君は花のよう

明人

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驚き

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薬屋に入ると、前回以上に店内は女性で賑わっていた。
「ガイルドさん。ちょっとよろしいですか? 」
「ルルーア?どうしたんだい?今日は納品の予定はなかった気がするが...。もしかして、俺に会いたくなったのかな?「失礼」
ルルーアに歩み寄るガイルドの間にリックが割って入る。
「彼女の仕事の件について、話があってきた」
「仕事の件?」
ガイルドは少し考えたあと、女性達を帰らせcloseの看板を表にかけた。
「で、どういうことかな?ルルーア」
「あの...今後薬草の納品が出来なくなることを伝えに来ました」
「何かあったの?」
少し驚いたように首を傾げるガイルドに、ルルーアは少し言いづらそうに答える。
「その...家が燃えまして」
「...は!?」
ルルーアの答えが流石に予想外だったらしく、いつもの飄々とした表情が崩れる。
「その時に薬草も燃え尽きてしまって。あの品質の薬草を育てるには最低でも半年か、それ以上はかかるのでそれを伝えに来たんです」
「ちょ、ちょっと待って!家が燃えた!?体は!?あぁ!よく見たら可愛い顔に傷が!!大丈夫なのか!?」
わたわたと動揺するガイルドにルルーアは、はいと頷く。
「家が燃えたこと自体は一ヶ月ぐらい前の話なので。怪我も随分良くなりました」
「一ヶ月も前!?その間どうしてたんだ!?」
「僕の屋敷で治療に専念してもらっていた」
リックが答えると、ガイルドはあからさまに顔を歪めた。
「前も居たなあんた。それで?あんたは結局ルルーアのなんなんだ?顔も見せないで失礼だとは思わないのかな?」
リックはフードを外し、真っ直ぐガイルドを見据える。
「確かに礼を欠いていたな。改めて僕はヴァールリック・アーネスト。彼女の雇用主でもある」
ガイルドはリックの容姿に驚いていたが、名前を反芻し、叫んだ。
「炎麗の魔法使い!?何でそんなのがルルーアと...っ」
「炎...?元々お庭の手入れを頼まれてたんですけど、住むところがなくなったので、住み込みで働かせてくれることになったんです」
「いやいや!!家がないならうちにくれば良かったろ!」
「そこまで迷惑かけられません。でもありがとうございます」
ニコリと笑顔さえ見せるルルーアにガイルドはハァーと深いため息つき、前髪をかき上げた。
「正直驚くことばっかりだけど、ルルーアがちゃんと笑えてるならそれでいいよ」
母が生きていた頃から交流があり、本当の兄のように可愛がってくれ、今も本気で心配してくれているのがルルーアには伝わった。
「心配してくれてありがとう」
ルルーアが笑えば、ガイルドは自然とルルーアの頭に手を伸ばし、その手をリックに掴まれた。
「今のは流石に許容すべきだったんじゃないかなぁ?人に空気読めないって言われるタイプ?生きるの大変でしょ君」
「生憎とこれで困ったことはない」
バチバチと睨み合っている二人にルルーアはどう止めるべきかと悩んでいたが、ルピィが口を開く。
「放っておいていいわ。それよりこの男ともう一人挨拶したい人間が居るんじゃないの?」
「あ、うん。ガイルドさん。おじさんは今...」
「奥で寝てるよ。会ってやってくれ」
「はい」
ルルーアが奥に行くのを見送り、ガイルドはリックに向ける視線を鋭くさせた。
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