2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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魔力供給王視点

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以前と同じように寝室のベットに二人で腰掛ける。魔力供給のために、リラから血を貰うためだ。
リラは緊張しているのが見て伝わるほど体を硬くしていた。
「カーリラ。手を」
「は、はい!」
差し出された手は少し震えていた。魔力の供給など大抵の者は経験などしない。
王はそんなリラの手の甲に口づけする。
「多少痛みはあるだろうが、最大限配慮する」
「だ、大丈夫です!痛みなどは覚悟の上ですから気にされないでください」
その言う割には震えは止まっていない。この震えは異性に触れられることに対する緊張から来るものかと察した。
男に慣れていないことは感じていたが、ここまでとは。逆に男としての欲が刺激される。
リラの初めてを全て自分のものにしてしまいたい。
手の甲から指先まで何度もキスを落とす。その度に僅かに震える反応も愛おしく思えた。
指と指の間に舌を這わせれば驚いたのか小さく悲鳴があがった。
「陛下!?」
「慣れさせるためだ」
指の付け根部分に至る度、リラの体が跳ねる。指という繊細な部分は刺激を感じやすいのだろう。紅潮し始めた表情を見るに、緊張は多少なりとほぐれたようだ。
あぁ、食べてしまいたいほど可愛らしい。
親指の付け根、一番柔らかい部分に牙を突き立てる。今まで以上に体を震わせ、身を硬くするリラのその傷を刺激すれば短く声が漏れた。痛みの中にある快感からか、艶のある声に心臓が大きく跳ねた。
無意識にリラをベットに押し倒し、腕から首筋、鎖骨にかけて唇を落とす。
「へ、陛下...?」
リラの不安そうな声で理性が戻った。リラの手を伝っていく血を舐めとり、溢れる血を飲み込む。口に広がる甘美な味わいは戻した理性を本能に傾けてくる。
「あの...どれぐらいこうしていれば...」
恥ずかしそうに顔を背けながら身をよじるリラを見て深く息を吐く。
「え!?な、何故ため息を...」
「違う。精神統一だ」
いずれは慣れるだろうが、慣れるまで本能との戦いを続けることになるのかと少し気が遠くなった。
婚約者という立場なのだからもういっそ手を出してしまえばいいのではという魔の囁きが聞こえる。しかし、本能に身を任せた結果リラに怯えられ嫌われ、周りの者達からとんでもない非難をくらい、リラの兄であるガルディアには確実に殺されかねず、城内で人間と魔族の全面戦争になってしまう。
何よりこの少女に嫌われることが一番恐ろしい。
そっとリラの銀の髪に指先を通す。
「もう少し、このままで居てくれ」
絶対に傷付けぬよう細心の注意を払い、柔らかく白い頬を撫でる。
暫く瞬きを繰り返していたリラは、その手に頬をすり寄せ微笑んだ。
「はい。分かりました。陛下の望むままに」
「ぐぅっ!!」
「陛下!?」
胸が締め付けられるように痛み、思わず声が漏れた。
何事かとおろおろと動揺するリラに大丈夫だと声をかけるのに少し時間を要した。
「少し衝撃が強かっただけだ...」
首を傾げ、疑問符を浮かべている様子に思わず笑みが溢れてしまう。
「お前が愛らしいと、そういう話だ」
「...へ!?!?」
瞬きを繰り返していたリラの顔が一気に真っ赤に染まり、パクパクと口の開閉を繰り返している。
かと思えば部屋を飛び出して行き、その背を見送るしかなかった。
「...つい本音が漏れたな」
あまりにも自然に出てしまったため、自分でも今ようやく言った言葉を理解した。
真っ赤になったリラの顔を思い出すとあまりにも愛おしく、自然と口元が緩んでしまう。
「癖になってしまいそうだ」
あの少女の前でだけはついつい気が緩んでしまう。気が緩むと言うより、癒されていると言う方が正しいかも知れない。
魔族の王という立場上常に気を張り、王としての姿を崩してはならなかった。それは王となった者の当たり前の責務だ。
だが、心地いいと自然と笑える世界があるというのは悪くない。
「だが、相談はした方がいいだろうな」
決めたことをすぐに行動に移すことにした。
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