怖くていい人

明人

文字の大きさ
上 下
51 / 64

作戦

しおりを挟む
長谷川さんは少しの間黙っていたが、自身の腕を強く掴み、震える声で話し始めた。
「最近...花巻さんが話しかけてくれるようになって...。最初は一緒にカラオケ行ったりとか楽しかったんだけど、一緒に遊んでたメンバーがいきなりいじめの標的になって...。それを見て舞衣ちゃん怖くなったのか花巻さんに気に入って貰おうと必死になり始めて...。そんな時に花巻さんが言ったの。桜音さんと田中さんが嫌いだって」
「なるほど。人の心理を利用した上手い爆弾の落とし方だね」
「何感心しとんねん」
また長谷川さんが私の服を掴んでくる。
「お願い!こんなこと言える立場じゃないのは分かってるけど...っ。私だけじゃ舞衣ちゃんを止められないし助けられない!だから...っ舞衣ちゃんを助けて!」
必死な彼女の言葉に私は1つ頷く。
「分かった。私なりにやってみる。でもその代わりあなたにも協力してもらうよ」
「分かった。やる。舞衣ちゃんのためになるならなんでも」
「ええ覚悟やないの」
私の立てた作戦は至ってシンプル。今回の体操着の件は失敗になっている上に、脅し紛いのメッセージを添える。そうすれば何かやらなければと彼女は躍起になる。そして、目の前に簡単に出来そうなものがあればまずそれに飛びつく。だからあえて教科書を残しておいた。その罠に引っかかったのを確認できたらその教科書を長谷川さんに託し、本人の物とすり替える。その結果自身のしたことが返ってくる結末になり、ついでに騒ぎになりつつある今回の件にもさらに拍車がかかり、恐らく花巻さんに呼び出される展開になるだろう。
しおりを挟む

処理中です...