君は花のよう

明人

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ルルーアが目を覚ますと、自室でないことを悟った。見覚えはある。リックの屋敷だ。
何故かとグルグル思考が巡っていると、後頭部に痛みが走り声が漏れる。
「ルルーアさん!目が覚めたんすね!」
駆け寄ってきたのはアインだった。
アインはベットのそばのドレッサーに水を乗せたトレイを置く。
「体痛いと思うんで痛み止め飲みますか?」
「あ、あの私一体...」
「ルルーアさんの家火事になったんですよ。それに気づいたヴァールリック様がすぐ駆けつけたんです。火傷とか頭の傷とか重傷とまではいかないとは聞きましたが、痛いでしょう?痛み止め持ってきましたよ。飲めます?」
アインの言葉が中々頭に入らなかった。
だが、ゆっくりと記憶が巡ってくる。
あの赤い髪の女が火をーー
ルルーアは震える声で問う。
「家が...火事って...」
「俺も詳しくは知らないんで、ヴァールリック様が戻られたら話聞いてください。着替えとかしたいっすよね?メイド長呼んでくるんで待っててください」
アインが部屋から出ていく音を聞いた直後、部屋を吹き抜ける風に自然と視線が窓に向く。
開いた窓から森が見えた。
「お父さんと...お母さんの家...」




リックとルピィが屋敷に戻るとバタバタと慌ただしい様子に眉を寄せる。
「何事だ 」
通りかかった執事見習いに声をかければ、小さな悲鳴と共に答える。
「あ、あの、ルルーア様が姿を消されたため、セド執事長からすぐに森を捜索するようにと...」
ざわりと気持ち悪い感覚が全身を巡り、即座にルピィと共に屋敷を飛び出した。
「ルルーアが居なくなったってどういうことよ!!」
「分からん!だがあの女がまだ居るのなら彼女と接触する可能性が高い!!」
「早く見つけなきゃ!」
どうか、どうか、無事で居てくれ。
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