9 / 13
今ここ→⑨
しおりを挟む
「証拠、とは?」
「私には詳しいことは説明は難しいのです」
お父様の言葉に、私はテオ様を見る。
「私が話してもよろしいでしょうか?」
テオ様の言葉に、お父様が頷く。
「人間界には、魔法の痕跡を明らかにする魔法があります。それにより、エンマという方が身に着けていた約束の石にジョエル殿の家の魔法の痕跡があることがわかりました」
「そうか。人間界の魔法は、精霊魔法だから、妖精の魔法とは違うんだったね」
そう言ったお父様が、ジョエルを見る。
「そ、そんなわけがありません! ジョエル様は偽りなどには関係しておりません! 私のジョエル様がそんなことをするはずがありません!」
唐突に叫んだコラソンの口を、ジョエルが慌てたように手でふさぐ。
……お父様と番だったはずの私の前で”私のジョエル様”って言うって、相当度胸あるけどね!
「ジョエル殿、『偽りには死を』という言葉が、どういう意味か知っているかな? 当然、王配になる予定の君だ、知っているとは思うがね」
お父様の言葉に、ジョエルは視線を揺らすこともなく、大きくうなずいた。
「妖精王への忠誠を誓う言葉にございます」
「そうか。ジョエル殿は理解していないようだね」
お父様は冷ややかにジョエルを見下す。その表情は、私も見たことのないものだった。
「『偽りには死を』この言葉を、久しぶりに実行する妖精王が、私であるということが哀しいがね」
「え……」
ジョエルが絶句する。
ジョエルは目を見開くと、首をぶるぶると震えさせる。
「偽りには死を」という言葉は、ジョエルの嘘が通った時から、形ばかりのものなのだと思い込んでいたけれど、違ったんだ。
「陛下! 私は偽りなど述べておりません! そ、それに、妖精王である陛下が国中にフィオーレと私が番であると宣言したではありませんか!」
「私の宣言は、偽りが述べられていないという前提で行われるものだよ。私は、妖精たちの忠誠を信じているからね」
「そんな! どうして偽りだと!? ……陛下は、私の言葉を信じてくれないのですか?! あの、人間風情の言うことを信じるのに?!」
……人間風情って……次期妖精王の正式な番なんですけどー? まだ自分が番のつもりだから許されると思ってる?
そうか、テオ様、人間なのか……。まさか番が人間だとか思ってなかったから、人間界には探しに行ったりしなかったなぁ。そうエンマに教えられてたし! 番が妖精以外はあり得ないって言うのも嘘だったのか!
でも、お父様、知り合いみたいだよね? ということは、どっかで出会ってたりしそうだけど? どうして私、テオ様のこと知らないんだろう?
「まるで妖精が一番のような言い方だがね。妖精も人間も、対等な立場だと思うよ。それもわからない者が王配にならなくてよかったと思うべきなんだろうね」
冷ややかなお父様の言葉に、ジョエルがぶるりと震える。
でもすぐに我に返ると、口を開く。
「陛下はどうして、フィオーレ様の言うことを信じるのです! 実の娘だからですか!?」
必死なジョエルの声に、お父様は首を横にふる。
「私は妖精の声に偽りがないと信じているからね。ただ、嘘をついたと証明された相手は別なんだよ」
「嘘など! そもそも、番など、不確かなものを証明することなどできないではありませんか!」
ジョエルの叫び声に、お父様は肩をすくめる。
「お互いに番だとわかるのだから、証明のしようはないだろうね。それにね、番がいない場合には、妖精王にはなれないんだよ。ちなみにだけど、真実の番でなかった場合、『偽りには死を』与えられるだけの話なんだけどね」
「え?」
お父様の言葉が予想外だったのか、ジョエルが間抜けな声を漏らす。
「私には詳しいことは説明は難しいのです」
お父様の言葉に、私はテオ様を見る。
「私が話してもよろしいでしょうか?」
テオ様の言葉に、お父様が頷く。
「人間界には、魔法の痕跡を明らかにする魔法があります。それにより、エンマという方が身に着けていた約束の石にジョエル殿の家の魔法の痕跡があることがわかりました」
「そうか。人間界の魔法は、精霊魔法だから、妖精の魔法とは違うんだったね」
そう言ったお父様が、ジョエルを見る。
「そ、そんなわけがありません! ジョエル様は偽りなどには関係しておりません! 私のジョエル様がそんなことをするはずがありません!」
唐突に叫んだコラソンの口を、ジョエルが慌てたように手でふさぐ。
……お父様と番だったはずの私の前で”私のジョエル様”って言うって、相当度胸あるけどね!
「ジョエル殿、『偽りには死を』という言葉が、どういう意味か知っているかな? 当然、王配になる予定の君だ、知っているとは思うがね」
お父様の言葉に、ジョエルは視線を揺らすこともなく、大きくうなずいた。
「妖精王への忠誠を誓う言葉にございます」
「そうか。ジョエル殿は理解していないようだね」
お父様は冷ややかにジョエルを見下す。その表情は、私も見たことのないものだった。
「『偽りには死を』この言葉を、久しぶりに実行する妖精王が、私であるということが哀しいがね」
「え……」
ジョエルが絶句する。
ジョエルは目を見開くと、首をぶるぶると震えさせる。
「偽りには死を」という言葉は、ジョエルの嘘が通った時から、形ばかりのものなのだと思い込んでいたけれど、違ったんだ。
「陛下! 私は偽りなど述べておりません! そ、それに、妖精王である陛下が国中にフィオーレと私が番であると宣言したではありませんか!」
「私の宣言は、偽りが述べられていないという前提で行われるものだよ。私は、妖精たちの忠誠を信じているからね」
「そんな! どうして偽りだと!? ……陛下は、私の言葉を信じてくれないのですか?! あの、人間風情の言うことを信じるのに?!」
……人間風情って……次期妖精王の正式な番なんですけどー? まだ自分が番のつもりだから許されると思ってる?
そうか、テオ様、人間なのか……。まさか番が人間だとか思ってなかったから、人間界には探しに行ったりしなかったなぁ。そうエンマに教えられてたし! 番が妖精以外はあり得ないって言うのも嘘だったのか!
でも、お父様、知り合いみたいだよね? ということは、どっかで出会ってたりしそうだけど? どうして私、テオ様のこと知らないんだろう?
「まるで妖精が一番のような言い方だがね。妖精も人間も、対等な立場だと思うよ。それもわからない者が王配にならなくてよかったと思うべきなんだろうね」
冷ややかなお父様の言葉に、ジョエルがぶるりと震える。
でもすぐに我に返ると、口を開く。
「陛下はどうして、フィオーレ様の言うことを信じるのです! 実の娘だからですか!?」
必死なジョエルの声に、お父様は首を横にふる。
「私は妖精の声に偽りがないと信じているからね。ただ、嘘をついたと証明された相手は別なんだよ」
「嘘など! そもそも、番など、不確かなものを証明することなどできないではありませんか!」
ジョエルの叫び声に、お父様は肩をすくめる。
「お互いに番だとわかるのだから、証明のしようはないだろうね。それにね、番がいない場合には、妖精王にはなれないんだよ。ちなみにだけど、真実の番でなかった場合、『偽りには死を』与えられるだけの話なんだけどね」
「え?」
お父様の言葉が予想外だったのか、ジョエルが間抜けな声を漏らす。
235
あなたにおすすめの小説
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい
鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。
家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。
そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。
いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。
そんなふうに優しくしたってダメですよ?
ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて――
……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか?
※タイトル変更しました。
旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる