6 / 32
第1章
第6話『闇に浮かぶ影、カメラが暴く真実』
しおりを挟む「——『お前を見ているぞ』?」
園長の言葉が、静まり返った飼育員室に響いた。
えまは思わず背筋を震わせ、透子も腕を組んだまま、真剣な表情で赤外線カメラの映像を見つめている。
モニターには、肉眼では見えなかった"何か"が映っていた。
ぼんやりとした影——だが、確かに"そこにいる"と分かる。
「……これは、どういうこと?」
えまが小さく呟く。
「少なくとも、ただの動物の影ではなさそうね。」
透子が静かに答えた。
カメラに映るその影は、まるでえまが近づくのを待っていたかのようだった。
そして、えまが一定の距離に入った瞬間——影ははっきりとした形を成し、カメラの前に現れた。
「これは……動物?」
園長がぼそりと呟く。
「普通の動物なら、"人を認識してから姿を現す"なんてことはしないわ。」
透子が即座に否定する。
「でも……」
えまは不安そうに映像を見つめる。
確かに、"動物の気配"は感じる。
けれど、それが"普通の動物"なのか、"何か別の存在"なのか、えまには分からなかった。
「……もう一度、映像を戻してみていいですか?」
えまが頼み、園長が映像を巻き戻す。
モニターの中には、夜の動物園。
誰もいないはずのエリア。
えまがゆっくりと歩いていく姿が映っていた。
その瞬間——
「!!」
えまがホワイトタイガーの檻に近づくと同時に、影が揺らぎ、ふっと形を成した。
まるで、えまの存在に反応するように。
「これ……まさか……」
えまの目が見開かれる。
「何か分かったの?」
透子がえまの表情を覗き込む。
「もしかして、この影——"助けを求めてる"んじゃないでしょうか?」
「……助けを?」
園長が驚いたように呟く。
「普通、野生動物は人間の気配を察知すると警戒するか、逃げるはずです。でも、これは違う。」
えまは真剣な表情で言葉を続ける。
「この影は、私が近づくのを待っていたみたいでした。まるで、私に"気づいてほしい"みたいに……。」
「……確かに、違和感があるわね。」
透子が腕を組みながら呟く。
園長も無言で映像を見つめる。
「もし本当に、"助けを求めてる"としたら……この影の正体は、一体……?」
しんと静まり返る部屋。
映像の中では、揺らめく影がただ、そこに佇んでいた。
そして——
「確認しに行くしかないわね。」
透子がふっと息を吐いた。
「えっ……今からですか?」
えまが思わず聞き返す。
「当然よ。"何か"がいるのは確かなんだから、今のうちに調査するのが一番でしょ。」
透子は迷いのない目をしていた。
「でも、もし危険だったら……」
えまの言葉に、透子はクスッと笑う。
「大丈夫、あなたには"動物の声を聞く力"があるじゃない。」
えまは言葉を詰まらせる。
「……私の力、役に立ちますか?」
「もちろん。むしろ、今の状況には必要不可欠ね。」
透子が真剣な表情で頷く。
えまは不安を抱えながらも、深呼吸をして小さく頷いた。
「……わかりました。行きましょう。」
透子は満足そうに微笑む。
「決まりね。じゃあ、準備をして——影の正体を突き止めに行くわよ。」
かすかな夜風が、窓の外を吹き抜けた。
えまは静かに拳を握る。
(これは、ただの"動物の気配"なの? それとも——)
えまの胸に、強烈な違和感が残ったままだった。
(続く)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる