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私は光る花に走り寄る。
「強制力を解いて、アンリエット様とフェルナン様を幸せにして!」
その瞬間、花びらに宿っていた光が、崩れるように花びらと共に散っていく。
――ああ、確かにこの花の散り方は、『学園の恋花』で読んだとおりだ。
ガサリ、と緑が揺れる。
「そこにいるのは、誰だ?」
声に振り向くと、そこには予想通り殿下と従者の二人がいた。
「フェルナン殿……と、リヴィア嬢か。何をしている?」
淡々とした殿下の言葉に、私は心の底から安堵した。
どうやら殿下の私への執着も、上手く解けたらしい。
フェルナン様を見上げると、フェルナン様が驚いた顔で私を見ていた。
「わ、私が森に迷い込んだのを見かけたフェルナン様が、探しに来てくださったのです」
「そうか。ところで、どこかで変わった花を見かけなかったか?」
「いいえ」
ギクリとしたけど、私は首を振った。
「変わった花? 殿下は、どんな花を探しているんでしょうか?」
「どんな花……と言われても……どんな花だ?」
殿下が従者に問いかける。
問いかけられた従者は、目をぱちくりと瞬かせて、首を傾げる。
「わ、私にはわかりかねます。殿下が分かっていらっしゃるのかと……」
「知るわけがないだろう」
『学園の恋花』では、王家に伝わる伝記本に書いてあったはずなんだけど。
どうして、殿下は知らないんだろう?
「この森で変わった花を見つけたら、そのままにして私に教えてくれ」
「……わかりました。ところで殿下は、その花を何のために探しているんですか?」
フェルナン様の問いかけに、殿下が嫌そうに目を細めた。
「フェルナン殿と話していると、アンリエットと話しているような気になるな。私がその花をどう使おうと勝手であろう?」
嫌悪感を隠そうともしない殿下は、強制力が解けても、アンリエット様のことを好きになれないらしい。
……アンリエット様が幸せになるために穏便に婚約解消をしてくれるのならば、それが一番望ましいけど。
「花、と言えば、言い伝えには”魔法の花”というものがありますね。夢物語でしかないと思いますが、本当に願いを叶えてくれるのでしょうか?」
フェルナン様は、直球勝負をすることにしたらしい。
「何を言う! ”魔法の花”は願いを叶えてくれるのだ! 私は! 私は……あれ……」
激高したはずの殿下の言葉が尻すぼみになる。
「私は、何を願おうとしたんだ?」
問いかけられた従者が、困ったように首を振った。
「強制力を解いて、アンリエット様とフェルナン様を幸せにして!」
その瞬間、花びらに宿っていた光が、崩れるように花びらと共に散っていく。
――ああ、確かにこの花の散り方は、『学園の恋花』で読んだとおりだ。
ガサリ、と緑が揺れる。
「そこにいるのは、誰だ?」
声に振り向くと、そこには予想通り殿下と従者の二人がいた。
「フェルナン殿……と、リヴィア嬢か。何をしている?」
淡々とした殿下の言葉に、私は心の底から安堵した。
どうやら殿下の私への執着も、上手く解けたらしい。
フェルナン様を見上げると、フェルナン様が驚いた顔で私を見ていた。
「わ、私が森に迷い込んだのを見かけたフェルナン様が、探しに来てくださったのです」
「そうか。ところで、どこかで変わった花を見かけなかったか?」
「いいえ」
ギクリとしたけど、私は首を振った。
「変わった花? 殿下は、どんな花を探しているんでしょうか?」
「どんな花……と言われても……どんな花だ?」
殿下が従者に問いかける。
問いかけられた従者は、目をぱちくりと瞬かせて、首を傾げる。
「わ、私にはわかりかねます。殿下が分かっていらっしゃるのかと……」
「知るわけがないだろう」
『学園の恋花』では、王家に伝わる伝記本に書いてあったはずなんだけど。
どうして、殿下は知らないんだろう?
「この森で変わった花を見つけたら、そのままにして私に教えてくれ」
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フェルナン様の問いかけに、殿下が嫌そうに目を細めた。
「フェルナン殿と話していると、アンリエットと話しているような気になるな。私がその花をどう使おうと勝手であろう?」
嫌悪感を隠そうともしない殿下は、強制力が解けても、アンリエット様のことを好きになれないらしい。
……アンリエット様が幸せになるために穏便に婚約解消をしてくれるのならば、それが一番望ましいけど。
「花、と言えば、言い伝えには”魔法の花”というものがありますね。夢物語でしかないと思いますが、本当に願いを叶えてくれるのでしょうか?」
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「何を言う! ”魔法の花”は願いを叶えてくれるのだ! 私は! 私は……あれ……」
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