ヒロインは辞退したいと思います。

三谷朱花

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「リヴィア嬢、一体どういうことです?」

 殿下たちから離れて歩き出してしばらくすると、フェルナン様が私の顔を覗き込んできた。

「どういうこと、って。殿下は、私のことはどうでもよくなったようですね。良かったです」
 
 ニコリと笑ってみせると、フェルナン様が首を振った。

「それじゃない。あの花に、”アンリエット様と私の幸せ”を願ったのはなぜです?」
「……だって、二人が幸せになって欲しいからです」

 私の願いは、それだけ。

「なぜ、自分の幸せを願わなかったんです?」

 フェルナン様の問いかけに、はは、と声が漏れる。

「そんなこと全然考えなかったですね。殿下に見つかったら終わりだと思ったから、必死でしたし。でも、殿下の執着が消えたんで、私のことも願ったことになるんじゃないでしょうか?」
「なぜそこまで……」
「言ったじゃないですか。二人に幸せになって欲しいんですって。あー。でも良かったー」
 
 ホッと息をつくと、足元がぐらりと崩れた。

「危ない」

 フェルナン様に支えられて、ドキリと心臓が鳴る。

「ありがとうございます。もう大丈夫です」

 一人で立とうとするけど、フェルナン様はその腕を離してくれそうにもない。

「もう、足が動かないんでしょう?」

 顔を覗き込まれる。
 その瞳には、今までなかった心配をする気配が乗っていた。

「し、しばらくここで休んでいきますから、私のことは気にしないで帰って下さい」

 間近で見つめられて、顔が熱くなる。
 フェルナン様がクスリと笑う。

「道もわからないのに、どうやって森から出るんです? 大人しく、私に背負われなさい」
 
 フェルナン様に地面に座らされた後、しゃがんだ背中を差し出されてしまった。

「淑女として、それはダメな気がします。アンリエット様に悪いです!」
「何でアンリエット様が関係するんです? 森に迷い込んで足をくじいて歩けなくなったと言えばいい。それに淑女は、一人で森に突入したりしないでしょう?」
 
 最後のからかうような口調に、これ以上の断り文句を思いつけなくて、恐る恐るフェルナン様の背中にしがみつく。
 立ち上がったフェルナン様が、後ろを振り向く。
 か、顔が近いです!

「落としたくはありませんから、しっかりとつかまっておいてください」

 ギュッと体を押し付けると、フェルナン様が一瞬止まった。

「やっぱり、重いですよね! ごめんなさい。おります!」
「これでも鍛えているんですよ? 安心して背負われておきなさい」

 フェルナン様が歩き出した。 
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