カメリア・シネンシス・オブ・キョート

龍騎士団茶舗

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バクエット・ド・パクス(10)

他国に入っただけなのに(9)

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「ソレで、どうする?」

「もう夜ですしねえ……街を堪能しましょうか♪」

夜じゃあなくても、堪能していたような気がする。

「……街は…………って………するのですか?」

「良い質問です、ブレーズさん♪ 国には国に合った、街には街に合った楽しみ方があります」

「この国のこの街、というと……ネオンと退廃的な雰囲気から言って、半地下のダンスクラブ、とかですか? 楽しみ方は」

「良い線ですね~、ノワールさん♪」

そういう楽しみ方は正直、苦手なんだがな……と思うミサト。

「ですが、ソレは玄人の楽しみ方ではありませんよ♪」

「ああ、私もそう思う」

「なるほど……流石です、ミサトさん」

「まあ、まずは歩きましょう♪」


◇◇◇


一行はセントラルゲートを離れ、大通りにでた。
大通りの先には、天を突くように聳え立つタワーがある。
ノワールが口を開く。

「アレがU.J.Iの捜査局、FBUの本部ですね。この国の『旅団』の直接の担当も、FBUだとか」

「まさかアレにカチコミする気はないよな?」

「まさかぁ~♪」

どっちのまさかだ、とミサト。

「流石にお互いの旅団以外の無関係の方々を巻き込むワケにはいきませんからねぇ~」

「本心は?」

「その気は毛頭ないですが、結果的に巻き込まれたらご愁傷さま、ですねぇ」

そう述べるとにこやかに、カトリーヌは足をFBU本部へと向けた。


◇◇◇


足を向けて2分後、カトリーヌはタクシーを捕まえた。

「おぉ~」

思わずブレーズでさえ、聞き取りやすい声をだす。
飛行する車内から見るU.J.Iは、まさしく文明の一つの到達点の具現化と言えた。

下から見る景色と、多くの見ているものは変わらないはずだったが、受け取る印象は大きく異なっていた。

巨大ネオンは、どの角度や高さから見てもその映像が同様以上の迫力や衝撃を与えるよう、量子力学的にどの観測者に対しても観測結果が最大の効果となる表示を映写していた。
また、林立するビルのそれぞれの窓から垣間見える景色は、チルい隠れ家的な雰囲気のものや隠秘な性の顕現が覗けるもの、反面に家族とアンドロイドが寛いでいる光景や室内に大自然を拡張現実化しているものなどが混濁雑多している様子が確認できた。

「あんたら、観光客か?」

タクシーの運転手が話しかける。
助手席のノワールが答えた。

「ええ、バレバレですかね」

「何となく雰囲気も華やかだしなあ」

「この街の方がそうでは?」

「いやあ、ただケバいだけだよ。中は伽藍堂のハリボテさね」

「……運転手さんは、人間なんですか?」

「どう見えるね?」

「人間にしか……」

「ならそうだろうよ」

運転手はケタケタと笑う。

「この国じゃあ、その質問をする辺りが何とも観光客だ。人と機械の有り様なんて、もうぼやけちまってるさね。であれば、相手がどっちか決めるのは自分の印象に依存するしかない。何だっけ、チューリップだかチューイングだか言う……判断の仕方だよ」

「チューリングテスト?」

ミサトが話に入る。

「そうソレだ」

またも運転手はケタケタと笑った。
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