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天使
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逃げなければならない。
何処か遠くへ。誰にも見つからない場所へ。
生きなければならない。
何としてでも、捕まらず、生き延びなければ。
森に入った時と今頭上にある太陽の位置を考えるに、半日は動き続けていたように思う。
1歩を踏み出すのにも鉛をつけているようで、もう限界だった。
その場に倒れ込み、睡魔に身を任せる。
「おーい君。生きているか?」
女の声だ。
弾かれたように飛び上がり顔を隠す。指の隙間から相手を確認すれば、帽子を被ってはいるがら覗いている髪は銀。瞳は金の天使のような風貌の女だった。
サイズの合っていない探検服を折り返してボタンでとめて着ている。肩には白いフクロウを乗せていた。
少なくとも街の人間ではなさそうだと安堵する。
「おお。生きていたか。それならばそこで寝るのはオススメしないぞ」
天使のような容姿に反して口調は随分と勇ましい。
「何でダメなんだ」
「その辺りはアリの縄張りだ」
「アリ?別に多少虫に這われたところで気になるほどお上品な生活してねぇよ」
今までずっと地べたで寝泊まりする生活をしていた。虫なんてそこに居て当たり前の存在。今更騒ぐものではない。
「ほう。ならばそのまま寝て試してみるか?ここにいるアリは世界でも恐れられるクマすら殺すアリだ。人間など容易いだろうな」
「シニタイナラオスキニナサッテ」
「フクロウが喋った!?」
フクロウが喋ったことも勿論驚きだが、それ以上に聞かなければならないことがある。
「アリがクマを殺すなんて変な嘘ついて脅すなよな!」
「嘘では無い。実際にその光景を見た者がいる。1匹は小指の先に乗るほど小さいというのにそれが万の群れを成した時、クマすら生きたまま飲み込まれ奴らの餌となったそうだ」
真剣な声音にぞわりと毛が逆立つようだった。
「だがこの目で見た訳ではない!この辺りで試しに寝てみるのもいい経験になりそうだな!」
そう言うが早いか地べたに大の字に寝っ転がった女に仰天する。
「待て待て!今俺の事止めたよなあんた!?」
「君の言う通りあんな小さな生物がどうやって自分たちの数百倍を超える巨大生物を倒せるのか、知りたくはないか!?」
「自分の身でやる馬鹿が何処にいんだよ!」
「実際に自分の身で体験してこそ体験談として成り立つのだ!」
「あーもううるせぇばーか!!!」
無理矢理相手を立たせれば不満そうに唇を尖らせていた。何で俺が悪い感じなんだよ。
「で?あんたここで何してるんだ」
「私は天国へ向かっている」
「天...国...?」
一瞬妹の顔が頭を掠めた。自分が空腹でも自分は食べたと嘘をついてパンをくれるような、優しい妹の顔が。
「とは言っても本当の天国ではないぞ。天国のように美しい場所だそうだ」
フフンと自慢げに鼻を鳴らす相手の言葉でハッと我に返る。
「...そんなに、いいとこなのか?」
「あぁ。本当に美しかったと聞いている。あれほど美しい世界は二度と拝めないかもしれないと言わしめるほどだ」
俺の目的は生きること。捕まらず、生き延びること。だけど、その目的の1つに天国のような場所に行くことを追加してもいいんじゃないだろうか。
「俺も、一緒に行っていいか」
「その場所はこの山の頂上にある。先程話したアリのような危険がこの先にはまだまだあるんだ。死にたくなければやめときなさい」
先程地面に大の字になっていた人間と同一人物とは思えないほどの真剣さだった。
死ぬほどの危険性がこの先にあるのは確かな事実だろう。
俺は生きたい。生きなきゃいけない。それでも。
「行きたい。行かせてくれ」
俺の目を真っ直ぐ見つめ、彼女は笑った。
「いいだろう!だが、食事などは自分で得ること!教えられる限りのことは教えよう!さぁ!天国へ向かおうじゃないか!」
差し出された相手の華奢で柔らかな手を握る。
生きる以外の最初の目的が出来た。
何処か遠くへ。誰にも見つからない場所へ。
生きなければならない。
何としてでも、捕まらず、生き延びなければ。
森に入った時と今頭上にある太陽の位置を考えるに、半日は動き続けていたように思う。
1歩を踏み出すのにも鉛をつけているようで、もう限界だった。
その場に倒れ込み、睡魔に身を任せる。
「おーい君。生きているか?」
女の声だ。
弾かれたように飛び上がり顔を隠す。指の隙間から相手を確認すれば、帽子を被ってはいるがら覗いている髪は銀。瞳は金の天使のような風貌の女だった。
サイズの合っていない探検服を折り返してボタンでとめて着ている。肩には白いフクロウを乗せていた。
少なくとも街の人間ではなさそうだと安堵する。
「おお。生きていたか。それならばそこで寝るのはオススメしないぞ」
天使のような容姿に反して口調は随分と勇ましい。
「何でダメなんだ」
「その辺りはアリの縄張りだ」
「アリ?別に多少虫に這われたところで気になるほどお上品な生活してねぇよ」
今までずっと地べたで寝泊まりする生活をしていた。虫なんてそこに居て当たり前の存在。今更騒ぐものではない。
「ほう。ならばそのまま寝て試してみるか?ここにいるアリは世界でも恐れられるクマすら殺すアリだ。人間など容易いだろうな」
「シニタイナラオスキニナサッテ」
「フクロウが喋った!?」
フクロウが喋ったことも勿論驚きだが、それ以上に聞かなければならないことがある。
「アリがクマを殺すなんて変な嘘ついて脅すなよな!」
「嘘では無い。実際にその光景を見た者がいる。1匹は小指の先に乗るほど小さいというのにそれが万の群れを成した時、クマすら生きたまま飲み込まれ奴らの餌となったそうだ」
真剣な声音にぞわりと毛が逆立つようだった。
「だがこの目で見た訳ではない!この辺りで試しに寝てみるのもいい経験になりそうだな!」
そう言うが早いか地べたに大の字に寝っ転がった女に仰天する。
「待て待て!今俺の事止めたよなあんた!?」
「君の言う通りあんな小さな生物がどうやって自分たちの数百倍を超える巨大生物を倒せるのか、知りたくはないか!?」
「自分の身でやる馬鹿が何処にいんだよ!」
「実際に自分の身で体験してこそ体験談として成り立つのだ!」
「あーもううるせぇばーか!!!」
無理矢理相手を立たせれば不満そうに唇を尖らせていた。何で俺が悪い感じなんだよ。
「で?あんたここで何してるんだ」
「私は天国へ向かっている」
「天...国...?」
一瞬妹の顔が頭を掠めた。自分が空腹でも自分は食べたと嘘をついてパンをくれるような、優しい妹の顔が。
「とは言っても本当の天国ではないぞ。天国のように美しい場所だそうだ」
フフンと自慢げに鼻を鳴らす相手の言葉でハッと我に返る。
「...そんなに、いいとこなのか?」
「あぁ。本当に美しかったと聞いている。あれほど美しい世界は二度と拝めないかもしれないと言わしめるほどだ」
俺の目的は生きること。捕まらず、生き延びること。だけど、その目的の1つに天国のような場所に行くことを追加してもいいんじゃないだろうか。
「俺も、一緒に行っていいか」
「その場所はこの山の頂上にある。先程話したアリのような危険がこの先にはまだまだあるんだ。死にたくなければやめときなさい」
先程地面に大の字になっていた人間と同一人物とは思えないほどの真剣さだった。
死ぬほどの危険性がこの先にあるのは確かな事実だろう。
俺は生きたい。生きなきゃいけない。それでも。
「行きたい。行かせてくれ」
俺の目を真っ直ぐ見つめ、彼女は笑った。
「いいだろう!だが、食事などは自分で得ること!教えられる限りのことは教えよう!さぁ!天国へ向かおうじゃないか!」
差し出された相手の華奢で柔らかな手を握る。
生きる以外の最初の目的が出来た。
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