怖くていい人

明人

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聞かせたくない単語

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私は言われた通りmetubeで検索をする。
「あ、この人かな?黒人さん?」
「ほんまや黒人やな」
「へぇー日本語上手だねぇ」
出てきた画面を見せれば藍くんは眉を寄せる。
「RじゃないLだMC HILO。お前ら全員同じミスすんな」
「もう連絡先教えるから藍がリンク先送ってくれたらええやん」
「お前一文字変えるだけなのに何をそんなに面倒くさがって...」
まで言ったかと思えば少し間があり、再び藍くんが口を開いた。
「まぁいい、送ってやるから全員連絡先教えろ」
「じゃあRainで皆でスマホ振って交換すれば藍も楽やろ!」
未来ちゃんの提案でRainのフリフリ機能で連絡先を交換する。
私のスマホに表示される藍の文字ににやけそうになった口元を抑える。
未来ちゃんがリンク先に飛びおお!と声をあげる。
「いっかついなぁ!街におったらとりあえず関わっちゃあかんタイプの人やで!」
metubeのアイコンの人は車の上に座り、サングラスにキャップ。重そうなネックレスをしている。
「そこに曲の一覧があるから好きなの聞け」
藍くんの言葉で未来ちゃんはとある曲をタップする。
『開かれた扉 もう戻れねぇ
刻まれた時が 何よりの証拠で
一体 どこの誰が何処ぞの夜の路地裏で遠吠え
ドス黒い街角を歩き
残してきた足跡をBackに
フードを被り泣き顔を隠し
ダイヤに変わるダイナモで博打』
「おー、ええ声しとるやん」
「桜音さん低い声の方が好きなんだね...」
未来ちゃんのスマホから流れてきた声は低すぎないが重みのある男性の声だった。
「King of undergroundか...。その曲ならそこまで...」
藍くんは曲が流れ始めた時ふと考えるような仕草をしていたかと思えばハッとしたように未来ちゃんのスマホに手を伸ばす。
「待て!止めろ!」
「え?なんでや?」
「その曲は」
慌てる藍くんを尻目に曲は流れていく。
『いつだって捨て身
Streetで生きると誓ったくせに
俺の成功が妬ましいゆえに
夢見心地のままBe crasy  Mother f××ker』
ここまで流れたところで藍くんが片手で顔を覆っていた。
「これ聴かせたくなかったの?」
「あぁ...」
「まぁ確かにお母さんを殺すなんて良くない言葉だもんね」
私がそう言うと藍くんは顔をあげ、頷く。
「そ、そうだな!」
「なんや藍挙動不審やんけ。なんかあるんか?」
「何もねぇこれ以上掘り起こすな。いいな?」
藍くんの圧に未来ちゃんは頷いていた。
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