宇宙との交信

三谷朱花

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宇宙との交信13 ~宇宙戦争?~

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 私は宇宙人と交信していた。

 その宇宙人は単なる地球人であり、単なる宇宙バカだ。そのせいで彼女に振られるくらい宇宙バカだと私は思っていたくらい宇宙バカだ。事実は違っていたけど。
 そんな宇宙人との元々間違いメールから始まったその交信は、本当にたまにある繋がりだった。
 私が進学した大学に実はその宇宙人がいて、そのメールだけのつながりは続いたまま、私は宇宙人と知り合いになった。
 宇宙人はそのメールの相手が私だとは知らないままだった。
ところが、宇宙人はあんな下らないメールのやり取りだけで私に対する恋心を発露させてしまった。意味が分からん。
 宇宙人がその恋心を自覚するその場面に立ち会ってしまったのは、本当に偶然の出来事で、宇宙人自身も驚いていたようだが、私だって驚いた。衝撃しかない。
 だから宇宙人には申し訳ないが、宇宙人の恋心をつぶす方向で動こうと画策しようとしていた…勿論宇宙人にばれないように。
 なのに、私の計画が一度も稼働することのないまま、私が結び付かないと思っていた私が落っことしてしまった色んなピースが上手いことつなげられてしまい、宇宙人に私がメールの相手だと言うことがばれてしまった。

 最悪だ。
 そう思ったのがいけなかったのかもしれない。

 無理。
 何とか無理矢理目を開けて、ぼんやりと天井を見ながら思う。
 体が簡単に起き上がりそうにない。
 久しぶりに風邪を引いたみたいだ。最近夏日になったり4月の気温に戻ったりと、寒暖の差が激しかったから、そのせいだろう。調子に乗って半袖で寝るんじゃなかった。
 ここ数年滅多に風邪もひかなかったから、余計に高い熱が堪える。
 今日の授業は無理だ。試験期間中じゃない言うことだけが救いかもしれない、と思っていたら、男の娘と組んでる実習があったのを思い出した。
 まあ一人でも別のところに入れてもらえばいいわけだし、と思ったところで、連絡もせずに休んだりしたら男の娘が突撃して来そうだな、と想像する。私が授業を休むことなんてないからだ。

 普通ならさぼりか、で来ないだろう。だが男の娘の精神構造が未だ不明なため、どんな行動を起こすかわからない。
 男の娘はうちの場所は知らないはずだ。だが、偽勇者が雑談のふりして私の住処を特定してしまっているから、簡単に住処は伝達されるはずだ。
 どうしてあそこのルートで情報が筒抜けになってしまうのか、未だによく理解できない。
 偽勇者(女)と男の娘(勿論男)は付き合ったことがある。偽勇者としては“ふり”であり、本気で男の娘を好きだったわけではなかったし、むしろそれはおとりで、男の娘とかかわりのあった宇宙人の友達が本命だったという勇者の風上にも置けない行動をとっていた。
 雑談するふりして私の住処を特定するとかも、勇者の行動としては許されざる行動だろう。なんだその腹黒い行動は。
 普通にどこに住んでいるかと聞かれれば…答えた…か?
 あれ、何でこんなこと考えてるんだっけ?
 
 しばらくまたぼんやりと天井を見て、ああ男の娘に休むとの連絡を入れなきゃいけないと思い出す。
 流石高熱。思考回路を行かなくていい回路につなげやすいらしい。

 枕元にあるスマホを手元に引き入れる。
 うーん、と考えて、休む、だけでもいいかと思う。
 妙に理由を書いて、詮索されて突撃されても困るし。
 そこまで考えて、またもう一つ思い出す。
 そう言えば男の娘と連絡先交換しないままだったな、と。
 流石高熱。連絡先も知らないのに連絡しようと思うとか馬鹿だな。

 さてどうしようと思って、偽勇者からの男の娘ルートがあることを思い出した。
 けどそこまで大げさに伝えなきゃいけないかな、と思うと、なんか違う気もする。
 むしろそこに偽勇者が介在することで、面倒なことが引き起こされないとも限らない。
 …まあ、さぼりか、で普通なら終わりだろう。
 たとえ男の娘の精神構造が未知の領域過ぎるとは言っても、急に休んだからと言って行ったこともない家に突撃するとか、普通はないだろう。
 その普通に当てはまりそうもないことが不安ではあるけど、偽勇者も介在して変に話が膨らんでも困る。
 特に宇宙人の方向に。
 偽勇者は自分が宇宙人の友達を狙っているから、宇宙人の友達にいい格好をしたいらしく、絶賛宇宙人の恋を応援している。
 つまり、私と宇宙人がくっつくように画策している。
 だから、余計なことで偽勇者を介在させたくない。
 考えすぎかもしれないけど、男の娘に連絡しようとせず大人しく寝ている方が得策だ、と熱のある頭で私は結論付けた。
 とりあえず、風邪は寝るに限る。





「ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン!」

 チャイムと共にガンガンガンガン、とドアを叩く音が響く。
 急に聞こえてきた騒音に意識が浮上する。
 あー、とぼんやりと天井を見つめる。
 …世の中には変な人がいるから。
 そう結論付けると、私は布団を頭からかぶる。

「ちょっとみゃーちゃん! みゃー! いるの!?」

 布団の中からでも聞こえる私を呼ぶ声に、スルーした方がいいのか、反応した方がいいのかちょっとだけ考えて、スルーすることにする。
 私はいません。
 偽勇者の対応をする元気など、ない。

「みゃーちゃん! みゃー!」

 インターホンを鳴らす音と、ドアをガンガンと叩かれる音と、私の名前としては恥ずかしい呼び名の騒音に、寝苦しさを感じつつも、私は布団の中で目を固く閉じる。
 しばらくその騒音に耐えていたら、静寂が訪れた。
 流石私。偽勇者の正しい対応の仕方を知っている。
 ぼんやりとした頭で自画自賛しながらウトウトしていると、なぜか人の話す声が聞こえてきた。…遠いところではなく、近いところで。

「あ、やっぱり調子が悪いみたいです。」
「あれ、風邪かねぇ? ここ最近、寒暖の差があるからねぇ。」

 …どうして大家さんの声がするんだろうな…。

「みはる? 大丈夫。」

 ヒヤリとする手が、私のおでこに触れる。
 は?
 薄っすらと目を開ければ、目の前に偽勇者の顔があった。
 は? どういうこと?

「みはる。大丈夫?」
「…は?」

 いろんなことが疑問過ぎて、言葉になりそうにない。

「田崎さん、大丈夫かね?」

 偽勇者の顔が遠ざかると、1階に住んでいる大家さんの顔が見える。

「えーっと…。ただの風邪…です。」

 かすれた声が何とか出たことにほっとしつつ、私は混乱したままの頭を何とか働かせながら、大家さんに失礼だと思って体を起こそうとする。
 けれど、朝から動かないとは思ったけど何とか動いていたはずの体は簡単に動いてくれることはなくて、少しだけ浮いた体はすぐにベッドに逆戻りした。

「いいよいいよ。寝ておきなさい。薬は飲んだかね? おかゆでも持ってこようかね?」
「いえ、大家さん。私が面倒見るんで大丈夫ですよ。」

 私が答える間もなく、偽勇者が大家さんに断りを入れる。

「そうかね。何かあったら声を掛けてな。」
「はい。ありがとうございます。大家さんがいてくれて助かりました。」

 ぺこりと大家さんに頭を下げる偽勇者は、ぼんやりした私の頭には普通の礼儀正しいお嬢さんに見えた。

「田崎さん、いい友達がいて良かったねぇ。お友達が連絡が取れないし家にいるはずなのに出てこないって心配してたんだよ。」

 …そうか。あれだけ騒げば2階建てのアパートの1階に住む大家さんは何事かとやってくるかもしれない…。
 静かになったのは…単に大家さんがやってきて事情を聞いて鍵を取りに行ってそれで鍵を開けて…の時間だっただけか。
 偽勇者の正しい対応の仕方を知ってるとか、私の完全なる勘違いだったわ。
 …でも偽勇者が本当に単なる普通の礼儀正しいお嬢さんだったら、絶対あり得ない出来事だろうな…。

「色々ありがとうございました!」

 カチャン、と扉の閉まる音がして、たぶん偽勇者が大家さんを見送ったんだろうということが分かる。
 …一体、今から何が起こるんだろう。何せ…偽勇者だ。油断ならぬ。
 ぼんやりした頭と身動きできない体で、油断ならぬと警戒したところで何もできないわけだけど。
 なんてことをぼんやりと考えていたら、部屋にため息が落ちた。

「体調悪いなら悪いって、連絡しなさいよ。」

 まさかの偽勇者の説教モード。

「いや…別に。」

 でも、私が体調が悪いと偽勇者に連絡する必要も義務もないわけなんだよね、くらいのことは考えきれる。

「もしかしてと思って買い物しては来たけど、食べられそうなものある?」

 何とか閉じたがる瞼を開けてみれば、テーブルの上には飲み物とプリンとヨーグルトが見えた。

「何も…いらない。」

 起き上がれもしないし、体を動かすこともおっくうだ。…そう言えばトイレは朝行ったっきりだな。…というか今何時?

「その調子だと水分も取ってないんでしょ。ほら、飲みなさいよ。」

 ずいっとペットボトルのスポーツドリンクが差し出されたけど、私は力なく首を振るくらいしかできない。

「本当に世話が焼けるわね。」

 ぶつくさと文句を言いながら、偽勇者はペットボトルの口を開けると、そこに曲がるストローを入れて私に差し出してきた。それを私がぼんやりと見つめていると、また偽勇者のため息が落ちた。

「本当に世話が焼ける。」

 私の頭が持ち上げられると、曲がるストローの口が、私の口に突っ込まれた。
 確かにこれで飲めるだろう。飲めるだろうけど、首は苦しい。
 私は首を小刻みにふって、この姿勢の苦しさを偽勇者に訴えた。

「…わかってるわよ。苦しいんでしょ。本当に手間がかかるんだから。」

 ストローが口から離れ、無理やり持ち上げられていた首が下ろされホッとする。

「扱いが…ひどい。」
「お互い様でしょ。シロー先輩でもないのに甲斐甲斐しく世話なんか焼かないわよ。」

 そう言いながらも、私の背中に丸めた布団を入れて姿勢を整えてくれた偽勇者は、ストローの口を私の口に入れてくれた。さっきよりも幾分扱いがいい。

「飲みなさいよ。飲まないとどうなるかわかってるわよね?」

 扱いがいいと思ったのは気のせいだったらしい。一体どうなるのか全く分かりはしないが、私は素直に吸い込んだ。
 なるほど、五臓六腑に染みわたるとは、このことか。
 どうやら熱に侵された私の頭は何かをすることを拒んではいたけど、体は水分を欲していたらしい。どんどん体に水分が吸い込まれていく。

「動けない一因は脱水もあるんじゃないの。本当に世話が焼ける。」
「ごめん。ありがとう。」

 声にも潤いが戻った気が。どれだけカラカラだったんだって話だ。

「素直なみゃーちゃんとか気持ち悪いわ。早く私に口ごたえしなさいよ。」

 何だろう。毒舌はかれてるのにデレられてる気になるって。これぞミラクル!

「何笑ってるのよ。実際に死にそうじゃないの。笑ってられる状況じゃないって言うの!」

 …何だろう。私、熱が高すぎて偽勇者の言葉が全て“心配してます”に変換されるようになっちゃったのかも。うーん、おかしいぞ私。

「ありがとう。」

 とりあえず今日は感謝祭の方向で。…もう自分でも何考えてるかわけわかってない…。

「本当に素直なみゃーちゃんって気持ち悪いわね。でも、感謝するなら八代に感謝しなさいよ。みゃーちゃんが授業に来ないって心配して私にメールくれたんだから。」

 なるほど、男の娘は正常とも言える反応をしたらしい。男の娘に突撃されることがなくてよかった。いくら何でも、一人暮らしの部屋に女装してるとは言え男子が来るのは抵抗があるし。

「うん。わかった。」
「って言うか、八代の連絡先まだ聞いてないのね?」

 私は小さく頷く。

「必要を感じない。」
「それは正直すぎるでしょ。でも、今回は私が対応できたからいいけど、今日みたいなことがあったら連絡できる相手がいたほうがいいわよ。」
「…そう?」
「そもそもケイスケ先輩にSOS出せばよかったでしょ。」 

 …親切そうに思えたのは、そのための前振り? だって、いつもくっつけようとするから邪推しちゃうよね。

「ヤダ。」

 私の答えに、偽勇者は大きなため息をついた。

「そもそもみゃーちゃんが大学で連絡できる相手って、私かケイスケ先輩だけでしょ? なら、ケイスケ先輩一択でしょ。」
「なぜ。」

 なぜ二択じゃない!?

「2人はラブラブ。」
「なわけない。」
「ちょっと元気戻ってきたわね。なんか食べる?」

 突然の方向転換に戸惑いつつ、私はテーブルに並ぶ食べ物を見て首を横に振った。

「食べるわね。」

 なのに、偽勇者は食べると言うことで断定した。

「…ほしくない…。」
「欲しくなくても食べる。きっと朝も何も食べてないんでしょ。これが昼食って言うのにもちょっととは思うけど、食べやすいとは思うのよね。プリンが一番栄養価高いと思うの。と言うことでプリンね。」
「なら…ゼリー?」

 ちょっと今はこってりした感じのものは受け付けそうにないし、テーブルの上にゼリーはなさそうだから、という理由でその選択にした。まあ、食べたくないのだ。

「素直にそう言っとけばいいのよ。」

 いや、今のは素直とかじゃなくて、完全に食べる気ないアピールだったんだけど。
 偽勇者は私が見落としていたゼリー飲料のパウチの封を開けると手渡してくれる。それを私が口に持っていくのをじっと私を見ていたと思ったら、偽勇者は突然立ち上がった。
 ついに旅立つ日が来たか。

「パジャマ着替えたほうがいいわね。どこにあるの?」
「え? いや、いい。」

 衣装ケースに入っているけど、それを他人に触られるのには少々…いやかなり抵抗があるし、今は自力で着替えられそうにもなかったから…それに他人の手を借りるのも抵抗があった。

「私に着替えさせてもらうのと、ケイスケ先輩に着替えさせてもらうのどっちがいい?」

 究極の二択に、私は渋々同意するほかはなかった。

「クローゼットの衣装ケースに…。」

 私の言葉を聞いて偽勇者はクローゼットの中から新しいパジャマを取り出す。

「私も午後の授業があるしその後バイトもあるから、世話できるのは今だけなの。今できることだけはやらせてよ。…おかゆのレトルトはキッチンに置いてあるから、食べられそうなら食べてね。」
「ありがとう。助かります。」
「本当に素直なみゃーちゃんって、気持ち悪いわね。」

 …究極の二択で脅しといて何を…。

 パジャマを着替えた後トイレに付き添ってもらって、偽勇者はタイムリミットだと言うことでようやく旅立った。
 鍵を閉めてくれるというありがたい申し出もあったので、玄関わきにある鍵置きの場所を教えて、私はベッドから偽勇者を見送った。
 短時間の訪問ではあったけど、割と至れり尽くせりで、偽勇者がやってきたのを警戒したことを申し訳なく思った。




 トントントントン、という規則正しい音で意識が浮上したら、その音の発生源がうちであることが理解はできた。
 発生源は理解はできたけど、状況は全く理解できない。
 …熱のせいで、偽勇者がまた来ると言ったのを聞き逃していたのかもしれない。
 ひと眠りしたおかげで少しはすっきりした気がする。
 トイレに行きたいと思って起き上がると、体は動くようになった。本当に偽勇者には感謝しかない、と思ってキッチンに目を向けたら、目が合った。

「は?」

 お昼、偽勇者に申し訳なく思ったのを後悔した。
 なぜなら、私の部屋に宇宙人が侵略してきていたからだ。

「あ、起き上がれるんだな。よかった。」

 宇宙人がホッとした顔をする。

「違うでしょ。」
「お。突っ込む元気もあるみたいだな。」
「違うよね。」
「会田さんは、全然キレがなかったって言ってたから。」
「違うって。」
「ごはんも食べられなかったんだって?」
「違うだろ。」
「何が?」

 ようやく私の突っ込みに反応した宇宙人は、全然悪びれた様子がない。

「…どうして先輩がうちに。」
「こんな状態のみゃーちゃんを一人にしとくなんてできません。って頼まれたから?」

 偽勇者め。旅立ったと思ったらいらんパーティー増やしに行ったのか!

「ありがとうございました。もう大丈夫だと思うので、お帰り下さい。」
「まだ顔赤いよ?」
「…大丈夫ですから。」

 証明しようと立ち上がると、体がふらっと揺れる。
 宇宙人は慌ててキッチンから私の方にやってくると、私をベッドに座らせる。

「ほら、寝といて。」
「ヤダ。」
「駄々こねない。」
「ヤダ。」
「どこの駄々っ子だよ。」
「ヤダ。」
「ちょっと、みはる?」

 本当に駄々っ子に言い聞かせるような宇宙人に、私はため息をつく。

「トイレにも行かせてもらえないんですか。」

 私の攻撃に、宇宙人が顔を赤らめた。

「悪い。じゃあ、行くか。」

 じゃあ、じゃない。

「一人で行けますから、大丈夫です。」

 ため息をつくと、私はもう一度ゆっくり立ち上がった。

「さっきふらついてただろ。」
「大丈夫ですって。」

 私は宇宙人が支えようと手を出そうとするのを手で払うと、いつもとは違うゆっくりとした動作でトイレに向かう。
 トイレに入ってから、少し悲しそうな顔をしていた宇宙人に何だか悪いことをしたような気はしたけど、そもそも家主に許可も得ずうちに来ているのが悪いと結論付ける。
 トイレから出ると難しい顔をした宇宙人が立っていた。

「何でそんな顔して立ってるんですか。」

 怒っているのは私の方なのだ。

「体調悪い時ぐらい、人に頼れよ。」
「単なる風邪なんですから、寝てれば治ります。」

 私の反論に、宇宙人は大きなため息をついた。

「会田さんが脱水になりかけてたんじゃないかって言ってたぞ。…お前一人暮らしなんだから、体調崩した時ぐらい人に頼れよ。」
「…そんなこと言われても。」

 頼ろうと思える相手が…いないのだ。

「お前はさ、会田さんのこともタケノシンのことも友達って思ってないのかもしれないけど、あの2人、本気でお前のこと心配してたぞ。それでも友達じゃないって言うわけか。」
「それは…。」

 あっちの勝手だ、と言えるだろう。だけど確かに、そう断言できなくなっていることに気付く。

「ほら、お前も友達だと思ってるんだろ。」
「…でも、本当に友達だったら、彼氏でもない男子の訪問を勝手に決めますか?」

 だけど、素直になり切れるわけもなく、今日最大の疑問をぶつけてみた。

「会田さんは俺とお前の関係性を理解してるから、ありだろ。」
「絶対違う。それは絶対違う!」

 意気込んで言い過ぎたのか、体がふらっと揺れて、宇宙人から支えられてしまう。

「まあいいから、お前はまだ寝とけ。」

 腕を引かれて私はベッドに座らされた。

「まあ良くないですよ。」

 ベッドに座ってから恨みがましく宇宙人を見上げると、宇宙人がクスリと笑う。

「いいんだよ。俺が好きでやってるんだからな。」
「だから、違うって。」
「今俺にキスされるのと、料理してもらうの、どっちがいい?」
「は?」

 あり得ない選択肢にぽかんと宇宙人を見ると、また宇宙人はクスリと笑う。

「料理してもらう一択だろ。ほら、お前には断る選択肢はないんだよ。」

 そうか、と思ってふらつく体をベッドに戻す。
 …そうか??

 あれ、宇宙人が侵略して来たってことは、宇宙戦争勃発?
 いや、絶対今そんなこと言ってる場合じゃないよ?
 …まだ熱がありそうだ。

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