怖くていい人

明人

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上の存在

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もう1人の女子生徒の名前は伊藤舞衣。彼女は長谷川加奈はせがわかな
伊藤さんとは中学の頃から一緒で1番仲がいいらしい。
そんなある日中学で突然長谷川さんへのいじめが始まった。
「なんのきっかけもなく、いきなりクラス中の女子から無視されて陰口言われて...。でも舞衣ちゃんだけは私を何度も助けてくれたんです。私だけは加奈の味方でいるからねって...。なのに...なのに私...っ」
話していた長谷川さんの目からまた涙が溢れる。
「私の代わりにいじめられ始めた舞衣ちゃんの味方になれなかった...っ。また私がいじめられたくなかったから...っ」
キツく握り締められた拳が震えている。これは彼女の胸に一生残り続ける後悔だろう。
「いじめは卒業まで続いて...。私は舞衣ちゃんがここを受験するって聞いて追いかけて来て、謝りたくて...。そしたら舞衣ちゃん私に...『こんな辛かったんだね』って笑ってくれたんです...っ。だからこれからは絶対舞衣ちゃんの味方でいようって思って...っ」
「それとうちらへのいじめがどう繋がんねん。いじめられてその辛さ知っとる人間がいじめる側になるっていうのも変な話やけどな」
未来ちゃんの言葉はもっともだが、私はおおよそ長谷川さんからの答えに見当がついていた。
「それは...自分達がいじめられる側に回らないため...」
「いじめてる側にいる間はいじめられないもんね」
「ご、ごめんなさい...っ」
「謝って簡単に済むような問題じゃないのもあなた自身分かってるよね?」
私の言葉に長谷川さんは何も言えず俯く。そんな彼女に私は笑ってみせる。
「なんて、私はそこまで怒ってないよ。未来ちゃんにしたことには怒ってるけど」
「うちも面倒やとは思ったけどぶちのめしたいと思うほどキレてへんからええわ」
「それに、あなた達が望んでした訳じゃないんじゃない?いじめられないためってことは、いじめてくるであろう上の人がいたはず」
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