ラヴェンナ・ヴァラディ ~語れる司書の物語~

ほか

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第3話 宅配司書と女学生

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 これはアジアのとある入院患者の物語。難病を患うこの絵本の著者は、当時わずか九歳です。



 少女の病のために仕事を休まなければならない両親も、一人での生活を強いられる兄も。



 周りの人々もまた言葉を飲み込んでいるということを、この年齢にして少女は理解しています。







 ふっつりと、スウィーティの目尻に露が浮かぶ。



 スウィーティに病気はない。



 アジアの小国からは遠く隔たった都市ロンドンにいる。



 なのに。



 言葉を何度も飲み込み続けると、どんなに胃が、肺がもたれるか。



 スウィーティは知っている。



 少女の内を引き裂く慟哭がそのままこの胸にこだまするようだ。



 ラヴェンナの語り口がふいに、途切れる。







「しばし、休憩をいただきます」



 ラヴェンナは一度部屋に戻りまた屋根の上に舞い戻ってきた。



 携えてきた絵本を開いたあるページ。



 そこには、病室のオーバーテーブルの裏側に刻まれた文字を見つけた少女が描かれていた。





 健康を祈る言葉。



 病気と闘う同志への励ましの言葉。





 この部屋に入院してきた患者たちの表現であり、コミュニケーションの跡だった。



『来年、わたしは長期入院をひかえている。二平方メートルの世界でまた、わたしらしく生きていく。オーバーテーブルにではなく、心に言葉をきざみこむ』



『それがだれかに届くかもしれないから』





 少女の独白で、物語は終わる。



 静かな干潮のような読後感。



 そこへ満ちる月の光。





 ☆彡ブックトーク部分参考文献



『夜間飛行』 サン=テグジュペリ/著 二木麻里/訳 光文社古典新訳文庫

『地獄の悪魔アスモデウス』 ウルフ・スタルク/著 アンナ・ベグルンド/イラスト 菱木晃子/訳 あすなろ書房

『二平方メートルの世界で』 前田海音/文 はたこうしろう/絵 小学館
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