怖くていい人

明人

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甘いクレープ

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ゲームセンターを出てすぐにクレープ屋さんがあり、小腹も空いていたので藍くんに提案する。
「藍くんクレープ食べない?」
「あぁ。何がいいんだ?」
「ランキング一位のお祝いに私が奢るよ!何がいい?」
「お前が決めた後決める」
「んーとねぇ定番のチョコバナナは安定で美味しいし、でも抹茶ティラミスクレープすっごい気になるなぁ。シンプルな塩キャラメルも美味しいんだよね~。あ!3種のベリークレープとかもあるよ可愛いし美味しそ~」
「多すぎるだろどれかに絞れ」
うーんとサンプルを眺めて悩むこと5分。
「定番はどこでもいつでも食べれる!塩キャラメルも今日の気分的に除外!となると抹茶ティラミスか3種のベリーなんだけど...」
などとぼやいていると藍くんがクレープ屋さんの受付に行き
「抹茶ティラミスと3種のベリー1つずつお願いします」
「待って!流石に二つは食べきれない!」
「馬鹿野郎。一個は俺のだよ。てめぇに合わせてたら日が暮れる」
藍くんがサラッとお金を出そうとしたため慌てて代わりに払って止めた。
クレープを受け取って少し歩いたところに公園があり、ベンチに座って食べることにした。
「藍くんよかったの?何か他に食べたいのあったんじゃ?」
「別に。なんでも良かっただけだ」
そんなことを言いながら藍くんが3種のベリークレープにかぶりつく。
「お、結構いける」
「ほんと?良かった!」
私も抹茶クレープに挑む。ふわりと香る抹茶の香りとトロリとしたマスカルポーネチーズの風味溢れる甘いティラミスソース。パリッと焼かれたほんのり甘い生地が食感のアクセントまで加える。
「美味しい~」
「ほんと幸せそうに食うなお前は」
今日一日でよく分かったのは、藍くんがよく笑うことだ。何度見ても慣れなくて心臓がうるさい。
気を紛らわせるため黙々と集中してクレープを食べていると藍くんがあっと声を上げた。
「そっちも気になってたんだ。少し寄越せ」
そんな声が聞こえたかと思えば手首を掴まれ藍くんの方に引き寄せられた。かと思えば藍くんの端正な顔が目の前にあり、私の手にあったクレープを一口食べた。
「うん。こっちも美味いな。これも食えよ」
当たり前のように藍くんは自身の食べていたクレープを私の口に突っ込む。
甘酸っぱいいちご、ブルーベリー、ラズベリーがプチプチと弾け甘いクリームをいい具合に中和する。濃厚で甘い生クリームをさっぱり仕上げてくれるのだ。
「あ、美味しい」
「だろ」
二人でクレープを食べ切り、日も暮れて来たのでそろそろ帰るかと駅まで送ってもらった。
改札を抜け、電車に乗り、空いていたため席に座ったところで
あれ間接キスでは!?!?
と我に返りその日の夜は眠れなかった。
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