2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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盲目

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人間の部隊の隊長であるガルディアが王の私室に呼ばれ、何事かと神経を尖らせる。
ハイン、ポール、トリスの件で誤解は解けはしたが、部隊の者と魔族のこ競り合いは小さいがなくなってはいない。
その話についてか。それとも国に何かしら動きがあったのか...。
いまガルディア達は人質という体で魔族の城に逗留し、戦争の抑止力になっている。国から兵が送り込まれたならば、彼らを見捨てたということになる。
一体どんな話がでてくるのかと一つ息を吸って王の部屋をノックした。
「ガルディアだ。入るぞ」
返事があったのを確認し、部屋に入ると肌で感じる威圧感に思わず剣に手が伸びた。
王はただ執務用のデスクに座っているだけだ。だというのに冷や汗が溢れるほどの気迫だ。
呑まれまいと剣からは手を離し、真っ直ぐ王を見据える。
「俺を呼んだということは余程大事な話なようだな」
「あぁ」
真剣な面持ちの王の様子に心構えをした。
「用件はなんだ」
王は少し間をあけ、口を開いた。
「カーリラに男女に対する教育をほどこしてくれ」
「...は?」
あまりにも予想外の言葉に本気で聞き返した。
「あまりにも男に対して警戒心がない。カーリラのためにも警戒心は持つように家族である貴殿から伝えてくれ」
「...それは確かに大事だな」
ガルディアは周りが引くほどのシスコンであった。それゆえ、王のこの話は最高重要案件と言っても過言ではない。
「ニーナは昔から可愛かったが成長して可愛さの中に美しさも出てきた。こんな可愛すぎるニーナを世の男どもが放っておく訳がない!!!」
あまりにも本気の叫びに常人ならば顔を歪めそうなものだが、王は真剣な面持ちで頷いた。
「同感だ。カーリラには自身の魅力に対する自覚を持って貰った方がいい」
ガルディアはシスコンだが、王はリラに惚れていた。つまり二人とも盲目なのである。
リラのことは好きでも嫌いでもどちらかと言えば人間だから嫌いな犬人族のリヴェアなら
「え、あいつ別に美人でもなんでもなくない?強いて言うならモブ顔」
と答えることだろうが、リラの容姿に関して二人はフィルターがかかっている。
「今から伝えてくる!」
「頼む」
その日男は狼だからな!!と妹に熱弁する兄がしつこすぎてうるさい!と妹にビンタされる光景を多くの者が目撃したのだった。
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