異界に召喚されたら、着ぐるみが脱げなくなってしまった。

チョコレート

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異界召喚 ②

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 私はペンギンの着ぐるみごと召喚されたとか高校生やこの異界召喚をされた事などは分かったけど、私の現状はほとんど分からない事だらけだった。 

 まず、話が出来ない事が致命的な気がする……

「クワ……(何で話が出来ないのよ……)」
「ペンギンちゃん、大丈夫?」

 先ほどから、みんなが言い争いをしている中、私に話しかけてくれている子が一人だけいて、背の低い可愛らしい女の子だった。

 私の着ている着ぐるみは実はかなり大きくて、性能テスト時の計測時には全長2メートルちょっとあったので、私が着ぐるみのまま立ち上がると、この部屋にいる誰よりも背が高くなり、みんなを見下ろしている感じになっていた。

「クワッ、クワ……(大丈夫だよ、ってやっぱり話せないか……)」

 聞き取れるけど話せないって結構不便な気がする……というか私もそうだけど、ここが異界なら何で学生達は何で異界の人と会話が出来ているのかな?

 地球内ですら、日本から海外に行ったら違う言葉で会話が難しいのに、異界なら尚更聞き取る事も出来ない筈……

 私がそんな事を考えていたら、学生達と騎士達の話が激化していた。

「もういい! せっかく国外追放だけにしてやろうと思っていたが、ここで皆殺しにしてやる!」
「なっ! 勝手に俺達を殺したら勇者の智輝が黙っていないぞ……」

 騎士達のリーダーっぽい男性が学生達の話しにめんどくさくなったのか、腰に差していた剣を抜き学生達に向けてきた。

「さ、サラステン様、流石に勇者様の知り合いを皆殺しにするのはヤバいですよ……」
「むう……それなら奴隷具を人数分持ってこい。勇者にはこいつらが反抗してきたと言えばどうとでもなる」
「分かりました!すぐに持って来ます!」

 リーダーの指示により騎士の1人が部屋から急いで出ていった。

 奴隷具?

 なんか不穏なワードが出てきたけど、大丈夫なのかな?

「奴隷ってなんだよ……」
「このままだとヤバいんじゃないか?」
「これから貴様らには奴隷として国のためにこき使ってやるから感謝するんだな。まあ、奴隷になるのが嫌なら力ずくでこの部屋から出るのでも俺は構わないが……その場合は本気で殺すから、よく考えて動けよ?」
「「……」」

 学生達は勇者のクラスメイトだからわがままを言っても大丈夫だと思っていたみたいだけど、リーダーの騎士が本気で殺そうという気迫がビリビリと伝わってきたので、みんなの動きが止まり誰も発言をしなくなってしまった。

 まあ、普通に考えたら剣や防具を着込んだ騎士五人に、学生側が30人くらい居るからと言っても、素手で戦いを挑もうとする人は居ないだろうなと思った。

 もしかしたら全員で襲いかかれば騎士達を拘束することは出来るかもしれないけど、正面から襲いかかった時に学生側の数人は確実に騎士達に斬られるだろうなというのが分かってしまうので、私も含めて戦闘経験なんて全く無いから、誰も騎士に挑もうとは考えなかった。

「今更静かになっても遅いからな? 俺達がお前達を一方的に奴隷にしたと言われたら困るんでな、お前達の選択肢は奴隷となって反抗しない人形の様になるか、ここで死ぬかのどちらかだ……」

「ぼ、僕たちが覚えたばかりの魔術を使って反抗すればお前達くらいは何とかなる……」

 覚えたばかりの魔術?

 ちょっと気弱そうな少年はびくびくしながらも、良く分からない事を騎士達に言い出した。

「ふははははっ、お前達は馬鹿なのか? 我々が勇者様を召喚する際に抵抗された場合の対策を講じていないと思ったのか?」
「た、対策?」
「まあ、勇者様は物分かりの良い方だったから説明はしなかったが、この部屋には高レベルの魔術以外は無効化する結界が張られているのだよ。だから俺達は魔術を使えても、いくら才能があってもこの世界に来たばかりのお前達では魔術を使うことは出来ないのだよ」
「そ、そんな……でも試してみないと分からないじゃないか……」
「お前達は本当に馬鹿なんだな……今、この場に残っているお前達は才能が無いから我が国には要らないと捨てられたんだよ、だから才能の無いお前達がいくら魔術を試しても結果は変わらない。そして、魔術を試した瞬間に俺はそいつを殺す」

 うーん、これは完全に詰んだパターンじゃないのかな?

 それからしばらくしたら、先ほど部屋から奴隷具を取りに行った騎士が、大量のベルトの様な物を持って戻ってきた。

 あれが奴隷具と呼ばれる物なのかな?

「人数分の奴隷具を持って来ました!」
「よし、なら1人ずつ奴隷具を付けていけ。反抗するなら構わず殺せ」
「分かりました! それで、あそこにいる召喚に巻き込まれたっぽい謎の生き物はどうしますか? 部屋で殺すと後始末が大変な気がするのですが……」

 えっ? 謎の生き物って私の話?

「ああ、あの不思議な生き物か……暴れるようなら殺してしまおうかと思ったが、静かだからそのまま国外に放り出しておけ。外にいる魔獣達が勝手に食ってくれるだろう」
「分かりました!」

 それから騎士達は、学生に奴隷具を付ける騎士、監視する騎士、私を国外に捨てに行く騎士で別れた。

「よし、素直に付いてくるんだぞ!」
「クワ……(分かりました……)」
「いやに大人しい生き物だな……まあ、良いか」

 私は剣で刺されて確実に殺されたくは無いので、国外に捨てられた後にどうにか生き延びられるかもしれないとうチャンスに賭ける事にした。
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