2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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あらすじ

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世界には魔力が満ちている。水、風、火、光、闇。魔族は世界を揺るがすほど膨大な魔力を持ち、人間に害を成してきた。
そんな魔族しか持たないとされる闇属性を持って生まれたカーリラは両親に捨てられた。
孤児院の院長に拾われたことにより、命を救われ、癒しの光属性の魔法が使えることもあり国の医療団に属した。ある日街が魔族に襲われ、リラは街の人々を救うために走り出す。
街では人間と魔族が争い、怪我をしている人間、死んでいる魔族を目にした。人間の治療をしていると瀕死の鳥人族の魔族を見つけ、見捨てられなかったリラは彼を治療した。その後も人々を治療して回っていたが、不意に山が火を噴き、降ってくる落石に目を閉じた。
目覚めると魔族の城に連れてこられており、その中の1人、魔王の姉だというシルヴィアはリラに救われたのだという。
過去リラが森に捨てられた時、罠にかかった銀の体毛の子狼を救った。それが彼女なのだと。
リラは魔族を癒すことが出来る。その事実はシルヴィア、そして街での戦いで治した鳥人族の青年シラビシが証明した。魔族は治癒の力をもつ光属性の魔法を使うことができない。そのため、リラに魔族の癒し手になって欲しいのだとシルヴィアは語る。
敵である魔族の城。断ることはリラの死に直結する事実。そうなれば、孤児院の子供たちが飢えてしまう。しかし、魔族の癒し手となって生きたとしてもその事実はかわらない。そんなリラの不安を解消するように、シラビシが孤児院への食糧の援助を申し出た。
この日からリラは魔族の癒し手として働くことが決まった。
それと同時に突きつけられたのは魔王の婚約者という立場だった。それはリラの命を約束するための形式上のものだと理解しひとまず納得する運びとなった。
魔族と人間の文化の違いに触れ、傷つけてしまった猫人族の子供であるノーウィルとブルーノ。リラは傷つけてしまったことを謝罪し、彼らと交流を持ち、心を通わせた。
人間と魔族は対立し続けており、その偏見はリラにも当然向けられた。それでも彼女は目の前の命を救うことを諦めず、自分の道を突き進む。
その先に別れた兄ガルディアとの再会があった。ガルディアはリラが魔族によって殺されたと思い込んでいたが、再会したことによって復讐の手を止める。
そして、世界が魔族の手によって歪まされたのではなく、人間によって魔力のバランスが崩れたのだと聞かされた。
世界の歪みについての事情を聞いたガルディアはこれ以上無益な争いを避けるために自分を筆頭に隊の者達の一部と共に人質という形で城に逗留することとなった。
魔力によって構築されている世界。
生と死によって循環される魔力は、人間の些細な行為によって歪みが生じ始めていた。
それが火葬。
今までは天界樹によって亡くなった者達の魔力を世界に還していたが、火葬によって火の魔力を伴い世界に還され、魔力が火に傾き始めた。
その傾きは天変地異となって世界に影響をもたらし、火山の噴火、雨の減少などを引き起こした。
リラの兄、ガルディアの部隊が魔族の土地である水の聖域に攻め込んできたのも雨の減少による水不足によるものだ。
ガルディア隊の副隊長アランが、他の者達を連れて戻り、今回聞いた話の裏どりをした上で原因が火葬ならばそれを止めるべく動くこととなった。
過去に魔族の水属性の魔力の高かった者達が自らの命を犠牲にし、火の魔力に偏った世界の歪みを正したこともあった。
今世でそれをさせぬために、水不足が訴えられ始めた街に雨を降らすことで問題を一時的に解決することにする。
広範囲に雨を降らすとなると膨大な魔力が必要となる。そのために、水属性の魔力の高い鳥人族のオーリに会いに行く。
オーリは世界の歪んだ均衡を一時的に戻すために犠牲となった者達の親族だった。そのこともあり、人間に激しい嫌悪を抱く。彼には残されたたった1人の家族である妹、エナが居た。エナは肺病のトゥベルにかかっており、魔族界にはトゥベルの根本的な治療はできなかった。
一時的に症状を抑えるマイルビーの蜜をリラが取ってくることで、オーリはエナのためにリラ達に力を貸すことを約束した。
エナを助けるためにガルディアの友人であり、薬神と呼ばれた男、シリウスと出会い、薬の製作を約束させる。
オーリはリラとの約束通り街に雨を降らせた。
魔族にとって魔力は肉体、生命を構成する全て。大量に魔力を使う行為は死に近づく。昏睡状態となったオーリに魔王が血を与え、使い切った魔力の補填をする。
オーリに血を与える王の魔力を回復させるために、人間でありながら闇属性の魔力をもって生まれたリラが今度は王に血を与えることを約束した。
魔族のため、人間のために共に生きる道を探して奔走する少女の物語。
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