インターネットで異世界無双!?

kryuaga

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「へぇ……。孤児院って聞いて少し身構えてたけど、随分と近代的な建物ね……」



 ツバキが白い建物を見上げながら、呆気に取られた表情でそう呟く。



「まあ、日本製だからな、これ」



「……どういう事?」



「そのままの意味さ」



 追求は軽く流して入り口へと向かう。



「ウォンッ!」



 俺の帰宅に気付いたのか、フェンが駆け寄ってくる。

 心なし更に大きくなってるように感じるが、きっと気のせいだろう。



「何それ? 魔物?」



「エイミーによると、魔力の質的に魔物とは異なるらしいが……。はてさて一体何なんだろうな? 俺が知りたいぜ」



「そ、そう……」



 ツバキがドン引きしているが、別に気にしない。



「まぁ、可愛いワンちゃんですわね」



 リーゼの反応もそれはそれでオカシイが、やっぱり気にしないでおく。



「まずは大分汚れた事だし、風呂で汗を流そうか。エイミー、2人を案内してやってくれ」



「分かったわ」



 男女で別れているので、ここで一旦お別れだ。

 俺はサトルを連れて大浴場へと向かう。



「あー、疲れた」



 身体を洗ってから、湯船へと浸かり、そんな声を漏らす。

 やはり目一杯足が伸ばせる浴槽は素晴らしい。

 隣にいるサトルは無言だが、その表情はどこか柔らかく感じられる。



 そんな風にして俺達がのんびり過ごしていると、隣から声が響いて来る。

 構造上、男女の浴場は隣合っている為、声量を抑えないと聞こえてしまうのだ。



「……建物といい、お風呂といい、とても異世界とは思えないわね」



 まあ、実質日本製だからな。その感想は正しい。



「しゃわー……ですか? この魔法具はとても便利ですね。是非、城の浴場にも導入したいものです」



「そうねー。捻るだけでお湯が出て来るって凄いわよねぇ」



 リーゼは、どうやらシャワーなどの設備類に驚いているようだ。

 この世界の浴場にそんな便利なものは無いからな。



 何にせよ充実したお風呂タイムを満喫しているようで何よりだ。



 

「で、夕食だが、何食べたい?」



 お風呂から上がった後、4人に俺は尋ねる。



「わたくしは、コウヤ様が作られるのでしたら、なんでも構いませんよ」



「右に同じね」



「私はやっぱり和食が食べたいわね」



 サトルは無言だが、特に反対でもないと見える。



 そんな訳で、今回の夕食には和食を作る事が決定した。

 和食ねぇ。……無難な所で肉じゃがでも作るかな。



 冷蔵庫の食材を確認して、足りない食材はMitsurinで購入する。

 まずは下拵えからだ。

 玉ねぎ、にんじん、じゃがいもを適当なサイズに切っていく。切り方は我流だが、まあ煮崩れとかはしないので、きっと大丈夫だろう。

 それが済んだら、油を敷いたフライパンで牛肉を色が変わるまで炒める。それに、玉ねぎ、にんじん、ジャガイモの順に切った野菜を加え、炒め合わせる。

 それら具材を今度は深鍋へと移し、水、料理酒、だし汁を加えて煮込むのだ。



 そうして暫く様子を見守り、煮立ったらアクを取る。個人的には多少の雑味は合った方が良いと感じるので、あまり取り過ぎないよう、ほどほどでやめておく。

 それからフタをして弱火で10分程煮込み、砂糖・みりんを加えた上で、更に5分程煮込む。

 最後にしょうゆを加えて煮込みつつ、ヘラで煮汁と具材とを良く絡めたら完成だ。



 念のため、味見をしてみる。

 うむ、ちゃんと具材に味は染み込んでいるようだ。

 これでオーソドックスだが、美味しい肉じゃがの出来上がりだ。



 各人分を皿に盛り付けて、テーブルへと並べていく。

 インスタントだが、ご飯やみそ汁もちゃんと用意した。



「へぇ、肉じゃがねぇ。……見かけによらず案外家庭的なのね?」



 肉じゃがと言ったら、家庭料理の定番だが、その返しは流石に安直すぎはしないか?

 それに真に家庭的なら、みそ汁をインスタントで済ませたりはしない。



「これがコウヤ様の故郷の料理なのですね。とても美味しいそうに見えます」



「この世界では、大分珍しい味だと思うから、口に合うかは分からないけどな」



 砂糖はまだしも、みりんの甘味はこの世界で味わった記憶が無い。

 しょうゆも存在しないし、この世界の食材だけじゃ、地味に再現不能なのだ。この肉じゃがという料理は。



「食べてみれば分かるわよ。早く食べましょう」



 エイミーが急かすようにそう言う。

 コイツ、意外と食い意地張ってるんだよなぁ。



「うん。まさに肉じゃがだわ……。こんなの食べると日本が恋しくなっちゃうじゃない……」



 ツバキが若干涙ぐみながらそんな事を呟く。

 まったく、大げさな奴だな……。



「まぁ、これは本当に口にした事が無い味わいですね。ですが、とても美味しいと思います」



 物珍しそうな表情でリーゼがそう言う。

 特に淀みなく食べ進めているので、美味しいというのはお世辞でも無さそうだ。



「……煮汁の味が良く具材に染みているわ。いい仕事をしたわね、コウヤ」



 エイミーが親指をグッと立てて見せる。



 満足してくれたようで何よりですよ、エイミーさん。



 ちなみにサトルは無言で食べている。

 お行儀がいいのは結構だが、もうちょい美味そうに食えよ、まったく。



 そんな感じで、和やかに夕食の時間は過ぎていき、そろそろ就寝を、という時間になった。

 俺は皆をそれぞれの客室へと案内する。



「……なんかちょっと高めのビジネスホテルの一室って感じね。ここにいると、自分が異世界にいることを忘れちゃいそうになるわ……」



 ツバキのその意見には正直、同意する。

 主導したのは俺なんだがね。

 

「正直、皇帝が泊まるような豪勢な部屋じゃないが、我慢してくれ」



「はい? わたくし、こういった雰囲気のお部屋は大好きですよ」



 そう言えば迷宮都市でも、そこそこの宿に泊まっていたし、迷宮内では普通にテント暮らしだ。

 ……お嬢様育ちの割に、意外と適応能力が高いのかもな。



「それにこのベッド、凄くフカフカで気持ちいいです。城の自室に持って帰りたいので、今度売っては頂けませんか?」



 やはり、スプリング入りのベッドは一国の皇帝をして、尚抗いがたい魅力を持っているようだ。

 これは良い取引材料になりそうだ。



 ちなみにエイミーは俺が案内するまでもなく、一人でさっさと部屋に籠ってしまった。

 まあアイツ、一時はここに半分住んでいるみたいな生活してたからなぁ。



 案内を終えた俺は自室へと戻り、ベッドでゴロゴロしながらスマホで軽くネットを覗いた後、布団をかぶる。

 明日と明後日は休日だが、やる事はそれなりにあるので、あまり夜更かしは良くない。



 そんな事を考えながら目を瞑っていると、気が付けば俺の意識は眠りに落ちていた。



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