幼馴染の御曹司と許嫁だった話

金曜日

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バイプレイヤーズロマンス【中編】

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あれから約5ヶ月。
そろそろ本気でアプローチをかけてもいい頃だとは思っている。

…だけど、現状僕は楓さんの恋愛対象ですらない気がしてならない。それもそのはず…僕はまだ高校生なのだから。大人の彼からしたらまるっきり子供扱いだ。

…さて、どうしたものかな。

入荷したての本を検品しながら少々考え込む。すぐにでも行動したいのは山々だけど…少しでも下手打ってこの人に嫌われるのは絶対ごめんだ。だけど、年上でしかも同性の口説き方なんて…その辺の恋愛指南書には載ってないでしょ?
世間一般の"普通"からかけ離れた現状に文字通り頭を抱える。


「ねぇ旭くん!今日ね新しいコーヒー豆仕入れたの!開店前に味見してみない?」
「え、いいんですか!?」
「うんっ!今準備するね!」
「うわっ、すごい嬉しいです…!なんの豆ですか?」
「えっへへ~!バレンタインデーブレンドだよ!」


ニコッと花が咲いたように笑う綺麗なお兄さんに、思わず仰け反りそうになった。クッソかわいい。惚れた欲目を除いたって、楓さんはめちゃくちゃかわいい。かわいすぎる。


笑う時に目元に寄る皺が好き。

ツルツルでサラサラの艶っぽいロングヘアが好き。

居てくれるだけで周りを幸せにするあったかい雰囲気が好き。

見るもの全てに好奇心旺盛でどんなものも新鮮に楽しめるその感性が好き。




僕は……あなたが、世界で一番大好きだ。


だから楓さん……


頼むから、僕に振り向いてくれませんか。




荒れ狂うような僕の心の中の葛藤なんて知りもしない楓さんは、いつもと変わらない表情でコーヒーを淹れている。朝から好きな人が淹れてくれるコーヒーが飲めるなんて…ここは天国か。


「はいっ!どーぞ!」
「…ありがとうございます」


楓さんから手渡されたコーヒーカップを握りしめ、そっと口に運ぶ。

うん、おいしい……
僕の好きな人は……コーヒーの神様だ。


「これすっごくおいしいです!」
「だよね!俺もこれすごいすき!」
「なんか、チョコレートの風味…しますね」
「えっわかるー!?そうなの!ビターチョコレートって感じだよね!!バレンタインデーブレンド最高!!さっすが旭くん…味覚も超一流~!」
「あはっ、褒めすぎです」


ああ、かわいい。
いつも穏やかでふわふわなのに、テンション上がるとウキウキのオーラ全開でちょっと早口になるとことか…すっごいかわいい。

…すっごい好き。


「でもそっかバレンタインかぁ…もうそんな時期なんですね…」
「そうそう~早いよねぇ」
「お店でなにかする予定なんですか?」
「あーうんそう、もちろんこのコーヒーも出すし、バレンタインが題材の本のコーナー作ったり…あとは、簡単なチョレート菓子とか用意しよっかなって」
「へぇ…いいですね!」
「でしょ~?でもね…当日はうち定休日だからさ…」
「あ…そういえば…そうですね」
「タイミング悪いなぁ……バレンタインにぼっちとか…独り身のおじさんとしてはちょっと辛いとこだよね~!」


楓さんはクスクス笑いながら言うけど、"おじさん"なんて…この人から一番遠い言葉だと思う。アラサーには絶対見えないもんな。


バレンタイン……か。
流すとこだったけど……よく考えたら、好きな人にアタックするには絶好の機会じゃないか…?

これを逃す手はない…!


「あの……楓さん」
「んー?」
「バレンタインなんですけど、良かったら僕と…」





バンッ!


「おっはよーございまぁーすっ!!!!!!」


僕も楓さんも、突然の声に驚いて振り向く。従業員入口の扉の前には…案の定大好きな兄が立っていた。
…大好きだけど……、今は本当に…間が悪い。


あきちゃんの顔を見た瞬間、楓さんはニコッと笑う。


「あきちゃんおはよー!今日も早いね?あきちゃんの出勤時間…まだ30分くらい余裕あるよ?」
「えへ~2人に早く会いたくて早めに来ちゃった~!」
「えー?なにそれかわいい~好き~」
「ふへへ~俺も楓さん大好き~」


ヘラヘラ笑いながら両手を握り合う2人に隣で笑ってしまう。全くもう…どっちもクソかわいいっつの。

爽くんが見たら絶対に嫉妬しそうな距離感で話す2人を見守りながら、小さくため息をつく。

…まぁ、いっか。今日は閉店までここにいるんだし…楓さんを誘うチャンスはきっとある。


「…?あれー?旭…なんかニヤけてない?」
「え?」
「あれ、ほんとだー!旭くんのそんな表情初めて見た!レアだね!」
「うん!レアだー!!なになに!?なに考えてたの!!?」
「ちょっとあきちゃんやめてよっ!弟をからかわない!っていうか…2人の方がニヤニヤしてない!?」
「え~だって旭をからかえるチャンスなんて滅多にないもーん!」
「旭くんって…隙ないもんね!完全無欠感は樋口以上じゃない!?」
「俺もそう思うー!爽って結構マヌケだもん!」
「あはっ!あきちゃん言うねぇー!!」


ケラケラ笑い出す2人に釣られて僕も思わず吹き出す。…ごめんね、爽くん。


「さ、そろそろお店開けよっか!あきちゃんは着替えておいで!旭くんは…看板出してくれる?」
「「はーい!」」




この時の僕は……

まさかこの日の夜勢いで告白してしまうなんて、




夢にも思っていなかった。


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