幼馴染の御曹司と許嫁だった話

金曜日

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トドメを刺してと君は言う【中編】

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「あのっ…勝手に入っていいんですか?」
「いーよ、どうせここの先生いつもいねぇから」
「……そう、なんですか……?」
「今消毒してやるからちょっと待ってろ」


結城さんは、勝手知ったるという雰囲気で消毒とガーゼを用意し始める。


「あの……さっきは、ありがとうございました…!!結城さんがいなかったら…俺、」
「ああ、別に…つーかお前その顔なんだからもっと気を付けろよ…かわすの下手すぎ」
「す、すみません…」
「はぁ~……あぶねぇなぁ…」


結城さんは呆れた…という顔で俺を見ながら、消毒を膝の傷に吹きかけた。ちょっとしみる。


「まぁ、お前みたいなタイプ嫌いじゃないからいいけど……それに、余所者に好き勝手されんのも癪だしな…」
「……余所者?」
「……ああ、アイツらうちの生徒じゃねーよ」
「えっ!?そーなんですか!?」
「そーだろ、どう見たって…あんなアホ面どもがうちの大学入れる訳ねぇじゃん…大方、法学部のイカれたヤリサーに入ってる外部のFラン大学生ってとこだろーな…あんなのうちの敷地に入れんなって話!迷惑極まりねーわ」
「法学部……ヤリサー……?」
「セックス目的のバカサークルだよ」
「セッ……!?」


いきなりの衝撃の単語に俺は顔を真っ赤にして、結城さんから目を逸らす。

ヤリサーって…単語は知ってたけど…、そういう意味だったんだ…!!


「………俺、マジでお前が心配になってきた」
「…え?」
「絶対守れよ?」
「え?何をですか…?」
「貞操」


結城さんは俺の手当てを終えると、これでよし!と呟いて大きな絆創膏を貼ってくれた。


「……あの、結城さんは…」
「要でいーよ…敬語もいらない」
「えっ……」
「俺、お前のこと気に入った…!…暁人って呼んでいい?」
「……!えっと……、うん!」


綺麗な顔で微笑む要に、ドキッとする。ギャップ凄すぎるでしょこの人…!!!

っていうか……もしかしてこれ……

俺、友達できるチャンスなんじゃ……!


「か、要…?」
「…ん、なに?」
「………あ、呼んでみただけ…」
「……お前、無意味にかわいいのやめろよ…俺ですらクラっときたわ」
「……?」








俺たちは医務室を後にすると、適当な空き教室を見つけて一緒に昼ごはんを食べることにした。


要は話せば話すほど、最初の印象からはかけ離れたとても真面目な人で…話も合うし、気も合うし、出会えた奇跡に思わず感謝したくなってしまうくらいだった。


「エッ!?要のお母さんって"結城 可憐(ゆうきかれん)"なの!?」
「なんだ、お前知ってんの?」
「知ってるよ!!!!めちゃくちゃファン!!!今はハイブランドのデザイナーさんになっちゃったから俺じゃあなかなか手出せなくなっちゃったけど…俺昔っから要のお母さんの作る服大好きだよ!!」
「へー…おふくろが知ったら泣いて喜びそー」


要のお母さんである結城 可憐さんは、小さい頃から俺の憧れの女性だ。若い時はモデルさんだったらしいけど、元々デザイナー志望だったみたいでモデル業は早々に引退してデザイナーに転身したっていう変わった経歴の持ち主。
彼女の作る服って、ユニセックスのものが多くて、俺みたいなどっちつかずな見た目の人間からしたら…革命だったんだよね。俺、男らしい服装は似合わないし、だからって女性ものの服は着たくなかった…そんな時に、可憐さんの服に出会ってああ~こういう選択肢もあったんだぁ…ってすごく嬉しくなったのを覚えてる。

"誰かに似合う服"じゃなく、"誰でも似合う服"を作ってくれる……それが結城 可憐だ。

そんな大好きな女性の息子に出会って、助けてもらえた上に友達になれるかもしれないなんて…運命感じちゃうよね!?


「そうえば要…顔似てるね…!お母さん元モデルさんだもんね!どうりで要も美人な訳だ…!」
「そこまで知ってんのかよ……つーか、お前には言われたくねーよソレ」
「え?」
「俺は、お前の方が美人だと思うけど?」


要に顔を覗き込まれて、ちょっと照れる。フワッと花のような艶っぽい香りがして、匂いまで美人なんだ…なんて、頭の悪ーい思考が脳内を巡る。


「ってかさ、俺もデザイナー志望なんだ」
「え?そーなの!?」
「うん…だから、お前俺の作った服着てくんない?」
「…………は?」


要の発言に、頭の処理が追いつかず数秒時が止まる。


「…え?………ええっ!!?俺がっ!?」
「そ、俺もうすでにデザインから起こして服作りやってんの…でも着て欲しい相手がなかなかいなくてさ……やっと見つけた!俺お前に着て欲しい!」
「はぁ!?なんで俺!!?」
「俺のブランドイメージにめちゃくちゃピッタリだから!!」


高らかに宣言してニッと笑う要に、驚いて俺は口を開けて再び固まってしまう。
そんな大切な服……俺なんかに着て欲しいなんて、さすがに物好きすぎるでしょ!!!


「暁人!俺は将来、絶対に母親を超えるデザイナーになる!!大学卒業後にブランドを立ち上げる用意もしてる!!その為に今、経営学部で勉強してんだ!!」
「は、はぁ…」
「お前がいれば俺、絶対もっといい服作れると思う!!!こんな創作意欲が掻き立てられる奴に出会ったの初めてなんだ!!!」
「……えっと…それは…俺が、要の役に立つってこと?」
「すっげー立つ!!!だから、俺の服着てくれ!!!!」
「じゃあ……言うこと聞いたら……」
「……ん?」


俺は一度俯いて小さく深呼吸してから、もう一度要を見上げる。


「俺と、友達になってくれる…?」
「……え?」
「……だ、だめ?」
「っていうか………もう、友達になったつもりだったわ……俺」
「…………わぁ」
「何その反応?」
「………喜びの……わぁ?」
「…ブハッ!!!!やっぱお前、すっげーおもしれーな!!!!」


要はひとしきり爆笑した後俺の頭を撫で、よろしく暁人と一言呟く。俺は120%の笑顔で要を見上げ、うん!と元気に返事をした。

心の底から嬉しい……!

俺は改めてこの出会いに感謝してしまった。
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