夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ

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第2章

第3話『ロイの警戒』

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 檻の奥で、ホワイトタイガーのロイがじっと身を潜めていた。

 普段なら悠然と歩き回っている彼が、今日はまるで「何か」を見張っているかのように、目を細めて一点を凝視している。

「ロイ……」

 えまがそっと声をかけるが、ロイはわずかに彼女に視線を向けるだけで、すぐに目を戻した。

 その目が向いている先は、檻の奥の暗がりだった。

「……何かいるんですか?」

 えまが不安げに透子に尋ねる。

「……何かを感じるの?」

 透子の問いに、えまはゆっくりと頷いた。

「……何かが"見てる"感じがするんです。すごく……冷たい目。」

「ロイが警戒してるなら、たぶん気のせいじゃないわね。」

 透子が腕を組み、険しい表情を見せる。

「監視カメラの映像を確認したほうがよさそうね。」


 ---

 ◆【監視カメラ映像の確認】

「これが、昨夜の映像です。」

 飼育員が監視カメラの映像を再生する。

 画面には、夜のシマウマエリアが映し出されていた。
 静かな檻の中で、シマウマたちは落ち着いて草を食んでいた。

 ──その時だった。

「ザッ……ザザッ……」

 昨夜、えまたちが聞いた**「見えない足音」**が録音されていた。

「この音……昨夜の?」

「間違いないですね……でも、姿は……」

 えまが息を呑む。

 カメラには何も映っていない。

 しかし、檻の中のシマウマたちは、一斉に顔を上げ、檻の奥に目を向けていた。

「……シマウマたちが、何かに気づいてる?」

「……もっと映像を進めて。」

 透子が促し、映像が早送りされる。

 ──その時。

「……止めて!」

 えまの声が響いた。

「ここ、今の……」

 画面には、シマウマたちが怯えたように後退していく様子が映っていた。
 その視線の先──

 檻の奥の暗がりに、ぼんやりと揺れる“何か”の影が映っていた。

「……これって……」

「……影? いや……これ、もっと……」

 影は、じわじわと檻の外へにじり寄るように動いていた。

「……まるで"何か"が、シマウマを狙っていたみたいですね。」



 えまが囁く。


 ---

 ◆【ロイの異変】

「……ロイの檻のカメラも確認できますか?」

「もちろんです。」

 映像が切り替わると、そこには檻の奥に身を伏せ、目を鋭く光らせるロイの姿が映っていた。

 > 「……この時間、ロイがずっと動いてなかったのは不自然ですね。」



「まるで、"何か"が近くにいたみたい……」

「巻き戻して、ロイの様子をもっと確認してみて。」

 映像を少し巻き戻すと、ある瞬間にロイが突然顔を上げ、檻の外に向かって牙を剥いた瞬間が映し出された。

「……ロイが吠えてる?」

「この時間って……」

「さっきのシマウマの檻に“影”が映った時と、同じ時間だ……」

 透子がつぶやいた。

「……つまり、ロイは“それ”の存在に気づいていた。」

「ロイは"それ"が何者かを知ってるんでしょうか?」

「……たぶんね。」


 ---

 ◆【えまの不安】

「透子さん……」

 えまはロイの映像を見つめながら、ぎゅっと胸を押さえた。

「……なんだか、嫌な感じがします。」

「ロイがあんなに警戒してるんだもの。普通じゃないわね。」

「でも……それだけじゃなくて……」

 えまは不安げに目を伏せた。

「……なんとなく、"それ"は……もっと近くにいる気がするんです。」


 ---

 ◆【次回予告】

 第4話『闇に潜むもの』
 ・監視カメラには映らない「何か」が、ロイを狙っている!?
 ・シマウマの消失と、ロイの警戒が繋がる……!
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