7 / 11
伝える勇気
しおりを挟む
私が泣いてしまったことで、彼は気を使ってくれたのか、
「少し休もう」とジェスチャーをして、静かなベンチのある場所まで連れて行ってくれた。
木陰にあるベンチに腰を下ろすと、彼は紙とペンを取り出した。
何か書こうとしている――そのとき、私はそっと彼の手に触れた。
初めてじゃないはずなのに、私の手は少し震えていた。
その震えに気づいたのか、彼はゆっくりと私の手を撫でてくれた。
その優しさに、胸がいっぱいになる。
彼は、少し考えてから紙にこう書いた。
『さっき泣いてたのって……もしかして、寂しかったから?』
私は、うなずくことしかできなかった。
言葉はなくても、彼はちゃんと私の気持ちを見抜いてくれていた。
そして彼は、紙をめくり、新たにこう綴った。
『通訳さんが言ってた。自分を責めたり、寂しくなったときに泣くことがあるって。……大丈夫。もう、寂しくなんかないよ』
その言葉に、胸がぎゅっとなった。
こんなふうに誰かに寄り添ってもらえることが、こんなにも温かいなんて、私は知らなかった。
私はやっと気づいた。
――私、彼のことが好きなんだ。
涙がまたこぼれそうになったとき、彼が真剣な顔をして紙に書き始めた。
『実はね、ここ(動物園)来たの、俺、初めてなんだ。あみは? 初めて?』
私は、笑いながらうんとうなずいた。
その様子を見て、彼も微笑んだ。
そして、また紙に文字が浮かぶ。
『出会ったとき……って言いたいところだけど、あみが色々打ち明けてくれた時あるじゃん?
あの時からずっと思ってた。俺、あみのこと……守りたいって。笑わせたいって。ずっとそばにいたいって』
――それって、まさか……。
彼は続けるように紙を差し出した。
『あみがどう思ってるかはわからん。けど、これから何があっても離れたりしたくない。ずっとあみの隣にいたい。……彼氏になりたい』
その言葉に、私は一瞬、息を飲んだ。
「嘘だ」――そう思ってしまった自分がいた。
だけど彼は、もう一枚の紙に書いてくれた。
『嘘だと思ってるでしょ? 俺、本気だよ』
私は俯きながら、涙をこらえた。
でも、彼は静かに言葉を待っていてくれた。
やがて私が顔を上げると、彼がまた紙を差し出した。
『あみの気持ち……知りたい。教えて欲しいな?』
私は、紙とペンを手に取り、時間をかけて、ひとつひとつの言葉を丁寧に綴った。
――私も、同じ気持ち。
でも、親に捨てられたことで、自分に自信が持てないこと。
彼みたいな優しい人には、もっとふさわしい誰かが現れるんじゃないかって、ずっと不安だったこと。
全部、全部、書いた。
彼はそれを真剣に読んでくれた後、ゆっくりと紙に書き始めた。
『確かに、可愛い人とか、明るい子とか、施設にもいるし、これから先、告白されることもあるかもしれない。
でも、それは関係ない。俺は俺。親は親。
俺は、絶対にあみを捨てたりしないから。信じて』
その瞬間、私はもうこらえきれなかった。
涙がこぼれて、彼の言葉に、静かに「よろしくお願いします」とだけ伝えた。
彼は優しく私を抱きしめてくれた。
――まるで、夜に包まれるみたいな、温かさだった。
私はそっと彼に囁いた。
「……大好き」
彼の耳は、真っ赤だった。
きっと、照れていたんだろうな。
「少し休もう」とジェスチャーをして、静かなベンチのある場所まで連れて行ってくれた。
木陰にあるベンチに腰を下ろすと、彼は紙とペンを取り出した。
何か書こうとしている――そのとき、私はそっと彼の手に触れた。
初めてじゃないはずなのに、私の手は少し震えていた。
その震えに気づいたのか、彼はゆっくりと私の手を撫でてくれた。
その優しさに、胸がいっぱいになる。
彼は、少し考えてから紙にこう書いた。
『さっき泣いてたのって……もしかして、寂しかったから?』
私は、うなずくことしかできなかった。
言葉はなくても、彼はちゃんと私の気持ちを見抜いてくれていた。
そして彼は、紙をめくり、新たにこう綴った。
『通訳さんが言ってた。自分を責めたり、寂しくなったときに泣くことがあるって。……大丈夫。もう、寂しくなんかないよ』
その言葉に、胸がぎゅっとなった。
こんなふうに誰かに寄り添ってもらえることが、こんなにも温かいなんて、私は知らなかった。
私はやっと気づいた。
――私、彼のことが好きなんだ。
涙がまたこぼれそうになったとき、彼が真剣な顔をして紙に書き始めた。
『実はね、ここ(動物園)来たの、俺、初めてなんだ。あみは? 初めて?』
私は、笑いながらうんとうなずいた。
その様子を見て、彼も微笑んだ。
そして、また紙に文字が浮かぶ。
『出会ったとき……って言いたいところだけど、あみが色々打ち明けてくれた時あるじゃん?
あの時からずっと思ってた。俺、あみのこと……守りたいって。笑わせたいって。ずっとそばにいたいって』
――それって、まさか……。
彼は続けるように紙を差し出した。
『あみがどう思ってるかはわからん。けど、これから何があっても離れたりしたくない。ずっとあみの隣にいたい。……彼氏になりたい』
その言葉に、私は一瞬、息を飲んだ。
「嘘だ」――そう思ってしまった自分がいた。
だけど彼は、もう一枚の紙に書いてくれた。
『嘘だと思ってるでしょ? 俺、本気だよ』
私は俯きながら、涙をこらえた。
でも、彼は静かに言葉を待っていてくれた。
やがて私が顔を上げると、彼がまた紙を差し出した。
『あみの気持ち……知りたい。教えて欲しいな?』
私は、紙とペンを手に取り、時間をかけて、ひとつひとつの言葉を丁寧に綴った。
――私も、同じ気持ち。
でも、親に捨てられたことで、自分に自信が持てないこと。
彼みたいな優しい人には、もっとふさわしい誰かが現れるんじゃないかって、ずっと不安だったこと。
全部、全部、書いた。
彼はそれを真剣に読んでくれた後、ゆっくりと紙に書き始めた。
『確かに、可愛い人とか、明るい子とか、施設にもいるし、これから先、告白されることもあるかもしれない。
でも、それは関係ない。俺は俺。親は親。
俺は、絶対にあみを捨てたりしないから。信じて』
その瞬間、私はもうこらえきれなかった。
涙がこぼれて、彼の言葉に、静かに「よろしくお願いします」とだけ伝えた。
彼は優しく私を抱きしめてくれた。
――まるで、夜に包まれるみたいな、温かさだった。
私はそっと彼に囁いた。
「……大好き」
彼の耳は、真っ赤だった。
きっと、照れていたんだろうな。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる