転生したら悪魔になったんですが、僕と契約しませんか?

らる鳥

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第九章『僕と彼女』

102 十二歳

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 王族である第二王子、父より偉い公爵、父と同格の侯爵。
 父より爵位は下だけどやり手と噂の伯爵、父の派閥の子爵、どの派閥かも良くわからない男爵。
 貴族等に囲まれて控え目に振る舞ってるけど、本性はずっと狡猾な豪商等々。
 皆が侯爵である父と、正妻である母に挨拶に来て、でも今日は其れだけじゃ無くて僕にも挨拶をしてくれる。
 何故なら今行われてるのは僕の十二歳の誕生日を祝うパーティであり、同時に貴族社会へのお披露目でもあるからだ。
 家を継ぐ可能性が殆ど無い三男にも関わらず、こうしてパーティとお披露目をしてくれる両親は、僕に対しての愛情と、財力と権力の三つを持ち合わせてる人達だった。
 因みに家を継ぐ予定の長兄、其の補佐に回る予定の次兄、二人の兄とも僕は割と仲が良い。
 自分にとって都合の良い方を後継に据えさせようと、影で暗躍、暗闘していた家臣団や外部からの干渉を叩き潰して二人の仲を取り持ったりした事で、兄等は僕に恩義を感じているのだろう。
 でも僕が一番可愛く思うのは、そう言ったゴタゴタとは全く無縁な、未だ七歳の妹だけれども。

 そしてこの日は僕、ハスタネア侯爵家のマリアル・ハスタネアにとってもう一つ大事な、人生を左右するイベントが待っていた。
 そう、貴族社会へのお披露目と同時に、婚約者の発表もなされるのだ。
 一応何処の誰が婚約者なのかは僕も聞かされているけれど、会った事は一度も無い。
 父も母も、僕に相応しい可愛らしく賢い御令嬢だから、一生かけて大事にしなさい何て言ってるけれど、人柄も知らない相手をそんな風に言われても返事に困る。
 後其処で、僕には勿体ないじゃなくて相応しいって言う辺りが、うちの両親らしいなとも思った。

「守護の神ミケーヤの様に、其の方の人生をお守りしてみせます」
 でも取り敢えずは無難そうな言葉をチョイスして返しておく。
 僕は剣は兎も角、魔術に関しては大人も顔負けの実力を持っており、十五で入学する学院を卒業した後は宮廷魔術師になる事は確実だろうと言われているので、恐らく将来的には新しい貴族家を興すのも許されるし、実家の後押しだってあるだろう。
 流石に侯爵家を継ぐ長兄程では無いけれど、其れなりに優良物件であるとの自負は持っている。
 婚約者の実家は辺境伯爵家なので、或いは其方側の家臣団にお抱え魔術師として入るかも知れないが、どちらにせよ生活で苦労を掛けるなんて事は無い筈だ。
 何せこの国では、強い力を持つ魔術師の立場は非常に強いから。
 
 だから僕は自分の幸福な未来を、貴族の一員として国に奉仕する未来を、無邪気に信じていた。
 彼女と、僕の婚約者である辺境伯爵令嬢、アーネ・ミルシェルスと出会うまでは。
 そう、その日、婚約を発表する席で、僕が出会ったのは運命だった。


 なんて格好を付けて言ってみても、起きた出来事は単に僕が転生前の記憶を取り戻しただけである。
 記憶を取り戻した瞬間の僕は、さぞや間抜け面をしていただろう。
 今の僕はマリアル・ハスタネアだけれども、その魂は悪魔王レプトの欠片より生み出された物。
 要するに人間マリアルは、悪魔王レプトの化身だとか転生体だとかアヴァターラだとかに相当した。
 そして其の記憶を取り戻したトリガーとなったのが、アーネ・ミルシェルスとの出会いだ。
 僕と出会った時、同じ様に呆けた表情を浮かべたアーネも、当然単なる人間じゃない。
 アーネも僕と同じ様に、超越的な不死存在、天使の王である聖天使の、別の言い方をするなら神の一人であるカリエラの欠片より生み出された魂を宿した者。

 ……婚約者が天使かぁ。
 マリアルとしての僕は、婚約者がどんな相手なのか、内心結構期待してワクワクしていただけにその事実に少し凹む。
 本当に、何が『守護の神ミケーヤの様に』だか。
 そのミケーヤこそが、僕等の滅ぼさねばならない神性だと言うのに。

 今は進化の眠りについてるミケーヤを滅ぼす為の化身である僕とアーネは、二人が出会う事で記憶が戻る様に魂に術式を刻んでいた。
 勿論其れは敵であるミケーヤに、少しでも僕等の存在がばれる可能性を減らす為の細工である。
 神や悪魔では殺せない相手を殺す為に、人間に転生するってのは割と大昔からあるオーソドックスな手段だ。
 当然ミケーヤだって其れは予測し、対策を練っているだろう。
 対策として一番確実なのは、化身が子供の間に殺す事だったから。
 化身の二人が確実に出会える様には、相当に嫌がってはいたけれども、イリスに繋がりの力で縁を結ばせたのだ。
 まあその結果が婚約者って立ち位置なのだから、自業自得としか言い様がない。

 その後は僕もアーネも何事も無かったかの様に振る舞い、顔を合わせた婚約者に対しても、しらじらしく歯の浮く様な賛美を交わした。
 パーティが終わってもすぐさま連絡を取り合う様な真似はせず、婚約者として互いの家を行き来しつつ機会を伺う。
 実にじれったい話だが、もう少し歳を重ねて二人きりで会う事が許されるまでは、この茶番を続ける必要がある。
 僕等の周囲の人間に、ミケーヤの使徒が混じって無いとは限らないから。


 そうして一年後、十三歳になった頃、ハスタネア侯爵家の薔薇園で、漸く僕等は二人きりで会う機会を持てた。
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