君は花のよう

明人

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不安

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「ルルーアのことどう思ってるのか察しはついてるけど、あいつ押しに弱いし流されやすい。下心であいつに強制してるなら、今すぐにでもうちに来てもらいたいんだが?まさか、ルルーアの家燃やしたのもあんたの仕業とか言わないよな?」
「僕が要因であるのは確かだ」
答えたリックの胸ぐらをガイルドは掴み上げ、睨みつける。
「ふざけるなよ。あの家がルルーアにとってどんなに大切だったか知ってて言ってるのか?」
「...全てを理解しているわけではないが、彼女の生きる糧だったのだと感じていた」
「そうだよ!!そんな大事なもん奪って!居場所奪って!その弱みに付け込みやがって!!もう十分だ。ルルーアはうちで引き取る。今後一切ルルーアには近づくんじゃねぇよ」
リックを突き飛ばしたガイルドの頭上に、床を浸すほどの水が降り注いだ。
「ちゃんと話を聞きなさいよ!あんたも!何でちゃんと説明しないのよ!!」
ルピィはリックを指さして叱り、リックは目を伏せて答える。
「僕が要因であるのは事実だ」
「あーもう!!ルルーアだって何回も言ったでしょ!あんたのせいじゃないって!そりゃ、原因になったのはあんたなのかも知れないけど!好意を持ってきた女がルルーアの家に火をつけるなんて誰も想像出来ないでしょうが!!」
「女...?」
「その女に関してはこちらで処分している。今後、ルルーアを傷つけることはない」
ガイルドが不意に押し黙り、視線を下げた。
「何?急に萎らしくなっちゃって」
「...昔、俺も俺のせいでルルーアを傷つけたことがあった。女絡みで。その女とは付き合ってたんだが、ルルーアを優先してたのが気に食わなかったんだろうな。その女が階段からルルーアを突き飛ばしたって話を他の女の子から聞いたよ。でも、ルルーアは俺達を頼らず、傷が治った頃また店に顔だしてくれて。ルルーアになんかなかったかって聞いたら、『ちょっと転んじゃった』ってよ...。あいつ、謝らせてもくれねぇんだ」
その辛さはリックにも分かる。
傷つけてしまったのに、当の本人はこちらが償いたくてももう全てを許してしまっているのだ。
「あんたヴァールリックより酷いじゃないのよ。ヴァールリックは何もしてないけど、あんたに関しては彼女が居ながら他の女を優先するなんて、そりゃおかしくなるわよその女」
「うっ!!」
相当のダメージを受けたらしく、胸を抑えるガイルド。
「それで良く人のこと責められたわね」
「妖精ちゃん...。言葉は凶器にもなるって知って欲しいかも...」
「どちらにせよ、選ぶのはルルーアよ。当人抜いて話すことじゃないわ」
「それもそうだな」
彼女には選択肢があったのだ。
それを知った今彼女の考えは変わるだろうか。 
そう思うと不安が渦巻いた。
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