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第5章
第47話
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「なんでだ。うまく行かねぇ。なんで蜥蜴一匹倒せねぇ。」
「…まだ魔法使えて一週間も経ってねぇだろ?それに数打ち込めば倒せるじゃねぇか。」
「シャムに押さえてもらっててだろ?もっと…前はもっと出来たはずなんだよ。呪文がわからないからか?あの時は何も考えなくても言えてたのによ…。」
「う~ん…そもそも使えてた魔法が一度使えなくなったってのがまずおかしい感じだしなぁ。最初がむしろおかしかったんじゃねぇか?」
「…そうなのか?」
「いや、わかんねぇけど…、最初は例えば…勇者的な?不思議な力でブーストしてたけども、逃げたことで勇者としての力がなくなっちまったってことなんじゃないのか?それで本来の普通の俺がここに来た時みたいな状態になってる…ということじゃ?」
「…そうなのか…。」
「つまり一からやり直してる状態ってことだろ?それならむしろ早いと思うぜ。少なくとも俺は火も水もそんなに吹っ飛ばせなかった。」
ナイフ作ってるだけだったし…。
「今までやってきたことは全部無駄か…。」
「…。」
「…まぁ、いい。気分転換でもするか。」
苛ついてるな。
今までは全く魔法も言葉も使えなくなってたから諦めてたんだろうけど…なまじ魔法が使えるようになったから前みたいに使えないことがストレスになってんのか。
最初は魔法が使えるだけでかなり嬉しそうだったのに今はムカついてる。
話を聞けば勇者時代はかなり魔法を使えたそうだしな。
この世界ではやはり魔力をどれだけ操れるかで強さが変わってくる。
商人や職人ですら必ず魔力を使ってる。
商人だったら契約時や物の目利きなんかに魔法を使う。
職人だったら物を作るときにバリバリ使う。人間にとって物語の中にしか出てこない魔法をそこらのおっさんドワーフが普通に使ってるなんてのはよく聞く話だ。
この世界で魔法を扱えないということは、即ち底辺だ。
前は底辺で諦めてたのにまた勇者…程じゃないにしろ少なくとも底辺は脱してしまった。そうなると欲が出てくる。良く言えば向上心?それが良いか悪いかわからないが、喰也はもっと成り上がれると思ってる。正直喰也の成長率を見ればそう期待するのも分かる。
分かるが、勇者だった頃の経験が今の喰也の成長率を見えなくさせてるんだろう。
昔出来ることが今出来ない。
どんなにすごい成長を見せてても、冒険者としてはまだレベルが低い。俺が勇者だった頃はこんなもんじゃないんだ…てな具合になってるかも知れない。
まぁ、キツイよなぁ。
キツイのはよく分かるんだが…。
「オネエサン。キレイ。セカイでイチバン。ワタシヒトメボレ。」
「失せな。ヒモ野郎。」
「オウ…。」
なんというか…。
「キレイなオネエサン。おサケ、イッショノモウ。」
「唾でも飲んでろ。」
「ゴクリ…。」
…ヒモになろうとするのやめてくんない?
あと、ここの女の人怖くない?
お…諦めたか。
そうそう。おとなしく宿で酒飲もうぜ。
取り敢えず今日は火蜥蜴14体狩れたんだ。
気持ちよく食って飲もうじゃないのよ。
「う~ん…うまくいかねぇな。前は飲んでるだけで声とか掛けられたんだが…。お気にの香水だって付けてるんだぜ?…前の女に貰った奴だけど。」
…。
…あれ?もしかして佑樹って結構なクズか?
「いや…別にヒモに戻る必要もないだろ?取り敢えず稼げてるんだしさ…。」
「あ、い、いや、そういうことじゃねぇよ。せっかく飲むんなら女もいたほうが良いだろ?それに、ほら、情報だって手に入るだろうし。ここは慣れてる俺がいっちょさ。」
「そういう…いや別にいいって。情報は裏ギルドで手に入れてるしさ。」
「あ、そう?…まぁ、うまくいけば奢ってもらえるだろうしヒモにしてくれるならそれはそれでやぶさかじゃ無いけど。」
ほぉ~らね。やっぱそうじゃん。いやしかし女に奢って貰うっつーセリフが普通に出てくるところがクズいですなぁ。人間一度楽を覚えるとなかなか…。
「い、いや、流石にこれからヒモ一本でやってこうなんて思ってないぜ?ちゃんとやるべきことは分かってるって。でもお金が必要なのは間違いないだろ?出来るだけ節約するに越したことは無いしよ。俺に今出来ることっつったらよ、女から金を引っ張って…。」
「それにしたって…あんな片言じゃ引っかかる奴も引っかからないと思うが…?」
「う~ん…前は言葉なんか通じなくても何とかなったんだが…。」
「…言葉が通じなくても何とかなってたって…。マジかよ…。…あ~、中途半端に通じてるから逆に怪しい感じになってたぞ。外人の怪しい宗教の勧誘みたいだったし。あと、その香水なんか変な匂いだぞ?」
「あぁ~~…。そりゃだめか。…はぁ。…でもこの香水は結構いい匂いだろ?」
「…とにかく言葉は多少通じるようになってきてるんだからさ。焦る必要もないって。それにヒモをするにも言葉は通じたほうが良いだろ?」
「…そうだな。…確かに。とにかく言葉だ。…なぁ、迷宮でもうちょっと深い階層に行ってみるか?もうちょっと攻撃の通じる敵もいるかもしれんし。…あとこの香水はいい匂いだよな?」
「…おいおい落ち着けって。幸い俺達は稼げてるし今の状態でうまくいってる。時間も…多少の余裕はあるだろ。だったらゆっくり稼いだ方が良いだろ。俺達が十分強くなってからでも遅くないさ。」
「…そうだな。シャムの言うとおりだ。…これって変な匂いだったのか?」
取り敢えず今日の儲けは、金貨28枚。宿代を引いてたとしてもそこそこの儲けだ。…いや、そこそこ宿代は高かったか。でも、ぎりぎりってほどじゃない。
金貨200枚もそんなに大変ってわけじゃない。
毎日潜れば1,2ヶ月でクリア出来る金額だ。
「そいつの噂は広がってるからよ。多分もう女は引っかからないと思うぜぇ。」
「あんたは…ダンケルだっけか?」
新人冒険者のダンケル。
スキンヘッドで使ってる防具武器がかなり使い込まれてるし、ぶっちゃけそこそこのランクの冒険者だと思ってたけど…、速攻で親父さんにバラされてたな。
よく見れば別にそんなにガタイが良いわけじゃなかったりするし。
…つまりわざわざ中古の武器や防具を身につけてるってことか。…こういう方法でも自分を守れるのか。
「おう!…こいつの最後の女がこいつのヒモっぷりを話しまくったようでな!金目当てだなんだとさぁ!ドゥワッハッハッハ!」
「マジかよ…あの糞あまぁ…。」
おお、言ってることは分かるくらいになってるのか。やっぱ成長早いなぁ。勇者ェ…。
「それじゃあ暫くは難しいな。…それにしても結構ここで飯食ってるやつ多くなったよな。ナガルスの話で金払いが渋いんじゃなかったのか?」
「まぁ、しょせんは先を考えない冒険者共だからな。取り敢えず戦争が始まるわけではなさそうだってことでいつもどおりに戻ったんだろ。飽きっぽいからなぁ。」
「ふぅん…、まぁ飲めよ。…結局各地で発見されてんのか?ナガルスは?」
「お、悪いな。そうだなぁ…、少し前はハルダニヤ中で目撃されてたらしいんだが、今は大体南の方に集中してる。俺達のガハルフォーネは中央北西よりだからな。ここで一旦冒険者達の緊張は解けたんだろ。」
「南寄りねぇ…。全く理由が掴めないな。」
「国の方もそうらしくてな。発見された所を色々調査してるらしいんだが、本当に頭上を旋回してそのまま消えてくらしいからな。調査も糞も無いんだと。」
「確かに…何か攻撃してくれば理由も分かるんだろうがなぁ…。」
「偵察するにしたって国中偵察っつーのもなぁ…。」
「まぁ、解らねぇこと考えたってしょうがないか。」
「そうだな。そのとおりだ。むしろその話題でみんな楽しんでるしな。」
ナガルスか…。
…島から持ってきた双子魔石も最近ずっと上を向いてる。
昔は島が世界中を回ってたから、下を向いたり横を向いたりしてたこともあったんだが…。
ヴァルに助けてもらった辺りからずっと上向きになった。
壊れちまったのか。
これがあればモニの所に帰ること位は出来ると思ってたのに…。
…大分古そうな杖だったからな。
魔石も時間が経てば劣化するということか。
参ったな…。もう…二度と会えないということか。
一年くらいヴィドフニルの大樹のてっぺんで過ごせばなんとかなるか?
…エイサップの目をくぐり抜けて王都に侵入、一年間潜伏か…。
…無理だな。
流石に気づかれるか。
だって奴は完全に俺の跡を追ってきてる。
どんな所にいようとも、いつか必ず追いつかれる。
心理戦、みたいなものでどうにかしようってのは…難しいんだろうな。多分。
奴は恐らく…俺が出してしまってるなにかの痕跡を追ってきてる…ような気がする。
…せめて別大陸まで行ければ撒けるとは思うが…じゃあまたハルダニヤ大陸に戻ってこれますかって話。…無理だよなぁ…。
「そういえばエイサップの方もすげぇ事になってるらしいな。」
そういやこの街では結構エイサップと逃亡奴隷…つまり俺との追いかけっこの話が人気なんだよな。
裏ギルドで教えてもらったような情報はすぐに街で噂になる。
殆どタイムラグはない。
これじゃ裏ギルドで教えてもらう意味あるか…とも思ったけど情報の信頼性って意味では段違いだから裏ギルドでも教えてもらったほうが良い。
後で、噂話と裏ギルドの情報の整合を取れば良いんだ。
「おお!おお!!知ってるか!いや、なかなかすげぇ話じゃねぇか?」
「あぁ…、エイサップを一度振り切ったって話だろ?んで王女様が金を援助したっつー…なかなか出来ることじゃねぇよなぁ。」
「あれ?あんたそれより先の話知らないのか?」
「?先の話ってのは?」
「王女様の後ろ盾を得たエイサップは唸るほどの金を使って大陸級、国家級の奴らを集めたのさ。臨時の大陸級のパーティーだ。」
「…へぇ…そいつは知らなかった。」
…裏ギルドより噂が早い…って事ないよな…?
「エイサップの能力は特殊だからな。色んな奴に協力してたからその人脈だろうなぁ。奴じゃなかったら集まらなかったろうよ。」
「なんでそれほどの奴らを集めたんだ?エイサップ一人でなんとかなるんじゃないのか?あいつやべぇだろ?」
「確かに何かを探す能力に関しちゃずば抜けてるよ。だが、戦闘力って意味じゃなぁ。なんてったって逃亡奴隷は鬼の住処を抜けて蟻の巣溜まりに向かったらしいんだよ!」
「蟻の巣溜まり?なんだそれ?」
「蟻の巣を知らないのか?四六時中蟻が襲ってくる地獄みてぇな場所だよ。しかもだ。エイサップがその巣溜まりに向かう前にパーティーを組んだってことは、逃亡奴隷がこの巣溜まりを抜けたと読んでるんだ!」
「…あぁ、あそこか…。…なにそんなに興奮してんだ?」
「おいおいこれが興奮しないのか?ハルダニヤで最近なかった熱い話しじゃねぇか。奴隷なんて最底辺の奴が反旗を翻し、あのエイサップから逃げた。それだけじゃなく、どうやらその奴隷の実力は本物だ。たった一人の奴隷が大陸級と国家級、ついでに王族すら動かしてる。しかも今の状況、勝ちか負けかで言えば勝ってる!こんな胸のすく話があるか!ざまぁみろってんだ!なぁ親っさん!!」
「ん?まぁなぁ。俺ら底辺者からすりゃまぁ気持ちいい話だな。お偉いさんの前じゃ言えないがな。」
「ほらなぁ!?これが平民の声だよ!」
「だが流石に俺はおっ死んじまってる気がするなぁ。いくらなんでも巣溜まりは無理だろぉ。」
「何言ってんだよ親っさん!ここまで逃げたやつが蟻なんかに殺られるはずねぇって?そう思うよなぁ!?」
「あ、あぁ…そう思うよ…。…あー、あれだ、エイサップの方はどんなすげぇ奴らが集まってんだ?」
「いやもうそりゃすげぇのよ。大陸級が3人。魔剣のアベル・グウェンツ、武器商人ゴムリ、毒花エレンザレム。これだけでもやべぇけど、ついでに国家級が5人。第8聖人ロパロム・ハルダニヤ、幻惑のコルオル、要塞ミキ・ナーン、美食家フレーズ・ナーン、100人袋カモ・ドルダック。最後に荘園級の幸運のナターシャ・ドゥーカス。」
「誰一人知らねぇ…。」
ん?
ナターシャ?
ナターシャって確かラミシュバッツにいてエイサップと一緒に俺を追ってた女じゃなかったか?
ずっとエイサップと一緒にいるのか?ラミシュバッツの後も?
…まさかぁ…。
「なんかその中だと、荘園級のナターシャだけ浮いてるな。」
「そうだろ?実際浮いてるんだがよ。」
「なのになんでそこに入ってるんだ?」
「あぁ…それはな、エイサップってのは大分逝っちまってる奴らしくて普通の生活は難しいんだと。当然人を集めて音頭をとるなんてもってのほからしいんだが…、この件で一番最初にナターシャがそこら辺を世話させられてたらしいんだよ。」
あぁ…確かにラミシュバッツ正門前でそんな事を頼まれてたな。
「…もっともそのままずっとエイサップ関係の雑用をさせられてるらしくてなぁ。俺らみたいな木っ端冒険者からすりゃ天上人の冒険者とパーティー組めるなんざ羨ましいわけだが、実力が違うのに組まなきゃいけねぇってのがキツイってのもわかるわけよ。それにラミシュバッツでは結構面倒見の良い女らしくてな?大陸級にケツ振って得しようって女でも無いらしんだと。んで、まぁ「不運の」なんて二つ名付けるのも俺ら雑魚冒険者の沽券に関わるってことで「幸運の」ナターシャっつってるわけ。」
「はぁ…色々面倒くさそうだが…どうしても嫌ならそのパーティー抜けっちまえばいいんでねぇの?」
「俺らもそう思うんだがなぁ…、そうはなってない。だから、本当は強えパーティーに入って良い思いしようとしてるんじゃねぇかって邪推もあって「幸運の」なんて過剰な皮肉交じりの二つ名が広まっちまったんだ。」
「そりゃ…ついてないなぁ…。」
「なぁ?俺も大陸級の奴らに会えるのは嬉しいが、実際一緒にパーティー組もうぜっていうのはちょっとなぁ…。」
「他の奴らはどんな奴らなんだ?」
「そういえばあんた誰も知らないっつってたな?まぁ、みんなが知ってる程度なら話せるが…。…喉、乾いたなぁ…。それにお腹も…。」
「へいへい。せっかくだからこっちに来て飲めよ。一緒に飯でも喰いながら話そうぜ。」
「お!?良いのかよ?言ってみるもんだな!何でも聞いてくれよ!」
「…んじゃまぁ、最初の奴から教えてってくれよ。」
「お、じゃあ魔剣のアベル・グウェンツから話すか。こいつはやべぇ。アダウロラ会派で最近一番跳ねてる野郎だって話だ。強さもだが冒険者になってから大陸級までに殆ど時間がかかってねぇ。まぁ最初から強いやつが冒険者になることはよくあるから一気に級が上がることがないわけじゃねぇが…それが一年で大陸級ってのはなぁ…。まぁ運もあったんだろうが。」
「運なんて関係あるのか?実力があるかないかだろ?実力があったら強い魔物を倒せばいいじゃないか。」
「まぁそうとも言えるがそうでもねぇ。国家級、大陸級になれば実績が必要になる。国や大陸に迫る危機を未然に防げなきゃならん。つまりそういう危険・災害が起こらなきゃならないわけだが…。」
「国や大陸に迫るって…ヤバそうだな。」
「まぁ色々抜け道もあるわけだ。シャムが言ったみてぇに古代龍や強い魔物を見つけてぶっ殺しまくって大陸級になるやつだっている。未然に魔物からの被害を防いだってことでな。ま、強いことにゃ変わりねぇから特に問題になってねぇが。こいつは確か…魔物の大発生を一人で食い止めたんだっけかな。まぁマジモンの実績ってわけよ。こいつは運も持ってるってことよ。」
「ふぅん。んで、魔剣ってのはどんな剣なんだ?」
「あぁ、雷を剣に纏わせて戦うらしくてなぁ。戦い方がこれまたかっこいいらしくてよぉ。顔もいいしで女遊びの激しい野郎だってよ。」
「そいつは気に食わねぇ野郎だな…。まぁ、飲めよ。」
「お!悪いなぁ!グビッグビッグビッ!ッハ~~~~~~~美味い!」
良い飲みっぷりだ…。…口よ軽くなれ。
「んで?何だっけか…武器商人ゴムリだっけか?どんな奴なんだ。ドワーフか?」
「おお!そうそう!こいつはな!商人から冒険者になった異色よ!自分が作った武器を売るために宣伝として冒険者になったんだ。なかなか時間を掛けた苦労人だがまさか大陸級になっちまうとはなぁ。」
「それ…って武器職人じゃね?いやまぁいいや。自分の作った武器で大陸級にまでなったんならそりゃもう売れまくるんじゃねぇか?…ていうか何でまだ冒険者やってんの。」
「…いやそれがなぁこの武器ってのが作るもん作るもん変な武器でなぁ。本人以外殆ど使えないっていうね。だから誰も買わないのよ。」
「えぇ…。意味ないじゃん…。」
「しかもな?偶に自分が使ってる武器を扱えるやつがいると嬉しくて渡しちまうんだとさ。タダで。そんなんやってるから全然儲けらんないわけよ。大陸級の仕事だけで大分稼いでるとは思うけどよ。」
「意味わかんねぇ…。変な武器ってどんなの?」
「うーん…この武器ってのも人に渡す度に変わっちまうんだよ。それも意味わかんねぇ所でなぁ…。それが天才足る所以かもしれんが。でけぇハンマー持ってたり、連射式の弩持ってたりってのは分かりやすいなぁ。後は…なんというか言葉にできねぇ物が多いらしい。雲みたいなのを武器にしてたり、透明な板を操ってたり、体がでかくなってたこともあったり…わからん。」
「変人だが…なんか、何ていうか…良いやつそうだな。」
「お!わかるか!実は俺も憧れててよぉ。大陸級のやつは大体ぶっ飛んでたり性格終わってる奴が多いんだが、武器商人ゴムリは性格良くてよ。実は会って話したこともあるんだぜ。武器を作るのが好きなおっさんだった。自分でも特殊な武器を作ってる自覚はあるみたいでなぁ。誰にも作れない武器を作りたいんだと。いい人だったなぁ。商才さえゴミじゃなけりゃあの人も自分の夢を叶えられたんだろうがなぁ。」
「…そうか。いい人か…。いい人とは敵になりたくねぇな…。」
「ッブハハッ!そもそも大陸級と張ろうってのが間違いだって!」
「それもそうか。ほら、こっちの酒も美味いぞ。飲んでくれ。」
「おお、おお。悪いなぁ、こんなに貰っちまって。あぁ、毒花エレンザレムはなぁ…。」
「…?」
「絶…………世の美女だぞ。なんてったってエルフだからな!」
「おお!…あ、いや、ふ~ん。あ、そうなの?」
おいダンケルうるせぇニヤニヤすんじゃねぇよ。
「ビジョ?」
喰也さぁん!
「あ~~ヒモを目指すのはやめたほうが良いぜ。多分おめぇなら…ヒモになれるからな。」
「オオ!!」
「え?なにどういうこと?」
「いや~~この女がダメ男製造機でな?ダメ男っていうか廃人っていうか。理由はわからんが結構簡単に男になびくし簡単にコマせるとは思うぜ?しかも一度そうなったらまぁ尽くしまくってくれるらしい。」
「…そりゃ…男に取っちゃある意味理想の女じゃん?駄目女だとは思うけど、ヒモを目指すのはある意味間違ってなくないか?」
「いや~、それがその尽くしっぷりってのが半端ないのよぉ!戦わせねぇ、外での用事は全部変わる、食事も口まで運んで、排泄はエレンザレム特製原生魔法でケツから直接吸い取ってくれる!」
「…オ…オ?。」
「…ん?」
「夜の方も凄いらしくてなぁ。男だから不意になんつうのかな…興奮することはあるわけじゃん?そうなったら全身全霊で尽くしてくれるわけよぉ。致したくなったらすぐに尽くすってな。…何処からともなくそれを感じ取ってそりゃもう直ぐに来てくれるんだそうだ。」
「…。」
「…。」
「そして男はベッドから出なくても全てこなせるようになっちまう。そうすると、足も手も筋肉がなくなってってなぁ…。」
「…。」
「…。」
「男の方もやべぇと思い始めるんだろうな。ベッドから出て何かしらしようとするんだが…、それを読み取ったかのように現れ優しくベッドに押し倒し、尽くしまくって…吸い付くしまくってくれるわけな。」
「…。」
「…。」
「気付いたときにはもうベッドから一歩も出られなくなってる。泣いて喚いて許してくれと叫んでも優しく優しく尽くしてくれるそうだぜぇ…。ヒック。気付けばベッドに根付いた植物のように生ってるぅ。エレンザレムは植物の魔法を使ってるから…関係あるのかな?」
「…。」
「…。」
「恐ろしいのはそんな男がハルダニヤ中にいるんだと。ィック。何故大陸中の男達の状態が分かるのか…ハルダニヤの不思議の一つと言われてるぜぇ…。あ、それ飲んで良い?…どうもどうも。ゴクッゴクッ…ップハーーーーー!」
「…。」
「…。」
「ハルダニヤのどうしよーもねーボンクラ男はエレンザレムに会いに行けって言われるぜ。生きる喜びを知れるからってさ。…まぁ、知った後日常生活に戻れるかは分からねぇがな!アッハッハッハ!毒花!毒の花!エレンザレム!」
「…やべぇ。」
「…コワイ。」
「…ま、か、関係ないしな。俺は。うん。…後は国家級か…。大陸級と比べてやはり弱いのか?」
「んぇぇ?まぁ…そういう奴もいるし、大陸級レベルの奴もいるなぁ。新しく台頭してきたのはナーン師弟だな。数年ほど前から美食家フレーズ・ナーンに弟子が出来てな?ミキ・ナーンって奴なんだが、どうやらこの弟子と馬があったようでなぁ。荘園級だったのが、組んでから1,2年で両方国家級だ。こいつらは大陸級の実力はあるのかも知んねぇぇな!」
「へぇ~~二人で組んで強くなるってなんか良いな。その弟子もやっぱ最初から結構強かったのか?」
「ん~~あまり詳しくは知らねぇが、要塞の話は美食家と組む前特に聞いてねぇからなぁ…。少なくとも有名じゃなかったな。あぁ、その子はちょっと変わった風貌らしいぜ。ここらじゃあまり見ねぇんだと。」
「…へぇ。」
「…。」
ミキ。ミキ・ナーン。
日本語っぽいな…。
…俺らと同じ転移者か?
でも国家級か。
もし日本人なら…そこまでになるのに苦労したんだろうなぁ。
俺も強くならざるを得なかったからわかる。相当苦労したんだろう。
いつか会ってみたい。
…会った途端殺されたりしないよな。
「幻惑のコルオルは良く分からねぇ。とにかく謎な奴だ。戦う方法も男か女かも。全身を黒い外套で覆ってて中を見たやつはいねぇ。いつの間にか近づいて気付いたら仲間が殺されてる。あまり人数を組んで戦うタイプの人間じゃねぇ…というかどう考えても暗殺タイプの冒険者だと思うんだがなぁ。まぁ、遊撃ってとこか?」
「そういう相手が一番怖いな。」
「そうだな。正体を一切表さねぇってのはやっぱ誰も信じてねぇってことだからな。そういう意味でもパーティー組んでやるタイプじゃないんだが…。」
「エイサップがよほどすげぇってことなのかもな。」
「あぁ~~。確かにそれはあるかもな。奴も基本良いやつだって聞くからな。仕事以外が壊滅的だってだけの話で。」
「あとは…100人袋カモ・ドルダックと第8…聖人ロパロムだっけ?」
「そうそう。カモ・ドルダックは二つ名の通り100人分と言われる魔力量を持った男だ。でけぇ魔力ででけぇ魔法を乱発してくる。大陸級に上がれないのは細かい制御が出来ないかららしいぜ。デカイ魔法しか使えないらしい。俺ら底辺からすりゃ羨ましい悩みだね。」
「聖人ロパロムは…、名前からしてリヴェータ教か?」
「そうだ。近接関係は壊滅的でなぁ。ただ、このロパロムはデカイ従魔がいる。誰も見たことのない狼みたいな生き物だがそいつが強い。この生き物が物理的な攻撃からロパロムを守ってる。回復魔法もかなり使えて呪いの方も精通してる。正直この女がメンバーに入るか入らないかで依頼の成功率がぜんぜん違う。荘園級だけで国家級の依頼をこなせたりする。エイサップと同じくらい引く手数多の女だよ。能力だけはな。」
「…また頭おかしいのか。」
「…頭おかしいとは、…俺の口からは言えない。その女は四六時中リヴェータ教への勧誘をするってだけらしいからな。朝起きてから夜寝るまでな。」
「…うぅん…?」
「しかもいやらしいところは、複数人で組んでも勧誘が分散しないんだよ。その中の一人だけを対象にして勧誘するんだ。そりゃもう耳元でずっと。」
「…。」
「…。」
「んで、中には精神的にまいっちまう奴が出てくるんだけどな?そうすると第8聖人様は無償で回復魔法を掛けてくださるんだ。心機一転、心を新たに説法を頂けるわけだ。」
「…もうそれ拷問じゃん。仲間にする危険が高すぎるじゃん。」
「…なぁ?俺もそう思うんだけどなぁ…エイサップは何でこいつを入れたんだろうなぁ…。結構致命的だと思うんだがなぁ…。…あ、気持ち悪い。吐いてくる。」
「ああ。…ちゃんと吐けよ。」
やばいな。
強いやつの半分位が逝っちゃってるな。
こいつらが俺のこと追いかけて来てんの?
嫌なんだけど。
俺が逃亡奴隷だって知ってる喰也も引いてるもん。ちょっと微妙に離れようとすんな。逃げんな。
「いや、ほんと、凄いっすねシャムさん。あ、俺も足引っ張るかも知れないんで。僕のことは気にせず、あの、先に行って貰っていいんで。」
おっとぉ?
「何々俺らマブじゃ~ん。ねぇ~?そんな哀しいこと言わないでよぉ~?」
「いえいえ、そんな。俺みたいなゴミクズがハルさんにご迷惑お掛けする訳には…。そうだ!ここは一旦二手に別れましょう!」
おっとっとぉ?
「何言ってんのよぉ。俺達同じ日本人じゃん?お互い助け合うのは普通じゃん?…俺はダチが逃亡勇者でも気にしないよぉ?」
「ッグ…。…そうだねぇ…俺もダチが逃亡奴隷でも気にしないさ。」
「…。」
「…。」
「「っへっへっへっへ。」」
「…何気味悪いことしてんだよ…。それ笑ってんの?」
「ん?あぁいやなんでもねぇさ、あ、そういえばこの街にいるニギって奴には声かかんなかったのか?確か…かなり強いんだろ?」
「ああ…そりゃ…分かるだろ?確かに大陸級だし近接最強だ。人数組んで戦うなら前衛役としては打って付けなんだがな。…まぁ女を所構わず犯そうとするような奴と誰が組みたいって話よ。」
「マジかよ…もうやだこの街。」
「…まぁ…冒険者なんざ元々罪人の集まりみてぇなもんだが…。とはいえ、冒険者になったことでやっと人並みになれた奴が殆どだ。だから大概は自分のクズっぷりはなかったことにしたいし、現在クズでも隠そうとするもんさ。…ニギにはそれが一切ない。普通はどっかの誰かにぶち殺されるんだが…強ぇからなぁ…。あいつの勘はもう予知能力の域だ。暗殺も出来ねぇ程さ。」
「なるべく関わらないほうがいいな…。」
「そうだと思うぜ。どうやらこの話に噛めなくて苛ついてるって話も聞くからよ。」
「…なんちゅう迷惑な。選ばれると思ってたのか。」
「思ってたかどうかはわからんが、この街で話題になってるからな。名誉欲のある奴は食いつきたかったんだろ。」
「…まぁ、近づかないようにするか。」
「それが良い。普通に生きてりゃ絡むこともないしな。」
…迷宮で会うかも知れないんだよなぁ。
「…まだ魔法使えて一週間も経ってねぇだろ?それに数打ち込めば倒せるじゃねぇか。」
「シャムに押さえてもらっててだろ?もっと…前はもっと出来たはずなんだよ。呪文がわからないからか?あの時は何も考えなくても言えてたのによ…。」
「う~ん…そもそも使えてた魔法が一度使えなくなったってのがまずおかしい感じだしなぁ。最初がむしろおかしかったんじゃねぇか?」
「…そうなのか?」
「いや、わかんねぇけど…、最初は例えば…勇者的な?不思議な力でブーストしてたけども、逃げたことで勇者としての力がなくなっちまったってことなんじゃないのか?それで本来の普通の俺がここに来た時みたいな状態になってる…ということじゃ?」
「…そうなのか…。」
「つまり一からやり直してる状態ってことだろ?それならむしろ早いと思うぜ。少なくとも俺は火も水もそんなに吹っ飛ばせなかった。」
ナイフ作ってるだけだったし…。
「今までやってきたことは全部無駄か…。」
「…。」
「…まぁ、いい。気分転換でもするか。」
苛ついてるな。
今までは全く魔法も言葉も使えなくなってたから諦めてたんだろうけど…なまじ魔法が使えるようになったから前みたいに使えないことがストレスになってんのか。
最初は魔法が使えるだけでかなり嬉しそうだったのに今はムカついてる。
話を聞けば勇者時代はかなり魔法を使えたそうだしな。
この世界ではやはり魔力をどれだけ操れるかで強さが変わってくる。
商人や職人ですら必ず魔力を使ってる。
商人だったら契約時や物の目利きなんかに魔法を使う。
職人だったら物を作るときにバリバリ使う。人間にとって物語の中にしか出てこない魔法をそこらのおっさんドワーフが普通に使ってるなんてのはよく聞く話だ。
この世界で魔法を扱えないということは、即ち底辺だ。
前は底辺で諦めてたのにまた勇者…程じゃないにしろ少なくとも底辺は脱してしまった。そうなると欲が出てくる。良く言えば向上心?それが良いか悪いかわからないが、喰也はもっと成り上がれると思ってる。正直喰也の成長率を見ればそう期待するのも分かる。
分かるが、勇者だった頃の経験が今の喰也の成長率を見えなくさせてるんだろう。
昔出来ることが今出来ない。
どんなにすごい成長を見せてても、冒険者としてはまだレベルが低い。俺が勇者だった頃はこんなもんじゃないんだ…てな具合になってるかも知れない。
まぁ、キツイよなぁ。
キツイのはよく分かるんだが…。
「オネエサン。キレイ。セカイでイチバン。ワタシヒトメボレ。」
「失せな。ヒモ野郎。」
「オウ…。」
なんというか…。
「キレイなオネエサン。おサケ、イッショノモウ。」
「唾でも飲んでろ。」
「ゴクリ…。」
…ヒモになろうとするのやめてくんない?
あと、ここの女の人怖くない?
お…諦めたか。
そうそう。おとなしく宿で酒飲もうぜ。
取り敢えず今日は火蜥蜴14体狩れたんだ。
気持ちよく食って飲もうじゃないのよ。
「う~ん…うまくいかねぇな。前は飲んでるだけで声とか掛けられたんだが…。お気にの香水だって付けてるんだぜ?…前の女に貰った奴だけど。」
…。
…あれ?もしかして佑樹って結構なクズか?
「いや…別にヒモに戻る必要もないだろ?取り敢えず稼げてるんだしさ…。」
「あ、い、いや、そういうことじゃねぇよ。せっかく飲むんなら女もいたほうが良いだろ?それに、ほら、情報だって手に入るだろうし。ここは慣れてる俺がいっちょさ。」
「そういう…いや別にいいって。情報は裏ギルドで手に入れてるしさ。」
「あ、そう?…まぁ、うまくいけば奢ってもらえるだろうしヒモにしてくれるならそれはそれでやぶさかじゃ無いけど。」
ほぉ~らね。やっぱそうじゃん。いやしかし女に奢って貰うっつーセリフが普通に出てくるところがクズいですなぁ。人間一度楽を覚えるとなかなか…。
「い、いや、流石にこれからヒモ一本でやってこうなんて思ってないぜ?ちゃんとやるべきことは分かってるって。でもお金が必要なのは間違いないだろ?出来るだけ節約するに越したことは無いしよ。俺に今出来ることっつったらよ、女から金を引っ張って…。」
「それにしたって…あんな片言じゃ引っかかる奴も引っかからないと思うが…?」
「う~ん…前は言葉なんか通じなくても何とかなったんだが…。」
「…言葉が通じなくても何とかなってたって…。マジかよ…。…あ~、中途半端に通じてるから逆に怪しい感じになってたぞ。外人の怪しい宗教の勧誘みたいだったし。あと、その香水なんか変な匂いだぞ?」
「あぁ~~…。そりゃだめか。…はぁ。…でもこの香水は結構いい匂いだろ?」
「…とにかく言葉は多少通じるようになってきてるんだからさ。焦る必要もないって。それにヒモをするにも言葉は通じたほうが良いだろ?」
「…そうだな。…確かに。とにかく言葉だ。…なぁ、迷宮でもうちょっと深い階層に行ってみるか?もうちょっと攻撃の通じる敵もいるかもしれんし。…あとこの香水はいい匂いだよな?」
「…おいおい落ち着けって。幸い俺達は稼げてるし今の状態でうまくいってる。時間も…多少の余裕はあるだろ。だったらゆっくり稼いだ方が良いだろ。俺達が十分強くなってからでも遅くないさ。」
「…そうだな。シャムの言うとおりだ。…これって変な匂いだったのか?」
取り敢えず今日の儲けは、金貨28枚。宿代を引いてたとしてもそこそこの儲けだ。…いや、そこそこ宿代は高かったか。でも、ぎりぎりってほどじゃない。
金貨200枚もそんなに大変ってわけじゃない。
毎日潜れば1,2ヶ月でクリア出来る金額だ。
「そいつの噂は広がってるからよ。多分もう女は引っかからないと思うぜぇ。」
「あんたは…ダンケルだっけか?」
新人冒険者のダンケル。
スキンヘッドで使ってる防具武器がかなり使い込まれてるし、ぶっちゃけそこそこのランクの冒険者だと思ってたけど…、速攻で親父さんにバラされてたな。
よく見れば別にそんなにガタイが良いわけじゃなかったりするし。
…つまりわざわざ中古の武器や防具を身につけてるってことか。…こういう方法でも自分を守れるのか。
「おう!…こいつの最後の女がこいつのヒモっぷりを話しまくったようでな!金目当てだなんだとさぁ!ドゥワッハッハッハ!」
「マジかよ…あの糞あまぁ…。」
おお、言ってることは分かるくらいになってるのか。やっぱ成長早いなぁ。勇者ェ…。
「それじゃあ暫くは難しいな。…それにしても結構ここで飯食ってるやつ多くなったよな。ナガルスの話で金払いが渋いんじゃなかったのか?」
「まぁ、しょせんは先を考えない冒険者共だからな。取り敢えず戦争が始まるわけではなさそうだってことでいつもどおりに戻ったんだろ。飽きっぽいからなぁ。」
「ふぅん…、まぁ飲めよ。…結局各地で発見されてんのか?ナガルスは?」
「お、悪いな。そうだなぁ…、少し前はハルダニヤ中で目撃されてたらしいんだが、今は大体南の方に集中してる。俺達のガハルフォーネは中央北西よりだからな。ここで一旦冒険者達の緊張は解けたんだろ。」
「南寄りねぇ…。全く理由が掴めないな。」
「国の方もそうらしくてな。発見された所を色々調査してるらしいんだが、本当に頭上を旋回してそのまま消えてくらしいからな。調査も糞も無いんだと。」
「確かに…何か攻撃してくれば理由も分かるんだろうがなぁ…。」
「偵察するにしたって国中偵察っつーのもなぁ…。」
「まぁ、解らねぇこと考えたってしょうがないか。」
「そうだな。そのとおりだ。むしろその話題でみんな楽しんでるしな。」
ナガルスか…。
…島から持ってきた双子魔石も最近ずっと上を向いてる。
昔は島が世界中を回ってたから、下を向いたり横を向いたりしてたこともあったんだが…。
ヴァルに助けてもらった辺りからずっと上向きになった。
壊れちまったのか。
これがあればモニの所に帰ること位は出来ると思ってたのに…。
…大分古そうな杖だったからな。
魔石も時間が経てば劣化するということか。
参ったな…。もう…二度と会えないということか。
一年くらいヴィドフニルの大樹のてっぺんで過ごせばなんとかなるか?
…エイサップの目をくぐり抜けて王都に侵入、一年間潜伏か…。
…無理だな。
流石に気づかれるか。
だって奴は完全に俺の跡を追ってきてる。
どんな所にいようとも、いつか必ず追いつかれる。
心理戦、みたいなものでどうにかしようってのは…難しいんだろうな。多分。
奴は恐らく…俺が出してしまってるなにかの痕跡を追ってきてる…ような気がする。
…せめて別大陸まで行ければ撒けるとは思うが…じゃあまたハルダニヤ大陸に戻ってこれますかって話。…無理だよなぁ…。
「そういえばエイサップの方もすげぇ事になってるらしいな。」
そういやこの街では結構エイサップと逃亡奴隷…つまり俺との追いかけっこの話が人気なんだよな。
裏ギルドで教えてもらったような情報はすぐに街で噂になる。
殆どタイムラグはない。
これじゃ裏ギルドで教えてもらう意味あるか…とも思ったけど情報の信頼性って意味では段違いだから裏ギルドでも教えてもらったほうが良い。
後で、噂話と裏ギルドの情報の整合を取れば良いんだ。
「おお!おお!!知ってるか!いや、なかなかすげぇ話じゃねぇか?」
「あぁ…、エイサップを一度振り切ったって話だろ?んで王女様が金を援助したっつー…なかなか出来ることじゃねぇよなぁ。」
「あれ?あんたそれより先の話知らないのか?」
「?先の話ってのは?」
「王女様の後ろ盾を得たエイサップは唸るほどの金を使って大陸級、国家級の奴らを集めたのさ。臨時の大陸級のパーティーだ。」
「…へぇ…そいつは知らなかった。」
…裏ギルドより噂が早い…って事ないよな…?
「エイサップの能力は特殊だからな。色んな奴に協力してたからその人脈だろうなぁ。奴じゃなかったら集まらなかったろうよ。」
「なんでそれほどの奴らを集めたんだ?エイサップ一人でなんとかなるんじゃないのか?あいつやべぇだろ?」
「確かに何かを探す能力に関しちゃずば抜けてるよ。だが、戦闘力って意味じゃなぁ。なんてったって逃亡奴隷は鬼の住処を抜けて蟻の巣溜まりに向かったらしいんだよ!」
「蟻の巣溜まり?なんだそれ?」
「蟻の巣を知らないのか?四六時中蟻が襲ってくる地獄みてぇな場所だよ。しかもだ。エイサップがその巣溜まりに向かう前にパーティーを組んだってことは、逃亡奴隷がこの巣溜まりを抜けたと読んでるんだ!」
「…あぁ、あそこか…。…なにそんなに興奮してんだ?」
「おいおいこれが興奮しないのか?ハルダニヤで最近なかった熱い話しじゃねぇか。奴隷なんて最底辺の奴が反旗を翻し、あのエイサップから逃げた。それだけじゃなく、どうやらその奴隷の実力は本物だ。たった一人の奴隷が大陸級と国家級、ついでに王族すら動かしてる。しかも今の状況、勝ちか負けかで言えば勝ってる!こんな胸のすく話があるか!ざまぁみろってんだ!なぁ親っさん!!」
「ん?まぁなぁ。俺ら底辺者からすりゃまぁ気持ちいい話だな。お偉いさんの前じゃ言えないがな。」
「ほらなぁ!?これが平民の声だよ!」
「だが流石に俺はおっ死んじまってる気がするなぁ。いくらなんでも巣溜まりは無理だろぉ。」
「何言ってんだよ親っさん!ここまで逃げたやつが蟻なんかに殺られるはずねぇって?そう思うよなぁ!?」
「あ、あぁ…そう思うよ…。…あー、あれだ、エイサップの方はどんなすげぇ奴らが集まってんだ?」
「いやもうそりゃすげぇのよ。大陸級が3人。魔剣のアベル・グウェンツ、武器商人ゴムリ、毒花エレンザレム。これだけでもやべぇけど、ついでに国家級が5人。第8聖人ロパロム・ハルダニヤ、幻惑のコルオル、要塞ミキ・ナーン、美食家フレーズ・ナーン、100人袋カモ・ドルダック。最後に荘園級の幸運のナターシャ・ドゥーカス。」
「誰一人知らねぇ…。」
ん?
ナターシャ?
ナターシャって確かラミシュバッツにいてエイサップと一緒に俺を追ってた女じゃなかったか?
ずっとエイサップと一緒にいるのか?ラミシュバッツの後も?
…まさかぁ…。
「なんかその中だと、荘園級のナターシャだけ浮いてるな。」
「そうだろ?実際浮いてるんだがよ。」
「なのになんでそこに入ってるんだ?」
「あぁ…それはな、エイサップってのは大分逝っちまってる奴らしくて普通の生活は難しいんだと。当然人を集めて音頭をとるなんてもってのほからしいんだが…、この件で一番最初にナターシャがそこら辺を世話させられてたらしいんだよ。」
あぁ…確かにラミシュバッツ正門前でそんな事を頼まれてたな。
「…もっともそのままずっとエイサップ関係の雑用をさせられてるらしくてなぁ。俺らみたいな木っ端冒険者からすりゃ天上人の冒険者とパーティー組めるなんざ羨ましいわけだが、実力が違うのに組まなきゃいけねぇってのがキツイってのもわかるわけよ。それにラミシュバッツでは結構面倒見の良い女らしくてな?大陸級にケツ振って得しようって女でも無いらしんだと。んで、まぁ「不運の」なんて二つ名付けるのも俺ら雑魚冒険者の沽券に関わるってことで「幸運の」ナターシャっつってるわけ。」
「はぁ…色々面倒くさそうだが…どうしても嫌ならそのパーティー抜けっちまえばいいんでねぇの?」
「俺らもそう思うんだがなぁ…、そうはなってない。だから、本当は強えパーティーに入って良い思いしようとしてるんじゃねぇかって邪推もあって「幸運の」なんて過剰な皮肉交じりの二つ名が広まっちまったんだ。」
「そりゃ…ついてないなぁ…。」
「なぁ?俺も大陸級の奴らに会えるのは嬉しいが、実際一緒にパーティー組もうぜっていうのはちょっとなぁ…。」
「他の奴らはどんな奴らなんだ?」
「そういえばあんた誰も知らないっつってたな?まぁ、みんなが知ってる程度なら話せるが…。…喉、乾いたなぁ…。それにお腹も…。」
「へいへい。せっかくだからこっちに来て飲めよ。一緒に飯でも喰いながら話そうぜ。」
「お!?良いのかよ?言ってみるもんだな!何でも聞いてくれよ!」
「…んじゃまぁ、最初の奴から教えてってくれよ。」
「お、じゃあ魔剣のアベル・グウェンツから話すか。こいつはやべぇ。アダウロラ会派で最近一番跳ねてる野郎だって話だ。強さもだが冒険者になってから大陸級までに殆ど時間がかかってねぇ。まぁ最初から強いやつが冒険者になることはよくあるから一気に級が上がることがないわけじゃねぇが…それが一年で大陸級ってのはなぁ…。まぁ運もあったんだろうが。」
「運なんて関係あるのか?実力があるかないかだろ?実力があったら強い魔物を倒せばいいじゃないか。」
「まぁそうとも言えるがそうでもねぇ。国家級、大陸級になれば実績が必要になる。国や大陸に迫る危機を未然に防げなきゃならん。つまりそういう危険・災害が起こらなきゃならないわけだが…。」
「国や大陸に迫るって…ヤバそうだな。」
「まぁ色々抜け道もあるわけだ。シャムが言ったみてぇに古代龍や強い魔物を見つけてぶっ殺しまくって大陸級になるやつだっている。未然に魔物からの被害を防いだってことでな。ま、強いことにゃ変わりねぇから特に問題になってねぇが。こいつは確か…魔物の大発生を一人で食い止めたんだっけかな。まぁマジモンの実績ってわけよ。こいつは運も持ってるってことよ。」
「ふぅん。んで、魔剣ってのはどんな剣なんだ?」
「あぁ、雷を剣に纏わせて戦うらしくてなぁ。戦い方がこれまたかっこいいらしくてよぉ。顔もいいしで女遊びの激しい野郎だってよ。」
「そいつは気に食わねぇ野郎だな…。まぁ、飲めよ。」
「お!悪いなぁ!グビッグビッグビッ!ッハ~~~~~~~美味い!」
良い飲みっぷりだ…。…口よ軽くなれ。
「んで?何だっけか…武器商人ゴムリだっけか?どんな奴なんだ。ドワーフか?」
「おお!そうそう!こいつはな!商人から冒険者になった異色よ!自分が作った武器を売るために宣伝として冒険者になったんだ。なかなか時間を掛けた苦労人だがまさか大陸級になっちまうとはなぁ。」
「それ…って武器職人じゃね?いやまぁいいや。自分の作った武器で大陸級にまでなったんならそりゃもう売れまくるんじゃねぇか?…ていうか何でまだ冒険者やってんの。」
「…いやそれがなぁこの武器ってのが作るもん作るもん変な武器でなぁ。本人以外殆ど使えないっていうね。だから誰も買わないのよ。」
「えぇ…。意味ないじゃん…。」
「しかもな?偶に自分が使ってる武器を扱えるやつがいると嬉しくて渡しちまうんだとさ。タダで。そんなんやってるから全然儲けらんないわけよ。大陸級の仕事だけで大分稼いでるとは思うけどよ。」
「意味わかんねぇ…。変な武器ってどんなの?」
「うーん…この武器ってのも人に渡す度に変わっちまうんだよ。それも意味わかんねぇ所でなぁ…。それが天才足る所以かもしれんが。でけぇハンマー持ってたり、連射式の弩持ってたりってのは分かりやすいなぁ。後は…なんというか言葉にできねぇ物が多いらしい。雲みたいなのを武器にしてたり、透明な板を操ってたり、体がでかくなってたこともあったり…わからん。」
「変人だが…なんか、何ていうか…良いやつそうだな。」
「お!わかるか!実は俺も憧れててよぉ。大陸級のやつは大体ぶっ飛んでたり性格終わってる奴が多いんだが、武器商人ゴムリは性格良くてよ。実は会って話したこともあるんだぜ。武器を作るのが好きなおっさんだった。自分でも特殊な武器を作ってる自覚はあるみたいでなぁ。誰にも作れない武器を作りたいんだと。いい人だったなぁ。商才さえゴミじゃなけりゃあの人も自分の夢を叶えられたんだろうがなぁ。」
「…そうか。いい人か…。いい人とは敵になりたくねぇな…。」
「ッブハハッ!そもそも大陸級と張ろうってのが間違いだって!」
「それもそうか。ほら、こっちの酒も美味いぞ。飲んでくれ。」
「おお、おお。悪いなぁ、こんなに貰っちまって。あぁ、毒花エレンザレムはなぁ…。」
「…?」
「絶…………世の美女だぞ。なんてったってエルフだからな!」
「おお!…あ、いや、ふ~ん。あ、そうなの?」
おいダンケルうるせぇニヤニヤすんじゃねぇよ。
「ビジョ?」
喰也さぁん!
「あ~~ヒモを目指すのはやめたほうが良いぜ。多分おめぇなら…ヒモになれるからな。」
「オオ!!」
「え?なにどういうこと?」
「いや~~この女がダメ男製造機でな?ダメ男っていうか廃人っていうか。理由はわからんが結構簡単に男になびくし簡単にコマせるとは思うぜ?しかも一度そうなったらまぁ尽くしまくってくれるらしい。」
「…そりゃ…男に取っちゃある意味理想の女じゃん?駄目女だとは思うけど、ヒモを目指すのはある意味間違ってなくないか?」
「いや~、それがその尽くしっぷりってのが半端ないのよぉ!戦わせねぇ、外での用事は全部変わる、食事も口まで運んで、排泄はエレンザレム特製原生魔法でケツから直接吸い取ってくれる!」
「…オ…オ?。」
「…ん?」
「夜の方も凄いらしくてなぁ。男だから不意になんつうのかな…興奮することはあるわけじゃん?そうなったら全身全霊で尽くしてくれるわけよぉ。致したくなったらすぐに尽くすってな。…何処からともなくそれを感じ取ってそりゃもう直ぐに来てくれるんだそうだ。」
「…。」
「…。」
「そして男はベッドから出なくても全てこなせるようになっちまう。そうすると、足も手も筋肉がなくなってってなぁ…。」
「…。」
「…。」
「男の方もやべぇと思い始めるんだろうな。ベッドから出て何かしらしようとするんだが…、それを読み取ったかのように現れ優しくベッドに押し倒し、尽くしまくって…吸い付くしまくってくれるわけな。」
「…。」
「…。」
「気付いたときにはもうベッドから一歩も出られなくなってる。泣いて喚いて許してくれと叫んでも優しく優しく尽くしてくれるそうだぜぇ…。ヒック。気付けばベッドに根付いた植物のように生ってるぅ。エレンザレムは植物の魔法を使ってるから…関係あるのかな?」
「…。」
「…。」
「恐ろしいのはそんな男がハルダニヤ中にいるんだと。ィック。何故大陸中の男達の状態が分かるのか…ハルダニヤの不思議の一つと言われてるぜぇ…。あ、それ飲んで良い?…どうもどうも。ゴクッゴクッ…ップハーーーーー!」
「…。」
「…。」
「ハルダニヤのどうしよーもねーボンクラ男はエレンザレムに会いに行けって言われるぜ。生きる喜びを知れるからってさ。…まぁ、知った後日常生活に戻れるかは分からねぇがな!アッハッハッハ!毒花!毒の花!エレンザレム!」
「…やべぇ。」
「…コワイ。」
「…ま、か、関係ないしな。俺は。うん。…後は国家級か…。大陸級と比べてやはり弱いのか?」
「んぇぇ?まぁ…そういう奴もいるし、大陸級レベルの奴もいるなぁ。新しく台頭してきたのはナーン師弟だな。数年ほど前から美食家フレーズ・ナーンに弟子が出来てな?ミキ・ナーンって奴なんだが、どうやらこの弟子と馬があったようでなぁ。荘園級だったのが、組んでから1,2年で両方国家級だ。こいつらは大陸級の実力はあるのかも知んねぇぇな!」
「へぇ~~二人で組んで強くなるってなんか良いな。その弟子もやっぱ最初から結構強かったのか?」
「ん~~あまり詳しくは知らねぇが、要塞の話は美食家と組む前特に聞いてねぇからなぁ…。少なくとも有名じゃなかったな。あぁ、その子はちょっと変わった風貌らしいぜ。ここらじゃあまり見ねぇんだと。」
「…へぇ。」
「…。」
ミキ。ミキ・ナーン。
日本語っぽいな…。
…俺らと同じ転移者か?
でも国家級か。
もし日本人なら…そこまでになるのに苦労したんだろうなぁ。
俺も強くならざるを得なかったからわかる。相当苦労したんだろう。
いつか会ってみたい。
…会った途端殺されたりしないよな。
「幻惑のコルオルは良く分からねぇ。とにかく謎な奴だ。戦う方法も男か女かも。全身を黒い外套で覆ってて中を見たやつはいねぇ。いつの間にか近づいて気付いたら仲間が殺されてる。あまり人数を組んで戦うタイプの人間じゃねぇ…というかどう考えても暗殺タイプの冒険者だと思うんだがなぁ。まぁ、遊撃ってとこか?」
「そういう相手が一番怖いな。」
「そうだな。正体を一切表さねぇってのはやっぱ誰も信じてねぇってことだからな。そういう意味でもパーティー組んでやるタイプじゃないんだが…。」
「エイサップがよほどすげぇってことなのかもな。」
「あぁ~~。確かにそれはあるかもな。奴も基本良いやつだって聞くからな。仕事以外が壊滅的だってだけの話で。」
「あとは…100人袋カモ・ドルダックと第8…聖人ロパロムだっけ?」
「そうそう。カモ・ドルダックは二つ名の通り100人分と言われる魔力量を持った男だ。でけぇ魔力ででけぇ魔法を乱発してくる。大陸級に上がれないのは細かい制御が出来ないかららしいぜ。デカイ魔法しか使えないらしい。俺ら底辺からすりゃ羨ましい悩みだね。」
「聖人ロパロムは…、名前からしてリヴェータ教か?」
「そうだ。近接関係は壊滅的でなぁ。ただ、このロパロムはデカイ従魔がいる。誰も見たことのない狼みたいな生き物だがそいつが強い。この生き物が物理的な攻撃からロパロムを守ってる。回復魔法もかなり使えて呪いの方も精通してる。正直この女がメンバーに入るか入らないかで依頼の成功率がぜんぜん違う。荘園級だけで国家級の依頼をこなせたりする。エイサップと同じくらい引く手数多の女だよ。能力だけはな。」
「…また頭おかしいのか。」
「…頭おかしいとは、…俺の口からは言えない。その女は四六時中リヴェータ教への勧誘をするってだけらしいからな。朝起きてから夜寝るまでな。」
「…うぅん…?」
「しかもいやらしいところは、複数人で組んでも勧誘が分散しないんだよ。その中の一人だけを対象にして勧誘するんだ。そりゃもう耳元でずっと。」
「…。」
「…。」
「んで、中には精神的にまいっちまう奴が出てくるんだけどな?そうすると第8聖人様は無償で回復魔法を掛けてくださるんだ。心機一転、心を新たに説法を頂けるわけだ。」
「…もうそれ拷問じゃん。仲間にする危険が高すぎるじゃん。」
「…なぁ?俺もそう思うんだけどなぁ…エイサップは何でこいつを入れたんだろうなぁ…。結構致命的だと思うんだがなぁ…。…あ、気持ち悪い。吐いてくる。」
「ああ。…ちゃんと吐けよ。」
やばいな。
強いやつの半分位が逝っちゃってるな。
こいつらが俺のこと追いかけて来てんの?
嫌なんだけど。
俺が逃亡奴隷だって知ってる喰也も引いてるもん。ちょっと微妙に離れようとすんな。逃げんな。
「いや、ほんと、凄いっすねシャムさん。あ、俺も足引っ張るかも知れないんで。僕のことは気にせず、あの、先に行って貰っていいんで。」
おっとぉ?
「何々俺らマブじゃ~ん。ねぇ~?そんな哀しいこと言わないでよぉ~?」
「いえいえ、そんな。俺みたいなゴミクズがハルさんにご迷惑お掛けする訳には…。そうだ!ここは一旦二手に別れましょう!」
おっとっとぉ?
「何言ってんのよぉ。俺達同じ日本人じゃん?お互い助け合うのは普通じゃん?…俺はダチが逃亡勇者でも気にしないよぉ?」
「ッグ…。…そうだねぇ…俺もダチが逃亡奴隷でも気にしないさ。」
「…。」
「…。」
「「っへっへっへっへ。」」
「…何気味悪いことしてんだよ…。それ笑ってんの?」
「ん?あぁいやなんでもねぇさ、あ、そういえばこの街にいるニギって奴には声かかんなかったのか?確か…かなり強いんだろ?」
「ああ…そりゃ…分かるだろ?確かに大陸級だし近接最強だ。人数組んで戦うなら前衛役としては打って付けなんだがな。…まぁ女を所構わず犯そうとするような奴と誰が組みたいって話よ。」
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一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
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スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
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さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
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