幼馴染の御曹司と許嫁だった話

金曜日

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トドメを刺してと君は言う【中編】

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「爽っ!!!?嘘っ……爽っ!!!ねぇっ!!!どうしたの!!?」



部屋の中央でスーツのまま倒れ込んでいた爽に駆け寄ると、真っ青な顔でダラダラと汗を流している。頬がほんのりピンク色だ。


これは……どう考えたって熱がある。


「爽!!?ねぇ、大丈夫!?」
「……あ、……き?」


うっすらと目を開けた爽の瞳は、めちゃくちゃ潤んでいて……思わず、色っぽいな…なんて考えてしまう。

って…
いやいやいや、こんな時なのに何考えてんだ俺は!!!!


「すぐ救急車呼ぶから待ってて!」
「い、いいっ……呼ぶなっ……」
「でもっ」
「ほっときゃ治る…から、救急車は…やめて、くれっ…」
「爽……」


おでこに手を当てると、信じられないくらい熱い。苦しそうな爽の顔に、胸がズキっと痛む。

救急車がダメならどうすれば……!


俺は少し考えて、とりあえず爽をベッドに寝かせることにした。……だけどこれが、思ったよりずっとハードだった。



「爽…!歩ける?とりあえずベッドに行こう?」
「……ん」


俺と爽じゃ、身長差も体格差もエグすぎて担ぎ上げることなんてとても出来ない。せいぜい肩を貸すのが精一杯で、俺は必死に爽の身体を引っ張り上げて、なんとかベッドにたどり着いた。

ベッドに横たわらせたはいいが…このままじゃスーツがシワになってしまうし、なにより汗びっしょりのワイシャツを早く脱がせなきゃダメだ。


「爽…、着替えさせるけどいい…?」
「……」


もう、まともに返事もできないようだ。

許可なくこんなことをするのは、いくら仲が良くてもどうなんだろ…と思いながらも勝手にクローゼットを開け、中からパジャマを取り出す。

下着は流石に脱がせられないから、そこは元気になったら自分で着替えてもらおう。


「……脱がせる……ね?」


ジャケットを脱がせ、ワイシャツのボタンをゆっくり外していく。緊張で指がもつれて無駄に時間がかかってしまう。

落ち着け…落ち着け…

ドキンドキンと、自分の心臓の鼓動が耳元で聞こえてくるような錯覚に陥る。
ゆっくりとあらわになっていく、爽の逞しい肉体に…ダメだとわかっていながら目が逸らせない。だって、爽の身体めちゃくちゃ綺麗なんだもん。筋肉が身体全体に均一についていて、腹筋もバキバキに割れている。男が憧れちゃうような…、そんなかっこいい身体だ。ヒョロヒョロでムニムニの俺とは真逆。羨ましすぎる。

………って、いやいやいやいや!!!
こんな、変態みたいな目で友達を見ちゃダメだってば……!!
正気になれよ俺っ!!!


最後までボタンを外し終え、素早くパジャマで身体を覆う。ほんっとに目に毒だよ…!!


次は、下半身だ。


そっと、ベルトのバックルに手をかける。
人のベルトを外すなんて生まれて初めてだ。爽のためにやってることだけど、なんか、めちゃくちゃえっちなことしてる気分になるなぁ……



なんて思っていたら、





いきなり目を開いた爽に、ガッと手を掴まれた。






「………っ、あ…き……」
「爽っ…!?」
「……あとは、自分でっ……着替えるからっ…水、持ってきてくれる?」
「……え?でもっ」
「いいからっ……!これ以上……触られたらっ…変な気……起こしそう…なんだよ、俺っ」
「へ、変な気って……?」
「お前…っ触り方エロいんだもん…っ」
「えっ…エロ!!!!?」
「ふっ………、冗談…だよ、……早く、行って」


熱で顔を真っ赤に染めた爽にそう告げられて、俺まで真っ赤になってしまう。
こんな時まで冗談言うなんてっ…!!爽ってほんと意地悪っ!!!



俺は慌てて部屋から飛び出す。

まだ心臓がドキドキいっていて、ふいに廊下の鏡に映った自分の顔に驚いた。



え……?
俺、こんな……
女の子みたいな顔してたっけ……?
いや、そりゃ女顔の自覚はあったけど…それにしても……こんな、

これじゃあまるで……そう、まるで……

爽に………



……って、こんなこと考えてる場合じゃなかった!



バタバタと走ってキッチンに入ると、勢いが良すぎて危うく転びかける。

落ち着けよ!!!

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、素早くコップに注いでいく。




これからどうしよう…

まずは病院に連れていくべきだよね…?
でも俺1人で爽を連れ出せるだろうか。ベッドにあげるだけでも一苦労だったのに…どう考えたって無謀だ。俺がもっと背が高くて、体格が良かったらこんなこと考える間もなく病院に行けたのに。

女の子に間違われることに嫌悪している癖に、男としての力も無い。

俺って……どこまで中途半端なんだ。

本当に自分が嫌になる。





少し考えて、俺はお義母さんに電話をかけることにした。こういうときは、大人を頼った方がいい。







プルルルルップルルルルッ…


ガチャッ


『キャーーーー!!!暁人くーーんっ!!!どうしたの!?』
「あ、あのっ…!」
『暁人くんから電話くれるなんて嬉しいわぁ~!もしかしておめでたかしら!?』
「ハァ!!!?…お…お義母さん…相変わらずですね…!」
『うふふっ…あらぁ?違った?』
「全っ然違います!!!」


この人、昔っからどこまでが冗談でどこまでが本気なのか全然わかんないんだよな…
うちの母親とテンションがソックリ。そりゃ仲良くなる訳だよ。


「実は、爽が熱を出しちゃって…!これから体温測らせようと思ってたんですけど、さっき触った感じ…多分39℃超えてると思います…それで、」
『あらっ!!!!わかったわ!!!!私に任せて!!!』
「えっ!?」
『あの子、昔から定期的に高熱出すのよ!だから…暁人くんは慌てずに爽のそばにいてあげてくれる?』
「は…はい、え…そ、それだけですか…?」
『大丈夫よ!お義母さんにまっかせなさい!』
「えっ?」
『ちょ~~~っと待っててね!』


ブツッと突然電話が切れて、俺は呆然と携帯の画面を見つめる。



待つ…ってことは、お義母さんここに来るのかな…?

爽が定期的に高熱出すなんて全然知らなかった。小さい頃は割と頻繁に会ってたのに…元気な姿しか見たことがない。



俺……爽のこと……

何にも知らないんだな……




グルグルと負の感情が湧き出てきて、自分で自分が嫌になる。こんなこと…考えたって仕方ないのに。


…それより、
早く爽にお水持ってかなきゃ。
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