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第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 10
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「イテテテ……クソッタレ! 誰がお前の言う事なんか――」
「聞かなくてもいいぞ。その代わり、背中に風穴が少々空くかもしれないけどな」
レンタロウは無慈悲に笑ってみせ、懐に手を入れる。そこに拳銃は仕舞われて無いのだが、スリの男にはその仕草だけで十分、幻の拳銃を見せる事が出来た。
「ヒッ! お、お前まさかジャンク・ホロウズの……!」
「ぶつかる相手をちゃんと選ぶべきだったな」
「チクショウ……分かったよ、協力するから命だけは助けてくれ……」
遂にスリの男は完全に戦意を喪失させ、観念した。
「分かりゃいいんだよ。それに命は取らないし、協力をしてくれたらちゃんと報酬は渡す」
レンタロウは懐に入れていた手を出して、更に両手を挙げて丸腰である事をアピールする。すると今までの緊張感とのギャップにより、スリの男は心底ホッとし、更にレンタロウへの信頼に似たような感情が湧いて出てきた。
「アンタ……名前は?」
「俺はフブキ レンタロウだ。お前は?」
「スジカイ キンジ……」
「それじゃあスジカイ、さっき見せた写真の男をこれから捜して欲しい。ここで暮らしてるアンタなら、俺達なんかよりよっぽど詳しいだろ」
「そりゃあそうかもしれねぇが……でもフブキの旦那よぉ、ここには何百万人って人が住んでるんだ。そこからたった一人を捜し出すなんてなかなか無茶な事だぜ?」
「それを承知の上で捜すんだよ。だから報酬を出すって言ってるんだ」
「そ……そうだよな……考えてもみりゃあ、そりゃそうだ」
よもや完全に格下となったスジカイは、上位のレンタロウの意向を汲むため、そう自分に言い聞かせた。
「とりあえず俺達は大通りを中心に捜すから、スジカイ、お前は路地の方を捜してくれ」
「お……俺が路地ですかぇ……」
「こっちはオーナーなんだから楽な方探すのは当たり前だろ?」
「そ……そりゃそうかもしれやせんが……そ、そうだ!」
「今度は何だよ」
「報酬ですよ! もしフブキの旦那達が先に見つけたら、その時俺の報酬はどうなるんです? まさかタダ働きなんて事にはならないでしょうね!?」
そう言って差し迫って来るスジカイを、レンタロウは鬱陶しそうに手で払った。
「うるせぇなぁ……勿論その時も報酬は払う。ただしその時の報酬は3万リョウだ」
「た、たった3万!?」
「その代わり見つけた時は10万、捕らえて連れて来た時には20万にしてやる」
「に、に、20万!!」
「これでも不服か?」
「ぜんっぜん! むしろそんなに貰っても良いんですかい?」
「まあな」
コッパー街に住む住人の平均月収が約12万リョウである事から、20万はスジカイにとってスキミングで得るよりもずっと高額な報酬だった。
しかしレンタロウにとっては200万の修理代がたった20万で浮く、安い買い物である事に違いは無かった。
「そうだフブキの旦那、その男の写真ちょっと貸してくだせぇ」
「ああ。だけどその写真は俺達が使うからな?」
「分かってやす。だからコイツで撮っておくんですよ」
スジカイが取り出したのは、掌に丁度収まるくらいの平べったい板状の電子端末であり、そのカメラ機能で写真の写真を撮った。
「お前、それスマートフォンって奴じゃねぇか。随分と古いもん持ってるなぁ」
「ヘぇ。実は俺、こういう旧世代のデジタルガジェットって奴を集めるのが趣味なんでさぁ」
「ほう」
「お恥ずかしい話、最初にこのスマートフォンってのを闇市で購入してからすっかり嵌っちまいまして。だけど表の市場じゃ滅多にありやせんし、闇市でも動く物は珍しくて高額なんですが、それでも時々あっては買い集めてしまいやして……そうやってる内に、今のようにスカンピンになっちまいやした。しかも周りからはガラクタ集めだってバカにされる始末でさぁ……」
「そうか……でもそういう物を集めるっていうのは決して悪いことじゃ無いと思うぞ」
「そ……そうですよねぇ! コイツがあったからこそ、今のナノデジやらがあるんですから、コイツはガラクタなんかじゃなく、歴史的価値のある物なんでさぁ!」
「ああ。だけど人から盗んだ金でそれらを買ってちゃ、表立ってその主張は出来ないがな」
「ヘッヘッ、流石フブキの旦那! ソイツは痛いとこを突かれやした!」
「…………」
「わ、分かりやした。金輪際、盗みはもう止めにいたしやす……」
「分かればよろしい」
無言の圧力でスジカイを更生させたレンタロウは、貸した写真を取り上げ、懐に直し込んだ。
「聞かなくてもいいぞ。その代わり、背中に風穴が少々空くかもしれないけどな」
レンタロウは無慈悲に笑ってみせ、懐に手を入れる。そこに拳銃は仕舞われて無いのだが、スリの男にはその仕草だけで十分、幻の拳銃を見せる事が出来た。
「ヒッ! お、お前まさかジャンク・ホロウズの……!」
「ぶつかる相手をちゃんと選ぶべきだったな」
「チクショウ……分かったよ、協力するから命だけは助けてくれ……」
遂にスリの男は完全に戦意を喪失させ、観念した。
「分かりゃいいんだよ。それに命は取らないし、協力をしてくれたらちゃんと報酬は渡す」
レンタロウは懐に入れていた手を出して、更に両手を挙げて丸腰である事をアピールする。すると今までの緊張感とのギャップにより、スリの男は心底ホッとし、更にレンタロウへの信頼に似たような感情が湧いて出てきた。
「アンタ……名前は?」
「俺はフブキ レンタロウだ。お前は?」
「スジカイ キンジ……」
「それじゃあスジカイ、さっき見せた写真の男をこれから捜して欲しい。ここで暮らしてるアンタなら、俺達なんかよりよっぽど詳しいだろ」
「そりゃあそうかもしれねぇが……でもフブキの旦那よぉ、ここには何百万人って人が住んでるんだ。そこからたった一人を捜し出すなんてなかなか無茶な事だぜ?」
「それを承知の上で捜すんだよ。だから報酬を出すって言ってるんだ」
「そ……そうだよな……考えてもみりゃあ、そりゃそうだ」
よもや完全に格下となったスジカイは、上位のレンタロウの意向を汲むため、そう自分に言い聞かせた。
「とりあえず俺達は大通りを中心に捜すから、スジカイ、お前は路地の方を捜してくれ」
「お……俺が路地ですかぇ……」
「こっちはオーナーなんだから楽な方探すのは当たり前だろ?」
「そ……そりゃそうかもしれやせんが……そ、そうだ!」
「今度は何だよ」
「報酬ですよ! もしフブキの旦那達が先に見つけたら、その時俺の報酬はどうなるんです? まさかタダ働きなんて事にはならないでしょうね!?」
そう言って差し迫って来るスジカイを、レンタロウは鬱陶しそうに手で払った。
「うるせぇなぁ……勿論その時も報酬は払う。ただしその時の報酬は3万リョウだ」
「た、たった3万!?」
「その代わり見つけた時は10万、捕らえて連れて来た時には20万にしてやる」
「に、に、20万!!」
「これでも不服か?」
「ぜんっぜん! むしろそんなに貰っても良いんですかい?」
「まあな」
コッパー街に住む住人の平均月収が約12万リョウである事から、20万はスジカイにとってスキミングで得るよりもずっと高額な報酬だった。
しかしレンタロウにとっては200万の修理代がたった20万で浮く、安い買い物である事に違いは無かった。
「そうだフブキの旦那、その男の写真ちょっと貸してくだせぇ」
「ああ。だけどその写真は俺達が使うからな?」
「分かってやす。だからコイツで撮っておくんですよ」
スジカイが取り出したのは、掌に丁度収まるくらいの平べったい板状の電子端末であり、そのカメラ機能で写真の写真を撮った。
「お前、それスマートフォンって奴じゃねぇか。随分と古いもん持ってるなぁ」
「ヘぇ。実は俺、こういう旧世代のデジタルガジェットって奴を集めるのが趣味なんでさぁ」
「ほう」
「お恥ずかしい話、最初にこのスマートフォンってのを闇市で購入してからすっかり嵌っちまいまして。だけど表の市場じゃ滅多にありやせんし、闇市でも動く物は珍しくて高額なんですが、それでも時々あっては買い集めてしまいやして……そうやってる内に、今のようにスカンピンになっちまいやした。しかも周りからはガラクタ集めだってバカにされる始末でさぁ……」
「そうか……でもそういう物を集めるっていうのは決して悪いことじゃ無いと思うぞ」
「そ……そうですよねぇ! コイツがあったからこそ、今のナノデジやらがあるんですから、コイツはガラクタなんかじゃなく、歴史的価値のある物なんでさぁ!」
「ああ。だけど人から盗んだ金でそれらを買ってちゃ、表立ってその主張は出来ないがな」
「ヘッヘッ、流石フブキの旦那! ソイツは痛いとこを突かれやした!」
「…………」
「わ、分かりやした。金輪際、盗みはもう止めにいたしやす……」
「分かればよろしい」
無言の圧力でスジカイを更生させたレンタロウは、貸した写真を取り上げ、懐に直し込んだ。
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