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2章 流星の旋律
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「しかし、モテるだろうね」
昼休み、夏実の前の席で単語帳をめくりながら、茜がふと口にした。受験勉強を行う者が半分、あちこちの席でお喋りに花を咲かせる者が半分といった、騒々しい時間。
「なにがあ?」
ノートに英文を書き連ねていた夏実は、間延びした声と共に顔を上げる。茜は横顔を単語帳に落としたまま、ひらひらと手を振った。
「男の子でピアノ弾けるってさ、それだけで注目されるよ。ほっとかない子もいるんじゃない」
「ななな」
大袈裟に右手からぽとりとシャープペンシルを落としながら、夏実は声を引きつらせる。
「でも、でも私以外に告られたことないって言ってたよ!」
「あんたみたいなのがうろうろしてちゃ気が引けるよ。でも、今後は分かんないよ。それに家庭科の時間とか、けっこう人気なんだって」
「なんで」
「ほら、料理できるから。調理実習の時とか、一緒の班になりたい子が多いって五樹が言ってた。押し付けだろうけどさ」
「許さん!」
勢い込んで夏実は立ち上がった。握ったこぶしがぷるぷると震える。
「あいつは私以外に渡さないから!」
「渡さないって、別に夏実のもんでもないでしょ」
「茜ちんのばかー! ちょっと確認してくる!」
「こら、迷惑だからやめなってば!」
ここぞとばかりに教室に突入しに行こうとする夏実の袖を茜が引きずる光景は、まるでいつも通りのものだった。
「プレゼント?」
聞き返す茜に、夏実は神妙な面持ちで頷いてみせる。
「クリスマスね、ここで一発ぎゃふんと言わせたいの」
「そんなの言わせないの」
夏実の頬を人差し指で軽くつつきながら、茜はふむと考える。
「麻斗のことならさ、あたしより夏実の方がわかってるでしょ」
「そうでもなくてさー。考えても浮かばなくって。茜なら弟くんいるでしょ。男の子ってなにもらったら喜ぶ?」
「あのね、あの子まだ六歳だから。幼稚園児と同じ絵本もらったって、嬉しいわけないでしょ」
「ええー、だめかあ」
あからさまにしょんぼりする夏実は、ノートにぐるぐると小さな円を描く。小さな丸がぐんぐんと黒くなっていく。
「そう言われてもね。うーん。やっぱり音楽系じゃない? それしか思いつかないけど」
「だよねえ。でもなんだろ、メトロノームとか?」
「もう持ってるでしょ。そんなに何台もいるもんじゃないし。……楽譜とかどうなの」
「何の楽譜持ってて何が欲しいか全然しらないんだよね。被っちゃったらやだし。あー、全然わかんないー」
「ピアノって消耗品ないしね」
ぽいとペンを机に放り投げた夏実は天井を見上げ、ぱんと手を打つ。
「やっぱりわかんないや! 本人に聞くのが早い!」
「だから行くなって言ってるの!」
さっさと教室に突撃しようとする夏実の腕を、ため息をつきながら茜は掴むのだった。
昼休み、夏実の前の席で単語帳をめくりながら、茜がふと口にした。受験勉強を行う者が半分、あちこちの席でお喋りに花を咲かせる者が半分といった、騒々しい時間。
「なにがあ?」
ノートに英文を書き連ねていた夏実は、間延びした声と共に顔を上げる。茜は横顔を単語帳に落としたまま、ひらひらと手を振った。
「男の子でピアノ弾けるってさ、それだけで注目されるよ。ほっとかない子もいるんじゃない」
「ななな」
大袈裟に右手からぽとりとシャープペンシルを落としながら、夏実は声を引きつらせる。
「でも、でも私以外に告られたことないって言ってたよ!」
「あんたみたいなのがうろうろしてちゃ気が引けるよ。でも、今後は分かんないよ。それに家庭科の時間とか、けっこう人気なんだって」
「なんで」
「ほら、料理できるから。調理実習の時とか、一緒の班になりたい子が多いって五樹が言ってた。押し付けだろうけどさ」
「許さん!」
勢い込んで夏実は立ち上がった。握ったこぶしがぷるぷると震える。
「あいつは私以外に渡さないから!」
「渡さないって、別に夏実のもんでもないでしょ」
「茜ちんのばかー! ちょっと確認してくる!」
「こら、迷惑だからやめなってば!」
ここぞとばかりに教室に突入しに行こうとする夏実の袖を茜が引きずる光景は、まるでいつも通りのものだった。
「プレゼント?」
聞き返す茜に、夏実は神妙な面持ちで頷いてみせる。
「クリスマスね、ここで一発ぎゃふんと言わせたいの」
「そんなの言わせないの」
夏実の頬を人差し指で軽くつつきながら、茜はふむと考える。
「麻斗のことならさ、あたしより夏実の方がわかってるでしょ」
「そうでもなくてさー。考えても浮かばなくって。茜なら弟くんいるでしょ。男の子ってなにもらったら喜ぶ?」
「あのね、あの子まだ六歳だから。幼稚園児と同じ絵本もらったって、嬉しいわけないでしょ」
「ええー、だめかあ」
あからさまにしょんぼりする夏実は、ノートにぐるぐると小さな円を描く。小さな丸がぐんぐんと黒くなっていく。
「そう言われてもね。うーん。やっぱり音楽系じゃない? それしか思いつかないけど」
「だよねえ。でもなんだろ、メトロノームとか?」
「もう持ってるでしょ。そんなに何台もいるもんじゃないし。……楽譜とかどうなの」
「何の楽譜持ってて何が欲しいか全然しらないんだよね。被っちゃったらやだし。あー、全然わかんないー」
「ピアノって消耗品ないしね」
ぽいとペンを机に放り投げた夏実は天井を見上げ、ぱんと手を打つ。
「やっぱりわかんないや! 本人に聞くのが早い!」
「だから行くなって言ってるの!」
さっさと教室に突撃しようとする夏実の腕を、ため息をつきながら茜は掴むのだった。
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