
そうして影に潜んだ悪魔達の支配から解き放たれたアプセット大陸は、英雄達に率いられた軍が、其れまでのわだかまりを捨てて集まり、眠りより目覚めた破壊神と対峙した。
激しい戦いは地を砕いたが、人類最強と謳われた英雄、マスティア・ファーヴの、破壊神に対して特攻効果のある剣により、彼の神性は打倒される。
勿論不滅存在である神を、人が完全に殺し切るのは不可能だ。
しかし破壊神は人間に倒されてしまったが故に、僕への契約対価の支払いが不可能となった。
破壊神の契約は、世界を維持して発展させた対価として、其の世界を破壊した際に生じる魂を僕へと捧げる事。
最初は口汚く文句を言い、けれども僕が意図を変えないと知るや否や、必死に赦しを乞い始めた破壊神の胸に、僕はその手を突き入れる。
悪魔との契約の対価を支払えないなら、その魂で贖うしかない。
其れが例え神性であろうともだ。
こうして、此の世界から破壊神の存在は完全に消えた。
此れより後に世界がどうなるかは、破壊の定めより解き放たれた人間達が決める。
創造神も維持の神も、強くなり過ぎた人間には苦労するだろうけれども、僕等が干渉を止め、破壊神も消えた以上、やがてゆっくりと人間達の強さも衰えて行く筈。
もう千年経ったなら、此の世界がどうなったかを覗きに来よう。
そう決めて、僕等は自分の世界、魔界へと帰還を果たす。
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