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0章 山里
0-2 森の小さな舞踏会
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朝の森は、まだ霧に包まれていた。太陽の光がゆっくりと差し込み、葉っぱや草の先に残る夜露を淡く輝かせる。鳥のさえずりがあちこちで響き渡り、山里は静かな目覚めの時を迎えていた。
加奈は、昨日の団子のことを思い出して、にんまりしながら石段を駆け上がる。十三歳になったばかりの小柄な少女は、元気いっぱいで森の中を駆け回るのが大好きだった。祠に着くと、白い子ぎつねはもう座っていた。毛並みは朝露で少し湿って、ふわふわのしっぽが左右に揺れている。
「子ぎつねさま~!おはよう!」
元気いっぱいの声に、子ぎつねは小さく鼻をひくひくさせ、ぴょんと跳ねた。その目は金色に光り、加奈をじっと見つめる。まるで「また来たのか」とでも言いたげな表情だった。
「今日はね、母様が栗入りのお団子を作ってくれたの。特別なの!」
竹の葉を広げると、もちもちとした団子が並び、甘い香りがふわりと立ち上った。子ぎつねはしっぽをぶんぶん振り、ぺろりと一口舐めた瞬間、団子の周りに小さな光の粒がふわりと舞った。
「わっ!光った!」
加奈は目を丸くした。光はほんの小さく、ぱっと花びらのように弾けて散った。子ぎつねは得意げに胸を張り、しっぽをさらにふわりと揺らす。
「……団子の力かな」
今一瞬子ぎつねが喋ったように聞こえた。加奈は気づかずに栗の団子をもぐもぐと頬張っていた
光が消えたあとも、森は柔らかい朝の空気に包まれていた。加奈は団子を少しずつ子ぎつねに差し出しながら、祠の横に腰を下ろす。その視線の先には、子ぎつねのふわふわの毛並みと、金色に光る瞳があった。
「昨日の夜、母様が寝ぼけながらお菓子を作って、全部床に落としちゃったんだって」
加奈が話すと、子ぎつねはじっと耳を動かして聞いている。そのしぐさに加奈は思わず笑う。「ふふっ。もう、母様ってば、どうしてこう毎日ドタバタなのかな」
少しして、加奈が立ち上がると、子ぎつねもぴょこんと跳ねて後をついて歩き始めた。森の小道を一緒に歩く二人。踏む落ち葉や枝に光が反射し、子ぎつねの毛並みにも朝日が柔らかく差し込む。
「ねえ、子ぎつねさま。ちょっと遊ぼうよ」
加奈が小石を投げると、子ぎつねは軽やかにぴょんと跳ねて受け止めた。小石に触れた瞬間、またもや小さな光がきらりと弾け、木々の葉が舞う。まるで森の中にちいさな舞踏会が生まれたように葉っぱが舞った。
「わあ、きれい……!」
加奈は目を輝かせ、子ぎつねも楽しそうにしっぽを振る。
その時、森の奥から「がさっ、がさっ」と音が聞こえた。小動物かと思った加奈だったが、子ぎつねは耳をぴくりと立て、少し警戒する。
「……何か来る」
小さな声が聞こえた。加奈だけが分かるその声に、思わず胸がざわつく。
黒い影がひゅっと現れ、葉っぱを巻き上げながら小道を横切る。加奈は目を丸くし足を止めるが、子ぎつねは冷静に影の通り道に前足を置いた。
すると、影は光に触れた瞬間、ふわりと白い煙に変わって消えた。加奈は目を見開く。
「子ぎつねさま……あれ、魔法?」
子ぎつねは「こん」と小さく鳴き、しっぽをくるりと巻いた。どうやら魔法というより、昨日の団子に残ったほんのり不思議な力が小さないたずらをしたらしい。加奈は肩を揺らして笑った。「びっくりしたけど、楽しかったね」
午後になると、二人は祠に戻り、日向に座って残りの団子を分け合った。加奈が団子を口に運ぶと、子ぎつねは鼻をぴくりと動かし、じっと加奈の様子を見つめる。
まるで「ちゃんと味わうんだよ」とでも言っているかのようだ。
日が傾き始め、森に長い影が伸びるころ、加奈は石段を下りる準備をした。子ぎつねは名残惜しそうに、竹の葉を鼻先で押したり、ふわふわのしっぽをゆっくり揺らしたりしている。
「子ぎつねさま、明日も一緒に遊ぼうね」
加奈は手を振り、笑顔で森を後にする。子ぎつねはその背中を目で追い、耳をぴくりと動かした。森には静かな風と、団子の香りの余韻、そしてわずかな光が残る。
加奈は、昨日の団子のことを思い出して、にんまりしながら石段を駆け上がる。十三歳になったばかりの小柄な少女は、元気いっぱいで森の中を駆け回るのが大好きだった。祠に着くと、白い子ぎつねはもう座っていた。毛並みは朝露で少し湿って、ふわふわのしっぽが左右に揺れている。
「子ぎつねさま~!おはよう!」
元気いっぱいの声に、子ぎつねは小さく鼻をひくひくさせ、ぴょんと跳ねた。その目は金色に光り、加奈をじっと見つめる。まるで「また来たのか」とでも言いたげな表情だった。
「今日はね、母様が栗入りのお団子を作ってくれたの。特別なの!」
竹の葉を広げると、もちもちとした団子が並び、甘い香りがふわりと立ち上った。子ぎつねはしっぽをぶんぶん振り、ぺろりと一口舐めた瞬間、団子の周りに小さな光の粒がふわりと舞った。
「わっ!光った!」
加奈は目を丸くした。光はほんの小さく、ぱっと花びらのように弾けて散った。子ぎつねは得意げに胸を張り、しっぽをさらにふわりと揺らす。
「……団子の力かな」
今一瞬子ぎつねが喋ったように聞こえた。加奈は気づかずに栗の団子をもぐもぐと頬張っていた
光が消えたあとも、森は柔らかい朝の空気に包まれていた。加奈は団子を少しずつ子ぎつねに差し出しながら、祠の横に腰を下ろす。その視線の先には、子ぎつねのふわふわの毛並みと、金色に光る瞳があった。
「昨日の夜、母様が寝ぼけながらお菓子を作って、全部床に落としちゃったんだって」
加奈が話すと、子ぎつねはじっと耳を動かして聞いている。そのしぐさに加奈は思わず笑う。「ふふっ。もう、母様ってば、どうしてこう毎日ドタバタなのかな」
少しして、加奈が立ち上がると、子ぎつねもぴょこんと跳ねて後をついて歩き始めた。森の小道を一緒に歩く二人。踏む落ち葉や枝に光が反射し、子ぎつねの毛並みにも朝日が柔らかく差し込む。
「ねえ、子ぎつねさま。ちょっと遊ぼうよ」
加奈が小石を投げると、子ぎつねは軽やかにぴょんと跳ねて受け止めた。小石に触れた瞬間、またもや小さな光がきらりと弾け、木々の葉が舞う。まるで森の中にちいさな舞踏会が生まれたように葉っぱが舞った。
「わあ、きれい……!」
加奈は目を輝かせ、子ぎつねも楽しそうにしっぽを振る。
その時、森の奥から「がさっ、がさっ」と音が聞こえた。小動物かと思った加奈だったが、子ぎつねは耳をぴくりと立て、少し警戒する。
「……何か来る」
小さな声が聞こえた。加奈だけが分かるその声に、思わず胸がざわつく。
黒い影がひゅっと現れ、葉っぱを巻き上げながら小道を横切る。加奈は目を丸くし足を止めるが、子ぎつねは冷静に影の通り道に前足を置いた。
すると、影は光に触れた瞬間、ふわりと白い煙に変わって消えた。加奈は目を見開く。
「子ぎつねさま……あれ、魔法?」
子ぎつねは「こん」と小さく鳴き、しっぽをくるりと巻いた。どうやら魔法というより、昨日の団子に残ったほんのり不思議な力が小さないたずらをしたらしい。加奈は肩を揺らして笑った。「びっくりしたけど、楽しかったね」
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まるで「ちゃんと味わうんだよ」とでも言っているかのようだ。
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「子ぎつねさま、明日も一緒に遊ぼうね」
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