異世界の歩き方

月野片里

文字の大きさ
2 / 7
零章 始まりはドタバタで

壁ドン注意報

しおりを挟む
「何でこうなった…」
わたしは、突如目の前に現れた男によって壁ドンをされるというになっている。
どうしてこういう状態になったかというと長くなるが、学生時代からの親友の伊神 美由紀が「今日とても面白い事が起きるから」と、もう1人の親友の木本 亜由子と共に私の家から3駅離れた繁華街に連れてこられたせいだ。
彼女いわく「今日は私にとっての10年に一度有るか無いか分かない、とてもいい日!」との事だった。
何故その様な説明だけで彼女たちについて行ったか、他の人からは疑問に思うかも知れないが、美由紀の言う事は恐ろしいほど良く当たるからだ、特に面白い出来事がおきる事にかけては全てと言ってもいいほどに。
それで確かに面白い事とは起きた、例えばね1軒目のオシャレなBARの髭の似合うダンディなバーテンダーが酒瓶でつまずいてスラックスの股が裂けてパンt……、いや何でもない。
次の飲み直しに行った居酒屋で大物タレントが店の客に奢りまくったりと、こんな事が日付が変わるまで続くのだ。
なのに、
「今日の主役は貴方よ、特にこれから起きる事はとても重要な事だから、カベドンチュウニチュウイよ!」
と後半何か呪文みたいな事を言って現地解散にし、ポカンとしている私を残してそそくさと2人で駅と逆方向へ消えて行ったのだ。
まぁ、なんて言うか私もそれなりに楽しかったんだけど、置いていくってありえないですけどと悪態を付きつつ、駅のホームにあるベンチに座っている。
「今頃、あの2人はどこかしら?」
私は携帯を取り出しメールを送る。
#ピロン!#
「ん?誰だろう?……………………えっ!?」
私は慌てて辺りを見回す。
まさか、そんな事は無いはず……。
周りを確認すると誰もいない事に安堵するが。
「どうしたんだろう?」
私は、不思議そうに見つめながらまた携帯に目を向ける。
やっぱり夢じゃないよね?そうこうしているうちに終電がやってきたので乗り込み自宅に向かう。
最寄り駅についたが、やはり人影はない。
おかしいと思いつつも改札を出て壁に寄り掛かった途端。
ドンッ!! 突然耳元からの音に驚き前のめりになるが何とか踏みとどまる、そして頭を上げ前を向くと。
「あっすいません…………えっと……」
そこに立っていたのは身長180cmぐらいありそうな黒髪の男だった。
彼は整った顔立ちをしており、少し釣り上がった切れ長の目が特徴的な男性だった。
年齢は30歳手前といったところだろうか。
服装はスーツ姿だったが上着は手に持っていて、シャツは腕まくりをしてネクタイは外していた。
「ごめんなさい!大丈夫ですか?」
わたしは慌てて彼の下に行き声をかける。
「あぁ……大丈夫だ」
彼は一瞬だけ驚いた顔をしたが直ぐに表情を戻し返答する。
「本当に申し訳ありません……ちょっと考え事してたもので、お怪我は...」
私は、言葉えお言いきる前に気が付いてしまった、これ世にいう壁ドンというものでは……!? いやいやいや、流石にそんな漫画の様な事が起こるわけ……、あるかも。
「ごめん........」
彼はそう言うと気を失い、私によ身体を寄りかかってきた。
「えっ、ちょ、ちょっと!!」
私は慌てて彼を支えようとしたが、どうしようもない重さにそのまま後ろに倒れてしまう。
彼は私の上でぐったりとしていた。
一体何が起きているのか……? これは、いわゆるラッキースケベというやつだろうか……。
「おい!お前らそこで何をしているんだ!」
その時、突然背後から声をかけられ振り向くと警察官がいた。
「あっいや、あのこれには事情がありまして!」
私が必死で弁明しようとすると、彼はふと私の上にいる男を見て。
「あっ君達もしかしてカップル?」
「違います!」
私は即座に否定する。
「じゃあ、この男は君の知り合いかい?」
「はい……、まぁそうですけど……」
「なら話は早い、交番まで来て貰おうか」
「えぇ!?」
「何が"えぇ!?"だ」
「だって何もしてないですよ!?」
「君たち2人は今どういう状況か分かっているのか?」
「はぁ……?」
「はぁ……じゃない!この男が意識を失った後に君達は何をしたかと聞いているんだ」
「えっと……、あっ!壁ドンです!彼がいきなり私を押し倒してきたんです!きっと欲求不満なんですね……」
私は咄嵯に思いついた言い訳を言った。
「君はこの状況でふざけているのか?」
「いえ、本当です!現に彼は気絶していますよね?それに私の胸の上ですから!これぞまさに壁ドンじゃないでか!?」
私は食い気味に答える。
「あー……、分かったとりあえず署の方に来てくれ……」
警察官は面倒くさそうにしているのが見て取れる。
「えっ、ちょっと待って下さい!何でですか?」
私が焦っていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん!大丈夫?ごめんなさい、うちの姉が迷惑をかけて」
そこには先程別れたはずの親友の妹、伊神 愛理沙の姿があった。
「あら、愛理沙お帰り、ちょっと今大変な事になってるけど大丈夫よ……」
「あっそうなんだ、良かった……、ほらお兄ちゃん早く立って!ごめんねお姉ちゃんが色々……」
彼女は私の上でぐったりとしている男を引っ張り起こす。
すると彼はゆっくりと立ち上がり辺りを見渡した。
「んっ、ここは……?」
「やっと気が付いた、帰るよ」
彼女がそう告げると、彼は私の顔を見て、それから何故か自分の手を眺めていた。
「いや、これは夢か……?」
「何言ってるの、現実だよ、それともまだ酔っ払ってるの?とりあえずここから出るよ」
彼は少しの間考え込むと。「俺はどうなって……、そうかお前に助けられたのか、ありがとう、そしてすまない、記憶が無いんだ」
彼は冷静になったのか口調を変え私に向かって謝罪をした。
「えっと……、はい、そうですね……」
私は彼の言葉を聞き、一瞬で顔が赤くなったのが分かる。
「本当にすまない、とりあえずこの場から逃げたいのだが……、タクシーを捕まえよう」
彼がそう言うと、私は思わず「あっ、あの!良かったら私の家近いんで、そこで落ち着きませんか?」と言った。
何でそんな事言ったかは分からない、いやもしかしたら彼にまた会えるかもしれないと思ったのかも……。
彼は私の提案を承諾してくれて2人で私の家へ向かった。
私は今、人生の中で一番心臓がバクバク言っている気がする。
それは、彼が家に着いて、玄関に入って、靴を脱いで、洗面所に行って、うがいをして……という一連の動作を見ている時、ふとした時に私は思ったんだ。
もし私が彼を押し倒したら、どうなるのだろうか……? 私は今まで恋愛らしい恋愛をしてこなかった。高校で告白され、それを断るのが面倒くさく、流れで付き合い始めてしまった相手とのキスも、相手の家で親が帰って来るまでの時間を潰す為に一緒に観た映画の中のカップルがしていた行為も、何の感情も出なかった。
しかし、私が今したいと思っている事は、恐らくそれらと同じ様に感じてしまうだろう。
そんな想像をしていると、私と彼はリビングにいた。
「ホントに申し訳ない。あなたにとても迷惑をかけてしまったようだ、俺の名前は、真行 和幸といいます。」
と彼...和幸さんは言い切ると深々と頭をさげてきた。
「いえ!全然大丈夫ですよ!それより、とりあえずお風呂入りませんか?汗かかれたでしょう?」
「あー……、ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えてお借りします。……えっと、バスタオルだけ貸してもらえませんか?」
「あっ!ごめんなさい、そうですね」
私は慌てて自分の部屋に行き、大きめのバスタオルを取ってくる。
「これを使って下さい」
私は少しドキドキしながら渡した。
彼は「すみません」と言い受け取るとお風呂場の方へ歩いていった。……
彼は、お風呂から出た後、自分の服と私のTシャツを交互に着ていた。私は少し顔が熱くなったのを感じた。
彼は私が用意したお茶を飲み一息ついた後、少し真面目な顔をして私を見た。
「改めて自己紹介させてもらいます。真行 和幸と申します。この度は本当にご迷惑をおかけしました。」
「あっ、いえ、気にしないでください。それよりも体調の方は大丈夫ですか?」
「はい、何とか大丈夫そうです。ただ先程までは記憶がなかったのですが今は少し思い出せています。」
「それは良かった。」
「えぇ、本当にご迷惑お掛けしました。」
「いえ、そんな!私は大丈夫ですよ」
「あの……、先程から気になっていたんですが……あなたは一体……?」
「あっ!すいません!まだ名乗ってもいませんでしたね。私は、媛河 永奈といいます。」
これが、私たち真行和幸と媛河永奈の出合いでありこれから続く変わった物語の始まりである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...