魔法学無双

kryuaga

文字の大きさ
33 / 52
第一章 駆け出し冒険者は博物学者

#29

しおりを挟む
  注文の服も規定数に達し、【ミラの店】に連絡する日を調整しようとしていた時。



 鍛冶師ギルドから使者が来た。【リックの武具店】に注文していたモノが一通り完成したという。ただその受け渡しは、店ではなくギルドを指定された。



◇◆◇ ◆◇◆



「もしかして、随分待ってもらっちゃったかしら、アレク君?」

「そんなことはありませんよ。今来たばかりです、シンディさん」

「おい、俺の目の前で逢引デートの待ち合わせでもしていたのか?」

「あ、そう言えばシンディさんの余所行き用の服もそろそろ出来ている筈ですから、取りに行きましょうか。ついでにその服に似合うアクセサリーかなにかも見繕いましょう」

「まあ、それは素敵。すぐに行く?」

「そうですね。こんなところで山妖精ドワーフどもの顔を眺めていても、うるおいがありませんし」

「……よっぽど死にたいようだな」



 さておき。



「で、注文の品が出来上がったって?」

「……何事もなかったように流す気か、貴様は」

「何顔を赤くしてるんだよ。いつもの挨拶だろ?」

「……貴様は…………。まあ良い。

 これがお前の注文の品だ」



 そしてリックは製品を並べ始めた。



「まずは苦無くない。20本の注文だが、25本作っておいた。

 多すぎて困ることはないのだろう?」

「あぁ、助かる」

えず試してみろ」



 ギルド内に用意された標的まとに対し、苦無を〔投擲エイミング〕で投擲とうてきしたところ、苦無は深々と突き刺さった。



「前のより少し大きいか? あと重さも少し重いな」

「お前の体も成長しているからな。今後のことを考えれば、一回り大きな方が使い勝手が良いと思ってな。もし前のが良ければ作り直すぞ」

「いや、これで・良い。じゃなく、これが・良い」



「次いで鉄串。これはシンディが作った」

「誰かさんのおかげで、生活用品専門鍛冶師になりつつあるから。

 ただ、もしかしたら武具を打つより儲かりそうだから怖いわ」

「有り難うございます」

「取り敢えず、今用意したのは250本。これからも作れるだけ作って良いのね?」

「えぇ、1,000本でも2,000本でも。あるだけ買い取ります」

「いや、一般の商店に売る分があるから、全部は無理よ」

「でも屋台で使う鉄串よりは短いでしょ?」

「その辺はほら、キミのは大体屋台用の半分の長さだから。

 屋台用を作っておいて、あとで切って研げばキミ用のが完成するって訳」

「成程。納得しました」

「試してみて」

「わかりました」



 鉄串もまた、標的まとに向かって今度は〔穿孔ペネト投擲レイター〕で投擲した。

 ら、標的をあっさり貫通し、その向こうの柱に半ばまで突き刺さった。



「な……」

「いくら何でも、これは驚いたわ」

「いえ、この鉄串は初めから、破壊力より貫通力特化で使うつもりでしたから。

 希望通りの出来です。有難うございます」



「貴様は全く、俺とシンディで態度が違いすぎるぞ」

「中年頑固親父と、若い女性とで、同じ態度をとる男がいたら、その方が気持ち悪いと思うが?」

「フン、どうでも良いわい。

 で、三つ目。この包丁は俺が打ち、シンディが仕上げた」

「受け取ります」



「四つ目。贈答用として注文を受けた小剣ショートソードだ。

 硬化の魔力を持つ魔石を埋め、ひもを通すリングも柄頭に付けた。

 鞘の装飾は見ての通り。後は重量とバランスは、貴様が確認しろ」

「拝見しよう。

 ……うん、重さも重心も丁度良い。柄も太過ぎず細過ぎない。

 これも注文通りの品物だ。さすがこの街一番と謂われる【リックの武具店】の製品だな」

「今更おだてるな。



 で、最後。貴様の注文は両刃の小剣だったが、片刃のナイフになったことは詫びよう」



 それは確かに、ケン(反りはなく両刃)ではなくトウ(反りを持つ片刃)だった。

 いや、前世知識に照らすと、更に具体的なものがある。

 大ぶりの戦闘用コンバット・ナイフ。背の側にソード・折りブレイカーを仕込んだような中途半端な代物ではなく、単純に斬ることと突くことに特化した、小ぶりな山刀マシェットほどのサイズの戦闘用刃物。



「貴様の注文の通り、刃金はのかねは鋼鉄、心金しんかねは錬鉄、棟金むねかね銑鉄せんてつで作り、銑鉄の側金かわかねで脇を固めた。

 ついでに刃金は神聖金剛石アダマンタイトでコーティングしてある」



 ……アダマンタイト、だと!



「ちょっと待て、親父。

 アダマンタイト製の剣なんか、買える訳ないだろ?」

「これは俺の、というよりギルドの意地だ。

 貴様に一矢報いたい、とな。

 いかな貴様とて、神聖金属の加工法など知りはしないだろう?」



 この世界にある魔石の類は、大きく分けて三つある。

 ひとつは、そのまんま魔石である。これは魔獣や魔物の体内で生成される。

 二つ目は、精霊石。宝石に魔力を封入することで出来る、人工の魔石である。

 そして三つ目が、神聖金属。神聖金剛石アダマンタイト神聖金オリハルコン神聖銀ミスリル神聖鉄ヒヒイロカネなどが有名だ。



 この神聖金属の中で、最も多く見つかると謂われるのが、アダマンタイトであるが、同時に最も加工が難しい神聖金属であるとも謂われる。



「そうか、鍛冶師ギルドの五つ目の秘匿事項が、アダマンタイトの加工方法、か」

「そういうことだ。さすがの貴様も、知らないことがあるようだな」

「あぁ、知らなかった。けど、今わかった」

「何?」

「親父は今、『アダマンタイトでコーティング』って言ったろ?」



☆★☆ ★☆★



 アダマンタイトは、謂うなればダイヤモンドの魔力同位体である。

 そしてダイヤモンドは、炭素の単分子結晶である。



 前世地球の漫画やアニメでは、ダイヤモンドの組成が炭素(木炭や石炭と同じ)であるということから、「ダイヤモンドを燃やして燃料にする」というネタがあったが、現実にはコスト面の問題を無視してもあまり効率的とは言えない。



 しかしアダマンタイトはおそらく、迷宮内の石炭層が魔力に触れ、魔石(神聖金属)化したことによって生じるもの。だとするのなら、ダイヤモンドよりはるかに容易に入手出来る。

 そしてこの世界での鋼の製法、滲炭しんたん法は、鉄を木炭とともに密封(無酸素状態に)して加熱することにより、銑鉄は脱炭され、逆に錬鉄は吸炭し、鋼鉄が出来る。

 その際木炭ではなくアダマンタイトを使えば、滲炭の過程でアダマンタイトの魔力が鉄に塗布とふされる。



 それが鍛冶師ギルドの秘匿事項である、アダマンタイトの加工法、なのであろう。



★☆★ ☆★☆



「その一言で、アダマンタイトの加工方法がわかったというのか?」

「おおよそな。但し、俺のは知識だけだ。それで俺の手で加工出来る訳じゃない」

「貴様の場合、そんな言葉はなぐさめにもならんよ」



「じゃぁアダマンタイト・コーティングの礼に、もう一つ鍛冶技術を提供しよう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...