ラヴェンナ・ヴァラディ ~語れる司書の物語~

ほか

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第4話 宅配司書ができるまで

18

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 ぱち、ぱち。



 気付くと手を叩いていた。







 少女の驚くべき成長。



 自発的な試みに、何か言ってやらねばと思うのに、言葉が出ない。



 おそらくこれが、ブックトークだ。



 先ほど目を止めた欄の職業の人たちが行うという専門業務。



 物語性もつながりもない。あまりに拙いが。



 伸びしろは十分にある。







「……テーマは」



「え?」







 手先にまで迸る振動をごまかすように、ダイアンは挑戦的に笑う。



「ブックトークは最初にテーマを提示しなければいけません。それが基本だそうですよ」「うーん」



 難しいことを言われ、なんども唸り、首を回すラヴェンナに、ぷっと噴出す。



「すみません、意地悪くダメ出ししましたが。驚いているのです。喜怒哀楽にぴたりとはまる本を選び、表現する。なかなかできることではない」



「きどあいらく?」







 ラヴェンナは目をひんむいて、



「ちがいます」



 いっぱしに。



「てーまはそれじゃない、です」



 きちんと訂正なんかしてきた。



「わたしがつたえたかったのは、きもちです」



 ウィスタリアの目をいっぱいに見開いて。



「しくしくって哀しかったり、どかんって怒ったり、わくわくしたり、じーんとじんわりしたり」



「いや、ですからそれを喜怒哀楽と――」



「そういうぜんぶをおしえてくれた、だいあんさんをみるとわいてくるものです」



 ふいに、ダイアンも口を噤む。



 じっとそんな彼を容赦なく見つめ、ラヴェンナは。



 ある言葉を落とした。







「ありが、とう」







 ワインレッドのダイアンの目が、大きく、しばたたかれる。



「ぶっくとくのテーマは、ありがとう、です!」



 そこに、大好きないちごでできた宝石でも見つけたかのように、にっこりと微笑み、ラヴェンナはどんと胸を叩いて張った。



 その誇らしげな様子を見ていると、なんだか笑えてきた。



 声に出して笑いながら、ダイアンは言う。



「敵いません、あなたには」







 今の気持ちはそう、『楽しい』だと思う。



 こんなに愉快なのは何年振りか。



 もしかしたら生まれて以来か。



 理由をわかっているのかいないのか、満足げに少女も笑う。



 笑い声を重ねることで存分にダイアンはその感情を堪能することにしたのだった。







 すてきなブックトークをありがとう。ラヴェンナ・ヴァラディ。
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