音楽魔法具店の歌姫

ほか

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 音楽魔法具店 店員求む
 募集人員 一名
 業務内容 ミュージカリー・カップの鑑定・回収
 勤務地 ロンドン ピカデリーサーカス

 広告の切り抜きを手に、ティナ・チェルシーはロンドンにあるその店の門をたたいた。
 赤茶色の扉に、黒い曲線を描いた取っ手。
 立てかけられた看板には、こう書かれている。
 
 Musical Magical Bazar――音楽魔法具店と。

 このところ、文明都市ロンドンをにぎわせている噂がある。
 ミュージカリー・カップの存在である。

 ミュージカル界に出回っているという魔力的な力を秘めた道具。
 それらは人々の前に、アクセサリーや骨董品の形をとって現れるという。

 一見ありふれた装飾品となんら変わりないそれらは、人の音楽の才能を閉じ込め、他者に移行できるのだとか。

 音楽業界においてもAIが幅をきかせ、コンピュータが作曲をし、機械が音を奏でる現代にあってなんとも胡散臭い話。
 だがティナは知っていた。
 ミュージカリー・カップは実在していて、悪しき者の手によって密かに人々の才能を閉じ込め、売り買いするのに使われていると。

 できることなら知りたくはなかったが、つきまとって離れない現実である。

 広告握りしめた手を見つめるライムグリーンの瞳に宿る光。シニヨンにまとめた蜂蜜糸の髪には隠し切れないつや。


 ティナがかつてその魔法具なるものに歌声を奪われたプリマドンナであるかぎり。
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