ಂ××ౠ-異世界転移物語~英傑の朝

ちゃわん

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第5章

第48話

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「グルルルルルッ………。」

 慣れた呼吸が聞こえる。

 地竜山名物「のろま」の火蜥蜴だ。

 すっとぼけた顔してるぜ…。

 ほら、そんな顔してると…っとぉ。

 「ルルルルッ?…グッ?……グル?」

 こんなに簡単に捕まっちゃうんだぜ?

 俺の土魔法も随分な所まで来たな…。

 余計な動作はせず。

 歩いてるときに息をするのが当たり前であるように、魔法を発動するのに意識を殆ど割かなくなった。

 速さも強度も申し分ない。

 効果範囲は…自分の周り半径5mってとこか。少し狭いかな。

 地面に手を付けばもう少し範囲は広がるけど、精々10mってとこだ。やっぱり遠いところの土を操作するのは難しい。…いや魔力を全力で込めればもっと行くか?

 「グォッ!」

 自分の手元にある土、というか物質か?それならかなり早く精度良く強度も形も変えられる。

 だけどなぁ…、土魔法単体じゃどうしても遠くへ飛ばしたりは出来ないんだよな。

 「ゴギャッ!!」

 しかも操るだけだ。

 火魔法も水魔法も風魔法もそれ自体を発生させてるのに土魔法だけは実際にあるものを操ることしか出来ない。

 ファイヤーボールとかウォーターボールとかウィンドカッターみたいなことは出来ない。

 「グッ…オッ…」

 形を変えて固くするだけ。柔らかくも出来るか。

 …下品なオヤジギャグみたいになっちゃった。

 まぁほかの魔法と比べて不遇じゃないのかってこと。

 「ゴッ…ッ……」

 ただ喰也はどの魔法も飛ばす時は風魔法を使っているはずだと言っていた。

 風魔法を無意識に同時に発動していることが多いんだと。

 純粋な火、水、土、風魔法を使うことは思いの外難しいとのこと。

 綺麗な四元素魔法を使うことが出来るかどうかが魔法を極めるための第一歩とされてるらしい。

 「ッ………」

 土を操作するときだって水は入るし、温度はある。

 風を操るときには空気中に水がある。とまぁ、そういった具合だ。

 複合している状態の時は便利だが威力が低い。

 シンプルな時は威力が高いが、応用が狭く難しい。

 どっちが良いのか。いやそもそもシンプルな方は俺できねぇや。

 「………」

 6発か。

 喰也の水魔法はかなりの威力になってる。

 この2ヶ月で以前の倍の威力だ。

 とんでもない成長率だ。ここジャンプじゃねぇんだぞ。

 「5…いや…6発か…。」

 だけど本人は納得言ってない様子。

 何度もとんでもない成長だ。直ぐに強くなるって言ってるんだがなぁ…。

 「なんで一発で出来ない?前は、勇者の時は出来たのに…。一発、一発で…俺だって…。レベル?もっと敵を倒…、いやしかし…そん……言ってな…。」

 「なぁ、大丈夫か?取り敢えずノルマも終わったし今日のところはとっとと引き上げようぜ?」

 「経験…ゲー…、…ん?…あぁ、そ、うだな。今日は上がろう。」

 しかし結構金たまんねぇな…。

 一回のアタックで金貨20枚稼げるときもあるけど…そんなのは稀だった。

宿代は二人で一日金貨4枚ほど。高すぎるが安全な宿ってのはそれだけ高価だってことだ。特にこの街では。

 しかもここじゃ飯が高い。

 少なくとも腹一杯食ってもいいと思える飯は高い。

 俺達も迷宮で魔法に剣にと動き回ってるから腹は減る。

 当然腹いっぱい食うのだが…これも二人で一日金貨1枚以上は掛かる。

 しかも毎日迷宮に潜れるわけじゃない。

 いや俺達は潜りたいんだが、火蜥蜴ってのは数に限りがあって暫く経たないと出てこない。

 2,3日毎って感じだ。

 つまり稼げるのは一日金貨1,2枚程度ということだ。

 これでも普通に生活する分にはだいぶ贅沢できる金額だ。普通は裏ギルドに納める分だって無いわけだから。

 しかし俺達は裏ギルドにチケットを融通してもらう予定で、情報も買ってる。

 こんなもんじゃ全然足りない。

 少し計算が甘かったかな…。

 「…俺達このペースじゃまずいんじゃないか?」

 「…あぁ…。このペースでいっても半年は掛かる…。」

 「…半年か…。ちょっと時間がかかりすぎるよな…。どうするよ?」

 「…裏ギルドに仕事を紹介してもらうのはどうだろう?」

 「…そりゃ難しいだろ…。すでに仕事を紹介してもらってるようなもんだろ?それよりも設けがある仕事をって…とんでもない仕事をさせられるかも知れねぇぜ?…それより迷宮のもっと奥に進むってのはどうだ?他の迷宮より地竜山の方が稼げるらしいし、迷宮を変える選択肢はねぇよな?」

 「そりゃな。…だが、深い階層に行くにはまだちょっと俺達の実力が足りない…気がする。」

 「…そうか、そりゃ……そうか。普通の冒険者ギルドの依頼をこなしたらどうだ?」

 「ここの冒険者ギルドは迷宮に入って、狩って、売るための受付しかしてない。他からの依頼なんて殆ど受けてない…らしい。結局もっと深いところに潜れって言われるだけだろ。」

 「…裏ギルドはもっとやばいかも知れねぇぜ?」

 「そうなったら依頼を受けないだけさ。必要だとしても一回受けてそれっきりにすればいい。今だって似たような感じだろ?」

 「…それっきりねぇ…。ズブズブの俺達をそんなに簡単に諦めてくれるのかねぇ。」

 「…。…依頼を受けるときにヤバ過ぎるのはしないって言っておくか…。」

 「…そうだな。まぁ、それならなんとかなる…か?」

 「あぁ…。」

 「…まぁ、飯食いに行こうぜ。俺腹減っちまったよ。」

 「…あぁ…。」

 大丈夫なのか。

 上手いことやっていけてるのか。

 エイサップは準備を入念に、着々と近づいてきてる。

 それに対して俺はどうだ。

 逃げるための金すら満足に稼げない。

 …そこらのものを金に変えて売るか?

 …。

 …いやだめだ。

 裏ギルドの奴らは俺らの懐事情を知ってる。金貨200枚を提示されてすぐに払えず日々迷宮に潜ってる。

 お金が無いんで頑張って稼いでますって言ってるようなもんだ。

 そこでいきなり大量の金塊を出してみろ。出処は何処だって話になる。

 俺が無尽蔵に金を作り出せると気付かれたら…。

 追手がエイサップからエイサップと裏ギルドになるだけだ。

 裏ギルドの奴らを蹴散らせる程度の強さはある…よな。だったら無理を押し通しても問題ないか…?

 …いや、それは良くない。

 強くなくても、弱くても。人を制する方法はある。俺はそれを学んだだろう?

 裏ギルドに目をつけられたら簡単に振り切れるとは思えない。

 そして騙され、搾取される。

 最終手段。これは最後の手段だ。ギリギリまでとっておくべきだ。

 …ならやっぱり他の金を稼ぐ手段を考えなきゃいけない。

 人を殺さず、騙さず、大金を稼げる方法…。

 …。

 …そんな都合のいい仕事なんてあるのか?

 みんな考えてることじゃないのか。

 …いや聞いてみるだけなら大丈夫か。

 取り敢えず聞いてみる。駄目だったら断る。

 取り敢えずやってみよう。

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 「エイサップの臨時チームは、鬼の住処に入っていった。それは既に確定している情報だ。」

 「ああ、それは俺も街で調べた。金貨も銀貨も使わずにな。」

 酒と飯は使ったが。

 「まぁ、待て待て。これは恐らく…という情報だが、奴らは蟻の領域に入っているはずだ。つまり鬼の住処はもう抜けてる。」

 「そうなのか?…随分簡単に分かるもんなんだな。」

 「簡単ってわけじゃねぇさ。こちとら仕事だ。それなりに技と人脈を使って手に入れた話し…ではあるが確かに情報は入手しやすい。」

 「へぇ。そんなやべぇ奴らなら簡単に情報なんて渡さないような気もするがな。」

 「奴らの考え方ってのは独特でな。いや、エイサップの考え方か。過去にも長期間逃げた相手を追いかけたこともあるらしいんだが、その時も今も情報はエイサップの側から提供されてるんだ。」

 「…そりゃ…、向こうに裏切り者がいるってことか?」

 「そうじゃねぇ。エイサップが自分の情報をわざと流してるんだ。」

 「…?なんでそんな事を?追われてる人間にバレちまうじゃねぇか。」

 「奴が言うにゃ、確かに追ってるのがエイサップだと分かってないんだったら情報は隠すんだと。だが自分が追っていると分かっていて何処にいるかわからない敵に対してはわざと情報を流すんだとよ。それが追われてる人間にとっちゃかなりの重圧になるらしい。」

 「…。」

 「っていうか、逃げてるやつもエイサップに尻まくられてると分かってりゃ色々調べるだろうしな。エイサップ程有名な人間だと、情報なんて端から漏れてくしな。隠すだけ無駄ってことなんだろ。」

 「…。」

 「んで、あのエイサップにこれだけしっかり追われてるとわかった奴らは、色々やらかすことが増えるんだとよ。そうすると追う方も情報が増えてより追いかけやすくなるんだってさ。」

 「…詳しいな。」

 「これで飯を食ってるからな。」

 「だけどそういう情報でも与えちまったら冷静になっちまう奴だっているんじゃねぇのか?」

 「数は少ないだろうがそういう奴もいるだろうな。だが問題ないんだと。それなら時間を掛けて追い詰めていけばいいと。重圧で相手がミスを起こせば早く追いつくと。どちらでも構わないんだとさ。うまく行けば早く捕まる。失敗しても当初と変わらずってんなら、取り敢えずやって見るんだろうな。」

 「…ふーん…。」

 「とはいえ、エイサップも大分本気だ。少なくともここまで戦力を揃えることは今までなかった。幾ら王女様の金と権力があるからってよぉ。…大分その逃亡奴隷を警戒してるんだろうな。」

 「その逃亡奴隷のことってあんたらはどれ位掴んでるんだ?」

 「そうだな…。男で背は俺より少し小さくらいか?魔法の扱いに長けており、黒目黒髪だ。どこにいるかは全く掴めてないが…、エイサップが鬼の住処を抜けて、蟻の巣を突っ切ろうとしてるなら、フォア伯爵領、ウンゲルン子爵領、オッソリンスキ伯爵領、ガッツマイヤー子爵領、ザリー侯爵領ってところか?いや、ここガハルフォーネ侯爵領も一応ありえるのか?」

 「…まぁ、あまり分かってなさそうだな。別に期待してなかったがよ。」

 「まぁ、ここらへんはエイサップが流した情報のうちだがな。腕がかなり立つ奴かも知れねぇってのが俺達の予想よ。」

 「へぇ。鬼の住処を通り抜けたからか?」

 「それじゃまだ弱い。だから「かも」知れないだ。鬼どもってのはバカだが知性があるからな。どんなへっぽこ魔物でも知性がありゃその裏をかくことで生き延びることも出来る。だが次の蟻共は駄目だ。」

 「へぇ。」

 「奴らは本能で襲ってくる。とんでもねぇ数で昼夜問わずに。そこを一人で抜けるとなりゃだまくらかし合いや小手先じゃどうにもならん。少なくとも最低限、地に足付いた実力がなきゃ出来ねぇよ。ここを抜けるか抜けないかで逃亡奴隷の評価が変わってくる。既にこの奴隷には結構な人気が集まってるからな。ここを抜けたとわかりゃ一気に英雄扱いもありえる。国としちゃ面白くねぇ話だ。エイサップの情報操作術が裏目に出るかもな。」

 「…ま、どうなるか楽しみにしてるよ。…他の奴隷でも黒目黒髪のやつがいたって話だが…。」

 「あぁ、王都に連れてかれたってやつだろ?残念ながらそいつの情報はまだ入ってねぇ。王女様の唾が付いてる奴隷だ。危険を侵さずに手にいれる情報じゃどうしても時間が掛かる。」

 「おいおい…、危険を犯して手に入れてくれよ…。」

 「そうなったら情報料はかなり高くなるぜ。桁が違う。いいのかい?金が必要なんだろ?今だってそこまでうまく稼げてるわけじゃねぇじゃねぇか。」

 「…さすが情報の取扱は上手いな。俺ら如きの情報まで扱ってくださるとはね。裏ギルドってのは暇なのか?」

 「ッハ。何。大事なお客様のことをご心配差し上げただけよ。ちょぉ~っと近くで見守り過ぎただけさ。感謝してくれていいんだぜ?」

 「ありがたくて涙がでるね。反吐も出てるのは気にしないでくれ。」

 「ヘヘッ。で、どうするんだよ?金がなくて困ってるんだろ?」

 「金はあるんだよ。ただ目的の金額まで貯まるのに時間がかかる。迷宮に冒険者なんてそうそう転がってねぇし、…ていうかそもそも地竜山迷宮に冒険者ほとんどいねぇし、魔石をこっちに卸すだけじゃ満足に稼げねぇ。割のいい仕事があれば教えてほしい。」

 「ふん…。じゃあ邪魔な奴を。」

 「殺しはなしだ。騙しも盗みも。それでいて金の稼げる仕事がほしい。」

 「…あるわけねぇだろそんなもん。」

 「…ま、そうだよな。はぁ…しょうがねぇか…。」

 「…無いわけでもない。」

 「マジかよ。」

 「こいつは…信頼のできる実力のある奴じゃねぇと出来ねぇが…、あんたはここでしか手に入らない乗船券が必要で逃げることは考えられないしなぁ…。火蜥蜴をこれだけ仕留められるっつーのも実力の証明だし…うーん…。」

 「おいおい、もったいぶるなよ。何をやるんだ?」

 「んー…まぁ、いいか。密輸だよ。密輸。」

 「ほぉー…密輸か。この街から…他の街ってことか?」

 「うーん…厳密には違う。このガハルフォーネ領から他の領へってことだ。扱うのは迷宮産の物が多いかな。ここでしか手に入らないものだ。そして一般的には流通が禁止されてるものだな。」

 「どんなもんだ?」

 「ま、貴族様が欲しがるようなもんだよ。暗殺用とか暗殺防止用の魔法具とかかな。迷宮から出てきた物によって決まるからその時々で変わる。」

 「割のいい仕事なのか?」

 「貴重な魔法具だったらな。基本的に物や人の出入りは厳しく管理されてる。…いや出入りっていうかガハルフォーネから出ていくもんについてだけだがな?」

 「入ってくる分には問題ねぇのか?」

 「そりゃあな。ここは完璧な実力主義だからな。実力さえありゃどんなクズでも犯罪者でも受け入れる。そうなりゃこの領の周りの領にいるクズどもはここに集まってくるだろ?」

 「まぁ…確かに。」

 「そうすると周りの領は自然治安が良くなる。この領の殆どのギルドはハルダニヤ国中のギルドから独立してる。あの冒険者ギルドですらだ。本来ならそんなこと許されずに干されちまうが、こういう点があるから見逃してもらってるのさ。」

 「その分出てくのが難しいってことか。…まぁ、元犯罪者が元気になって戻ってこられても困るからなぁ。」

 「そういうことだ。しかもここで作られたやべぇもんとかを外に持ってって稼ごうとする奴らだって多いからな。物の運び出しも厳しい。違法性の無いものでも高い税金を掛けられていたりする。自然、この領から物も人も出ていくことは難しくなる。ここの地形もそれを助けてるな。周りは山ばっかり。他領に行ける所は場所が限られてるから向こうも監視するところが限られ、クズが入り込むのもいくらか楽に防げるようになってる。」

 「そこで密輸、か。」

 「あぁ。こちらの希望の物を希望の相手に卸してくれりゃ文句はねぇよ。あんたの希望通り、違法性は無いが高い税金が掛けられているようなものもあるしな。…しかし失敗したときゃ責任はとってもらう。」

 「…失敗したときってのは多分俺が死んでるときだろ?それでどう責任を取るんだよ。」

 「もちろんあんたの相棒の命でさ。」

 「…なんだと手前ぇ…。」

 「殺しも、騙しも盗みもねぇ。ただし命は掛けてもらう。どうするよ。もちろん今のままちまちま稼いだっていいんだぜぇ?だが、どう考えたってなぁ…見てても今のペースじゃとてもとても…。」

 「…。」

 「さぁ、どうする。」

 …クソ野郎が。

 無理に決まってる。

 …だが時間がか掛けられないのは事実。

 しかもこいつらに財布事情も知られてる。流石情報を扱う裏ギルドか…、俺の魔法で金の嵩増しも難しいか…?

 …エイサップは着実に近づいてきてる。

 いや。いや、しかしこれは俺の都合だ。喰也は関係ない。

 あいつはもっと余裕があるかも知れないし、最悪ここで潜伏してたっていいわけだ。

 …。

 「…相談させてくれ。明日魔石を卸すときに返事をする。」

 「おうおう。構わねぇともさ。じぃっくり相談してくれ。」

 「…。」

 美味しい話はない、か。

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 「受けるべきだろ。」

 「…いや、しかし人質みたいな扱いになるってことだろ?そいつはさすがに…。」

 「何がまずいんだよ。そりゃあ確かに今は人質よりかは多少ましだよ。だがそれは俺達が捕まるまでだ。シャムはエイサップに、俺は王女に捕まったら人質と同じかそれ以下になることは間違いねぇ。エイサップがメインで追ってるのは、逃亡奴隷だろうが勇者も当然追ってるだろう。公言してはいないがな。つまり逃亡奴隷が捕まりゃ勇者も芋づるってわけだ。」

 …確かにそうか。気付かなかったが…、間違いないだろう。自分のことだけで精一杯だったが王女とエイサップが組んでるんだ。当然勇者も追ってるに決まってる。

 「…だけど俺が失敗したら殺されるんだぞ?毎日迷宮に入って安全マージンをとって強くなって深層に進んだ方が死ぬリスクは断然に少ない…かもしれない、たぶん。…金だってそっちのほうが稼げるかも知れねない。」

 「確かにそうだな。で?それは何時の話だ?三ヶ月後か?半年後か?一年か?なぁ、シャム。俺達にそんな時間ねぇよ。エイサップは確実に間を詰めてきてる。そりゃそうだ。俺達は動いてねぇんだからな。」

 「…。」

 「身元の怪しい俺達が船のチケットを手に入れられるのはここだけだ。知ってるか?ここ出身の冒険者は、よそで冒険者の仕事をしようとしたら一から冒険者登録し直しなんだぜ?もちろん身元が問題なけりゃ直ぐに元の級に戻れるらしいけどよ。ハハッ、身元が確かな奴なんざいねーっての。あぁ、他のギルドでも同じようなもんだってよ。ここに入るのは自由だが出るのは不自由。」

 「つっても他で冒険者登録をやり直しても俺達なら問題ないんじゃねぇのか?最低限の変装はお互いしてるし、俺達の人相を知ってるやつなんざいねぇだろ。他で金を稼いでチケットはここで買えばいいんじゃ?場所を移し続けて稼ぎ続けてれば、奴らが俺達に追いつくことはねぇんじゃねぇか?」

 「それは…やりたくねぇ。」

 「…なんでだよ。」

 「俺の変装は髪の色目の色くらいなら変えられるが人相は変わってねぇ。そして俺は貴族共には結構顔を売っちまってる。それに多少の平民にもな。場所を点々と替えたら俺だと分かる確率は増えちまう。…この領には平民以上はこないからな。」

 「…面なんて仮面ででも隠せば…。ここから来たなんて言わなきゃ普通の冒険者登録と同じだろ?」

 「流石に仮面で隠したまま冒険者登録は出来ねぇよ。どこのギルドでも同じだろうがな。ここが特殊なだけだ。…まぁ、俺の魔力が成長して顔も変えられるようになりゃ問題ないんだが、それが何時になるかって話だからな。明日かもしれねぇし…一年後かも知れねぇ。」

 「…。」

 「…ま、これは俺の方の問題だ。シャムは今言った方法でなんとかなるかもな。いや、かなり確かな方法かもしれねぇ。」

 「…。」

 「だがここでシャムがリスクを負うってんなら、俺もその端っこくらいは負うぜって話だ。…俺は何も出来ねぇからな…。」

 「……この話、受けよう。」

 「…そうか。」

「とっとと金貯めておさらばして向こうの大陸ではパーッと好きなようにやろうぜ。」

「…いいな、それ。フッフッ、向こうに行ったら金稼いで女ぁ買いまくろうぜ!金持ってる冒険者ってのはモテるんだぜぇ!」

「え!…いや、…俺はそう言うの興味ねぇけど…、まぁどうしてもっていうんなら?まぁ試しに?あれだけど?い、いや、やっぱ駄目だ。俺にはやることがあるし、裏切るなんて、えっと…。」

「ふぅ~ん…、でもやりたいことくらいあるだろ?向こうに行ったらやればいいじゃん。」

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「う~ん…、欲しいもの欲しいもの…う~ん…あ。」

「お?」

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「そうそう。こっちの飯がまずいわけじゃないんだけど、最後の最後でめちゃくちゃ食いたくなったんだよね。死ぬ寸前にさぁ。あ~…、カレーとかも食いたくなったな。梅干しもいいな…。」

「分かる。カレーめちゃくちゃ喰いたい。あと豚汁とか味噌汁とかも喰いたい。」

「分かる!いいよな!いや日本に居た頃って味噌系?っての?そんなに俺のランキング入って来なかったんだけどさ。」

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「いい!いいね!!そういうなんか適当系?みたいなのがすごい食いたくなるんだよ!」

「分かるわ~!そういう飯系は確かにデカイなぁ…。」

「そう!だからなんとかして再現できないかなって…。」

「う~ん…。だったらアンドゥインの町に行ったらどうだ?南部大陸の東にあるんだけどさ。」

「アンドゥイン?の町?どういう町なんだ?」

「ホビットが治めてる?国?集まり?って感じらしいんだけどさ。美食の町とも呼ばれてるんだよ。」

「へぇ…。」

「ホビット族は芸術とか食事とか文化とかすごい好きでな。色々なところの色々なものを喰いたいっつって旅とかに出ちゃうほどなんだと。んで集めた知識や調理法なんかを自分の国に持ち帰るから色々な料理とかそれを作れる奴が沢山いんだってよ。」

「それなら米を知ってる奴も…。」

「いるかも知れない。カレーだって一から作るのもなんとかなるかも知れない。なんたって世界中の料理が集まってんだからな。」

「いいな、いいな、それ。やるべきことが終わって危険が無くなったら、日本食を開発しよう。うん。佑樹もやるよな?」

「当たり前だろ。俺もカレー喰いたい。カレーは無理でも、味噌と米くらいだったら作れそうな気がしない?」

「そうだな…確かに…醤油とかも行けそうな気がする。大豆とかから作るんだよな?」

「そうそう。発酵だっけ?…腐らせればいいんだろ?うん…。成功したらそれを売り出して…。」

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「いいねぇ~。お金稼げたら女にもモテるし…。」

「何だよ、結局そっちかよ。」

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「…ある。」

「だろぉ?!女はいいぞ~!柔らかくて気持ちいいからな!」

「…どんな感じで気持ちいいの?」

「まずな…」

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 「…へぇ…。受けんのかい?」

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 「…へぇ。」

 「いいぞ?失敗しても。見捨てても構わねぇ。そんときゃあいつを攫って適当にご質問差し上げれば直ぐに思い出してくれるだろうよ。自分が何処の誰かってことくらいな。」

 「…。」

 「こいつは俺の賭けさ。俺はあんたが密輸を成功させると思ってる。かなり強ぇ熱を感じるからな。だが万が一失敗しても裏切っても構わない。もう一人の方は、もっと高貴な冷ややかさを感じる。」

 「…そんな事を聞いちまったらあいつの側を離れるわけにゃいかなくなるな。俺が密輸してる隙きにあいつを攫って、密輸の報酬を得るのが一番利口だからな。」

 「ハッハッハ!たしかにそれが一番利口だ。だが、密輸を成功させるような実力があるやつを裏切ったら、流石にやべぇってことくらいは分かる。俺達は密輸を殆ど成功させることが出来ねぇから、成功しそうなあんたに頼んでんだぜ?ここまで話しててあんた自身、自分の密輸が失敗するなんて微塵も思ってねぇだろ?」

 「…まぁな。」

 「だったらそんな奴には媚を売っといた方が得だ。まぁ、そうでなくても俺達は約束は違えねぇ。どんな口約束でもな。一度約束したらそれは守らねばならん。何時でも何処でも何でも裏切ってたら直ぐにお陀仏しちまうよ。この業界じゃ特にな。」

 「…そう言えばあんたの名前を聞いてなかった。教えてくれ。」

 「…ここじゃ名前なんざ意味ねぇ。意味ねぇが…、裏通りのマルタと呼ばれてるな。」

 「そうか。俺は…」

 「シャムだろ?のろま狩りのシャムって呼ばれてるぜ。」

 「…知らねぇ、何だそれ。」

 「地竜山迷宮に潜るやつってのはそれだけでそこそこ目立つのさ。」

 「ニギ・サンダーボルトのせいか。」

 「まぁなぁ。あいつも俺達の仕事を良くこなしててな。結構なお得意様だ。流石に近接最強の大陸級だ。戦力が必要な依頼なら出来ないことはねぇ。だからまぁ、あいつの立場が悪くなったらこっちでも手を貸してんのさ。地竜山に人が来ねぇのもその余波かな?」

 「ざけんじゃねぇよ…。こっちゃハラハラしながら仕事してんだぞ。」

 「悪ぃ悪ぃ。だがあんたも俺らの身内みたいなもんだ。ニギの方にもそれとなく話は通しといてやるよ。手ぇ出さねぇでくれってな。」

 「…逆撫でするようなことは言わねぇでくれよ。ぶち殺されたらたまらねぇ。」

 「任せろって。付き合いはそこそこ長いんだ。」

 「…はぁ。まぁ、いい。他になんか情報ねぇのか。」

 「あぁ?おいおい情報はタダじゃねぇだろ?」

 「密輸を絶対成功させてやるんだ。少し位まけろよ。」

 「…はぁ~~。ま、噂程度でいいんならな。」

 「かまわねぇよ。」

 「サウスポートにナガルス族が現れたらしい。いつもどおり、空を飛んで旋回して終わりだ。」

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 「かもな。しかも奴隷の主はバカだって話じゃねぇか。」

 「そう。この街の領主の息子。何処でもバカはいるもんだが、どんなバカでも貴族の末席なら世の流れ位は読めるもんなのさ。ここのバカは何処にもいないバカだったってわけだが…。普段ならそれでもなんとかなるもんだがな…、ことがナガルスの事になったらよ、下手したら国に睨まれる事だってあらぁな。」

 「バカの親父殿はどうなんだよ。息子の手綱を締めるのは親の役目だろ?いざとなったら息ができなくなるまで絞めることだってしなきゃならなん話じゃねぇのか。」

 「…あくまで噂程度の話だからな。そんな程度でやっちまった時の貴族の評価の方を気にしたんだろ。それに一人息子って所もキツく出来ない理由だろうなぁ。増長する理由でもあるんだが。ま、実際の所はわからん。やんごとなき方々のお考えはな。」

 「親ばかはどこも同じってことか。」

 「…どうだろうな。そんな甘ぇ方でも無い気はするが。それに片付けた所でもう遅いって判断かもな。」

 「…?」

 「息子殿は大層ご立派な趣味をお持ちでな。少年が大好きなのさ。」

 「…つまりその奴隷は…。」

 「ま、そういうことだろう。殺してだろうが売ってだろうが片付けた所で報復の対象からは外れんだろ。」

 「…胸糞が悪くなる話だな…。…どこでも、ある話とは言えな。」

 「羨ましいこったな。」

 「何?」

 「日々の暮らしに精一杯でよ、正義の心を燃やす暇も無くなっちまった。」

 「…。」

 「明日、物を渡す。その時に相手と受け渡し方法もな。どんな方法で密輸しても構わん。期日は最短で一週間だ。」

 「…短くねぇか。」

 「希望があれば期日は伸ばせる。早く終われば終わるほどあんたの分け前は増える。最初は長めにとっておけ。」

 「わかった。明日朝一でここに来る。」

 「待ってるぜ。」

 時間はない。

 エイサップは近づいてきてる。

 ここらの状況も…良くはなってない。

 急げば急いだだけ俺達に有利になる。

 遅れれば遅れただけ…。
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加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
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16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
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 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
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 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
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2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
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第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
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俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

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