10 / 62
十話
しおりを挟む
目を覚ますと、そこは地下だった。
いや、正確には恐らく地下、多分地下、きっと地下だろう。が、正解。
なんとなく地下っぽい雰囲気とヒンヤリした空気。
周りは暗くてまともに見えない。唯一の光源は、遥か上に見える穴から差し込む陽の光だけ。
光が弱過ぎて、この空間がどれくらいの大きさなのかも分からないが、とりあえず並みの体育館よりは広そうな気がする。
まあ、気がするだけだが…。
……にしても、何で俺はこんな地下っぽい場所で寝転んで居るんだろうか?
…………
………
……!?
思い出した!! 俺、あの赤い鎧の魔法を食らって、そんで、魔法の衝撃で地面が崩れて―――…。
俺、死ん…でないよなコレ?
なんか、一週間前にも同じような疑問符を浮かべていたような気がするが…。
悪運強ぇー。神様には嫌われてるけど、死神にはもっと嫌われているらしい。有り難いんだか、有り難くないんだか。
いや、死神に首持ってかれたら洒落になんねーから有り難いのか。
「よっ、と」
起き上がる。
両手を開いて閉じてまた開いて、今度は腕を回す。
よし、特に痛い場所は無い。
うーん…でも、おかしいな? 確かに死ぬ一歩手前になるくらいの痛みを受けた気がするんだが?
火傷らしきものも無いし、あの高さから落ちたにしても無傷ってのはなあ。
それは体だけではなく服もだ。焼けた跡も破けたりもしていない。魔法を食らう前のそのままだ。
手元の事実を集めて判断するのなら……死にかけの状況から、ダメージを受ける前の状態まで戻された…とか?
でも、そんなのどうやって…?
あれ? そう言えば、夢現に誰かと話をしたような…?
運命がどーしただの、赤がなんだとか…? うーん、よく思い出せん。
やっぱりただの夢かと思ったが、確かに誰かが近くに居たような気配はあったよな―――…。
乏しい明りでボンヤリとしか見えないが、俺のすぐ傍にそれは転がっていた。
骨。見間違えようが無い人間の骨。人間1人分の、色々な部位の約200の骨。
まるで、俺の今まで寝転がっていた場所に両手を伸ばすような形で並んでいる。
まさか…この骨があの気配の正体?
ゾワリとした。
いや、いやいやいやいやいや! 無い! それは無いですって! だって、それ俺がガチもんの幽霊と話したって事になるじゃないッスか! 冗談きっついなあ、もー!
落ち付け俺!
1度ニュートラルな状態に戻ろう。深呼吸しろ深呼吸。
「スーハースーハー」
よし、大丈夫。一瞬、ここの空気ってこの白骨の―――とか考えちゃったけど、ギリギリセーフだ…多分。
さて、改めて自分の状況確認。
ここはルディエの地下って事で間違いないよな。城下町の下にこんなデカイ空洞が在って大丈夫かよ…?
いや、絶対大丈夫じゃないよな。実際俺落ちてますし。
下手すりゃ街ごと落ちる可能性もあるんじゃねえか? 地盤の検査出来てなさ過ぎ。手抜き工事じゃすまねえぞコレ。元の世界だったら即訴訟コースだな。
そして、この白骨死体……の事は一先ず保留。俺が1人で頭捻ったところで、コレが誰なのかも、何でここに居るのかも分かりそうにないし。
俺の体(正確にはロイド君の体だが)は怪我一つ無い、正直完全に逝ったと思ったが、借り物の体を勝手に死なせずに済んだのは重畳。
それどころか、なんだろう…? 気のせいか体が軽い気がする。
…まあ、多分気のせいだろう。
上に居るイリスや街の様子も気になるし、とりあえずこの地下の空洞から脱出して上に戻りたいんだが…。
上を見上げる。
高い。光が遠過ぎて目眩がする。
登っての脱出はまず不可能。となれば、別の出口を探すしかないか。
方向は分からないので、適当な方向に歩き出す。
体感時間3分程で壁に辿り着く。元居た場所から200mくらいかな? まあ、俺が真っ直ぐ歩けていればの話だけど。
壁は完全に岩肌だった。人の手が入った様子はない。
「はぁ…こういう時に魔法で光とか出せればなあ……」
1人で愚痴りながら壁に沿って時計回りに歩く。暗闇を歩くのは思ってた以上に緊張するな。
一歩先に予期せぬ何かが有るのではないか? 横から魔物が飛びかかって来るのではないか?
頭の中に浮かぶ恐ろしい想像を散らしながらただ歩く。それ以外にこの状況を終わらせる方法が無いから。
それに、立ち止まると考えてしまうのだ「出口が無かったら?」と。
上にイリスが居るから俺が下に落ちたのは伝わっているかもしれないが、上は上であの惨状だ。俺を助けに来るにしたっていつになるのかは分からない。そうなれば、俺に待つのはあの白骨死体と同じ未来だ。
折角、今回は死神に見逃されて命を拾ったのだ。このままここで死ぬのは簡便願いたい。まあ、願ったところで俺の事を殺す気満々の神様が聞いてくれるかは疑問だがね。
「誰かー居ませんかー!」
無駄な気はするのだが、歩きながら空間に声を投げてみる。
予想通りに返事は無い。
魔物が襲ってくるような気配も無い。誰も居ない。本当の独りぼっち。寂しさは感じないが虚しさは感じる。
つくづく思う。
こっちの世界に来てから碌な目にあってねえな俺。もういっそ笑えてくる。
なので、とりあえず笑っておく事にした。
「プッ…クク、アッハハハハハハ!」
ああ、もう何だか笑ってたらこのクソっ垂れな状況がちょっと楽しくなってきたじゃねえかチキショウ!
もう良いや、この際だからRPGのダンジョン探索でもする気分でモリモリ歩いてやる!
どっかに宝箱とか落ちてねえかなあ?
いや、でも宝箱ってどうなの? そんな、あからさまな物が何でダンジョンに転がってるの? 誰が置いたのさそれ? 元の持ち主は本当にそれで盗まれないとでも考えたの?
宝箱にツッコミを入れている間に妙な壁を発見。
扉1枚分の、明らかに人の手の入っている人工壁。
ツルリとして冷たい…。良く見えないけど、鉄っぽい感触ではない気がする。大理石、とか? いや、あんま触った事無いから分からんけど。
まあ、材質はともかく、サイズ的に考えればこれが扉になってて裏側に外に繋がる道があるってのがダンジョンの定石でしょ。……あくまでゲームの中での話だけどさ。
取手やドアノブらしき物は無い。鍵穴…も無いな。
この壁一面に何か彫り込みがしてあるみたいだけど、それがなんの意味があるのかは俺には不明。
うっし! とりあえず、引いてみよう。
「ぬっ! …グッ…うぅ、動かねえッ!!」
次は押してみる。
「フンっ! ああっ、クソッ、ビクともしねえ!」
引き戸とかベタなオチはねえよな?
念の為試してみたが動く気配は無い。やっぱハズレか。
うーん…マジぃな。手詰まった…。
力で動かないって事は何かのギミックで動くか、それともこの壁自体まったく関係ない的外れな物なのか。
関係ないと判断するのは全部試した後だ。
ギミックが有ると仮定して、どう開けるか?
怪しいのは壁の彫り込みだけど…暗くて文字なのか図形なのかさえ分かんねえ。
指先でなぞってボンヤリと形を掴むのがやっとなのは痛いな。謎解きするにしたって得られる情報が少なすぎる。
無理ゲー過ぎだよコンチキショウ!
「開けゴマ、くらいの楽勝ギミックならなあ…」
そんな都合の良い話ある訳ないので、何か少しでもヒントがないものかと彫り込みに指をなぞらせる。
その時、指先に鋭い痛みが走る。
「痛っ!」
彫り込みの角に引っかけて指に切り傷が出来ていた。傷を作った原因である彫り込みにも血が付いてしまっている、
ったくもう、踏んだり蹴ったりで泣く気も起きやしない。
『識別情報を取得』
「はぃ?」
突然喋り出した壁。
ちょっと低めの女の声。声だけでイメージするなら入社6年目のやり手銀行員って感じかな? うん、我ながらピッタリなイメージだ。まあ、実際は固くて冷たい壁だけど。
でも、こういうのってコッチの世界じゃ異質じゃないか? 俺は元の世界で自販機やらATMやらで音声発する物を見慣れてるけど。
『識別≪赤≫を確認』
彫り込みに光が走り、辺りが少し明るくなる。
あ、夜に自販機の前に立ってる気分。ちょっと懐かしい。
んで、“赤”ってなんだよ。……あれ? 赤? なんか夢の中でそんな単語を聞いたような。
『モードをアクティブに変更。現在実行可能な転移は制限モード1のみです』
転移!?
あれだ、魔法の奴だ! なんチャラポータルとか言うのだきっとコレ!!
扉じゃなかったけど、助けるんじゃね!? コレ助かるんじゃね俺!?
それに転移ってのは興味があったんだよ。どこ●もドア風なものなのか、ル●ラ風に飛んでいくのか、帰りは転移魔法だっていうから楽しみにしてたんだよねえ。
まさか、こんな場所で先に体験できる機会がくるとは。
日頃の行いか、はたまた神の思し召しか……後者はねえな絶対。
『転移座標固定の為、周囲の地形情報を取得……完了。制限モード1での転移実行時、Ⅹ軸に誤差が発生する可能性があります』
言っとる事は良く分からんが、何か危なそうな雰囲気だけは伝わった。
まあ、それでもそれに頼るしかないんですけどね。
さーてと、問題はどうやったら転移とやらを実行できるのかなっと。
さっきは触ってたら…と言うより血が付いたから反応したっぽいよな? もう一回触ったらなんか起こらんかな?
ペタッと適当な場所に触れる。
『≪赤≫より転移に必要なエネルギーを取得』
瞬間、バチンッと体の中の何かのスイッチが入ったような感覚。体に感じていた重さが消える。
まるで、重力の鎖が解けて体が勝手に浮き上がろうとしているみたいだ。
壁に触れていた手に赤い光が走る。
直線と螺旋で描かれた何かの模様のようにも思えるが、ただ乱雑に線を並べたようにも見える。
いや、ちょっと!? 何この赤い模様みたいなのは!?
『エネルギーの取得を完了』
俺の腕に浮かびあがっていた赤い模様が消える。
同時に体の重さがズシリと戻り、重力の鎖が俺を縛る。
それに、何だコレ…? 体がダルくなったんですけど……。
『転移座標固定完了。転移開始カウント3、2、1、スタート』
目の前が真っ白になる。
転移するのは良いんだが、コレどこに飛ぶんだ?
まあ、これ以上状況が悪くなる事はない! ………と思いたい…うん。
いや、正確には恐らく地下、多分地下、きっと地下だろう。が、正解。
なんとなく地下っぽい雰囲気とヒンヤリした空気。
周りは暗くてまともに見えない。唯一の光源は、遥か上に見える穴から差し込む陽の光だけ。
光が弱過ぎて、この空間がどれくらいの大きさなのかも分からないが、とりあえず並みの体育館よりは広そうな気がする。
まあ、気がするだけだが…。
……にしても、何で俺はこんな地下っぽい場所で寝転んで居るんだろうか?
…………
………
……!?
思い出した!! 俺、あの赤い鎧の魔法を食らって、そんで、魔法の衝撃で地面が崩れて―――…。
俺、死ん…でないよなコレ?
なんか、一週間前にも同じような疑問符を浮かべていたような気がするが…。
悪運強ぇー。神様には嫌われてるけど、死神にはもっと嫌われているらしい。有り難いんだか、有り難くないんだか。
いや、死神に首持ってかれたら洒落になんねーから有り難いのか。
「よっ、と」
起き上がる。
両手を開いて閉じてまた開いて、今度は腕を回す。
よし、特に痛い場所は無い。
うーん…でも、おかしいな? 確かに死ぬ一歩手前になるくらいの痛みを受けた気がするんだが?
火傷らしきものも無いし、あの高さから落ちたにしても無傷ってのはなあ。
それは体だけではなく服もだ。焼けた跡も破けたりもしていない。魔法を食らう前のそのままだ。
手元の事実を集めて判断するのなら……死にかけの状況から、ダメージを受ける前の状態まで戻された…とか?
でも、そんなのどうやって…?
あれ? そう言えば、夢現に誰かと話をしたような…?
運命がどーしただの、赤がなんだとか…? うーん、よく思い出せん。
やっぱりただの夢かと思ったが、確かに誰かが近くに居たような気配はあったよな―――…。
乏しい明りでボンヤリとしか見えないが、俺のすぐ傍にそれは転がっていた。
骨。見間違えようが無い人間の骨。人間1人分の、色々な部位の約200の骨。
まるで、俺の今まで寝転がっていた場所に両手を伸ばすような形で並んでいる。
まさか…この骨があの気配の正体?
ゾワリとした。
いや、いやいやいやいやいや! 無い! それは無いですって! だって、それ俺がガチもんの幽霊と話したって事になるじゃないッスか! 冗談きっついなあ、もー!
落ち付け俺!
1度ニュートラルな状態に戻ろう。深呼吸しろ深呼吸。
「スーハースーハー」
よし、大丈夫。一瞬、ここの空気ってこの白骨の―――とか考えちゃったけど、ギリギリセーフだ…多分。
さて、改めて自分の状況確認。
ここはルディエの地下って事で間違いないよな。城下町の下にこんなデカイ空洞が在って大丈夫かよ…?
いや、絶対大丈夫じゃないよな。実際俺落ちてますし。
下手すりゃ街ごと落ちる可能性もあるんじゃねえか? 地盤の検査出来てなさ過ぎ。手抜き工事じゃすまねえぞコレ。元の世界だったら即訴訟コースだな。
そして、この白骨死体……の事は一先ず保留。俺が1人で頭捻ったところで、コレが誰なのかも、何でここに居るのかも分かりそうにないし。
俺の体(正確にはロイド君の体だが)は怪我一つ無い、正直完全に逝ったと思ったが、借り物の体を勝手に死なせずに済んだのは重畳。
それどころか、なんだろう…? 気のせいか体が軽い気がする。
…まあ、多分気のせいだろう。
上に居るイリスや街の様子も気になるし、とりあえずこの地下の空洞から脱出して上に戻りたいんだが…。
上を見上げる。
高い。光が遠過ぎて目眩がする。
登っての脱出はまず不可能。となれば、別の出口を探すしかないか。
方向は分からないので、適当な方向に歩き出す。
体感時間3分程で壁に辿り着く。元居た場所から200mくらいかな? まあ、俺が真っ直ぐ歩けていればの話だけど。
壁は完全に岩肌だった。人の手が入った様子はない。
「はぁ…こういう時に魔法で光とか出せればなあ……」
1人で愚痴りながら壁に沿って時計回りに歩く。暗闇を歩くのは思ってた以上に緊張するな。
一歩先に予期せぬ何かが有るのではないか? 横から魔物が飛びかかって来るのではないか?
頭の中に浮かぶ恐ろしい想像を散らしながらただ歩く。それ以外にこの状況を終わらせる方法が無いから。
それに、立ち止まると考えてしまうのだ「出口が無かったら?」と。
上にイリスが居るから俺が下に落ちたのは伝わっているかもしれないが、上は上であの惨状だ。俺を助けに来るにしたっていつになるのかは分からない。そうなれば、俺に待つのはあの白骨死体と同じ未来だ。
折角、今回は死神に見逃されて命を拾ったのだ。このままここで死ぬのは簡便願いたい。まあ、願ったところで俺の事を殺す気満々の神様が聞いてくれるかは疑問だがね。
「誰かー居ませんかー!」
無駄な気はするのだが、歩きながら空間に声を投げてみる。
予想通りに返事は無い。
魔物が襲ってくるような気配も無い。誰も居ない。本当の独りぼっち。寂しさは感じないが虚しさは感じる。
つくづく思う。
こっちの世界に来てから碌な目にあってねえな俺。もういっそ笑えてくる。
なので、とりあえず笑っておく事にした。
「プッ…クク、アッハハハハハハ!」
ああ、もう何だか笑ってたらこのクソっ垂れな状況がちょっと楽しくなってきたじゃねえかチキショウ!
もう良いや、この際だからRPGのダンジョン探索でもする気分でモリモリ歩いてやる!
どっかに宝箱とか落ちてねえかなあ?
いや、でも宝箱ってどうなの? そんな、あからさまな物が何でダンジョンに転がってるの? 誰が置いたのさそれ? 元の持ち主は本当にそれで盗まれないとでも考えたの?
宝箱にツッコミを入れている間に妙な壁を発見。
扉1枚分の、明らかに人の手の入っている人工壁。
ツルリとして冷たい…。良く見えないけど、鉄っぽい感触ではない気がする。大理石、とか? いや、あんま触った事無いから分からんけど。
まあ、材質はともかく、サイズ的に考えればこれが扉になってて裏側に外に繋がる道があるってのがダンジョンの定石でしょ。……あくまでゲームの中での話だけどさ。
取手やドアノブらしき物は無い。鍵穴…も無いな。
この壁一面に何か彫り込みがしてあるみたいだけど、それがなんの意味があるのかは俺には不明。
うっし! とりあえず、引いてみよう。
「ぬっ! …グッ…うぅ、動かねえッ!!」
次は押してみる。
「フンっ! ああっ、クソッ、ビクともしねえ!」
引き戸とかベタなオチはねえよな?
念の為試してみたが動く気配は無い。やっぱハズレか。
うーん…マジぃな。手詰まった…。
力で動かないって事は何かのギミックで動くか、それともこの壁自体まったく関係ない的外れな物なのか。
関係ないと判断するのは全部試した後だ。
ギミックが有ると仮定して、どう開けるか?
怪しいのは壁の彫り込みだけど…暗くて文字なのか図形なのかさえ分かんねえ。
指先でなぞってボンヤリと形を掴むのがやっとなのは痛いな。謎解きするにしたって得られる情報が少なすぎる。
無理ゲー過ぎだよコンチキショウ!
「開けゴマ、くらいの楽勝ギミックならなあ…」
そんな都合の良い話ある訳ないので、何か少しでもヒントがないものかと彫り込みに指をなぞらせる。
その時、指先に鋭い痛みが走る。
「痛っ!」
彫り込みの角に引っかけて指に切り傷が出来ていた。傷を作った原因である彫り込みにも血が付いてしまっている、
ったくもう、踏んだり蹴ったりで泣く気も起きやしない。
『識別情報を取得』
「はぃ?」
突然喋り出した壁。
ちょっと低めの女の声。声だけでイメージするなら入社6年目のやり手銀行員って感じかな? うん、我ながらピッタリなイメージだ。まあ、実際は固くて冷たい壁だけど。
でも、こういうのってコッチの世界じゃ異質じゃないか? 俺は元の世界で自販機やらATMやらで音声発する物を見慣れてるけど。
『識別≪赤≫を確認』
彫り込みに光が走り、辺りが少し明るくなる。
あ、夜に自販機の前に立ってる気分。ちょっと懐かしい。
んで、“赤”ってなんだよ。……あれ? 赤? なんか夢の中でそんな単語を聞いたような。
『モードをアクティブに変更。現在実行可能な転移は制限モード1のみです』
転移!?
あれだ、魔法の奴だ! なんチャラポータルとか言うのだきっとコレ!!
扉じゃなかったけど、助けるんじゃね!? コレ助かるんじゃね俺!?
それに転移ってのは興味があったんだよ。どこ●もドア風なものなのか、ル●ラ風に飛んでいくのか、帰りは転移魔法だっていうから楽しみにしてたんだよねえ。
まさか、こんな場所で先に体験できる機会がくるとは。
日頃の行いか、はたまた神の思し召しか……後者はねえな絶対。
『転移座標固定の為、周囲の地形情報を取得……完了。制限モード1での転移実行時、Ⅹ軸に誤差が発生する可能性があります』
言っとる事は良く分からんが、何か危なそうな雰囲気だけは伝わった。
まあ、それでもそれに頼るしかないんですけどね。
さーてと、問題はどうやったら転移とやらを実行できるのかなっと。
さっきは触ってたら…と言うより血が付いたから反応したっぽいよな? もう一回触ったらなんか起こらんかな?
ペタッと適当な場所に触れる。
『≪赤≫より転移に必要なエネルギーを取得』
瞬間、バチンッと体の中の何かのスイッチが入ったような感覚。体に感じていた重さが消える。
まるで、重力の鎖が解けて体が勝手に浮き上がろうとしているみたいだ。
壁に触れていた手に赤い光が走る。
直線と螺旋で描かれた何かの模様のようにも思えるが、ただ乱雑に線を並べたようにも見える。
いや、ちょっと!? 何この赤い模様みたいなのは!?
『エネルギーの取得を完了』
俺の腕に浮かびあがっていた赤い模様が消える。
同時に体の重さがズシリと戻り、重力の鎖が俺を縛る。
それに、何だコレ…? 体がダルくなったんですけど……。
『転移座標固定完了。転移開始カウント3、2、1、スタート』
目の前が真っ白になる。
転移するのは良いんだが、コレどこに飛ぶんだ?
まあ、これ以上状況が悪くなる事はない! ………と思いたい…うん。
0
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる