怖くていい人

明人

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現代文

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1人でもやってやる。花巻さんに気に入られてスクールカーストの上に立ってやる。そうすれば...
加奈も夏美も信用できない今、自分だけでもやり遂げる。
そう思いながら、次の作戦のために早めに学校に来て下駄箱を開けた時、手紙が入っていた。今時ラブレターかと少し驚いたが、ラブレターにしてはルーズリーフという質素な物だった。
折り畳まれたそのルーズリーフを開いて目を見開く。
『嫌がらせはやめてもらっていいですか?伊藤舞衣さん。やめてくれないのならあなたも同じ目に遭うかも知れませんよ』
ハッキリとした脅しに勢いよく周りを見回す。誰もいない。それもそうだ。部活をやる人間ぐらいしかこの時間学校に来ない。
差出人は桜音か田中のどちらかしかいないはず。
いつバレた?まさか加奈や夏美が?
そんなことを考えても無駄だ。何が同じ目に遭うだ。私はお前達と同じ立ち位置から抜け出すんだ。
いつでも虐げられる弱者の立場から強者の立場に。
奴らの教室に行くと勿論1人もいなかった。そして奴らの机に向かえば今日は桜音の机の中には何も入っておらず、代わりに田中の机には一冊だけ教科書が入っていた。忘れて帰ったのだろう。現代文の教科書だ。
その教科書を広げ、私はマジックでページを埋めていく。
私も覚えのある言葉達で。
気づいた時にはずいぶん時間が経っていて、桜音の方の嫌がらせは教室のゴミ箱のゴミを詰めて終わりにした。
HRが始まる前隣のクラスでは昨日同様桜音の叫び声が聞こえた。いい気味だ。
恨むなら花巻さんみたいなスクールカーストトップの人に目をつけられるような生き方をしてた自分を恨むのね。
花巻さんにまた喜んで貰えるとそんなことを思いながら移動教室の準備をした。
さて次はもう少し捻りのある嫌がらせをしようと考えを巡らせている間に三限目の現代文の時間になった。
奴らの現代文の時間は二限目にあったはず。どんな反応だったのだろうか。
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