仕事人達のグルメ事情〜新世界食放浪記〜

小倉 悠綺(Yuki Ogura)

文字の大きさ
36 / 36
第3話 カレーなる爆走のナギサハイウェイ

第3話 カレーなる爆走のナギサハイウェイ 08

しおりを挟む
「発砲許可が出るという事は、この周囲一帯が危機対処警報の適応範囲になるという事だから問題無い」
「危機対処警報ってなんッスか?」
「何って……警察学校で習っただろう?」
「憶えてないッス」

 イチモンジの清々しい程の無知っぷりに、オキナミは呆れて溜息を吐いてしまった。

「まったく……君は先程、サイレンが鳴っているパトカーに対して一般車両が自然と道を開いてくれた光景を見ただろ?」
「見たッス」
「あれはサイレンが鳴った事で、自動車の自動運転システムが緊急車両が通過する事を検知して避けたんだ。それと同じで、危機対処警報を発令すると、一般車両はそれを検知し、その対象区間を避けて動いてくれるようになる。だから発砲をしても一般車両に当たる事は無いし、タイヤをバーストさせて横転させても距離を取っているから二次災害が起こる事も無い」
「へぇ~……やっぱり最近の自動車は頭が良いッスねぇ」
「AIは日々日進月歩だ。しっかり勉強しないと置いて行かれるぞ」
「ウッス、精進します……」

 イチモンジが先輩からのアドバイスに耳を傾けている間にも、応援のパトカーは次々と集まり、遂に後方の車線全てがパトカーで封鎖され、夜の暗さも相まって赤い光の壁が出来上がっていた。

「これで奴らも四面楚歌……あとは許可が出れば蜂の巣だ」
「蜂の巣ッスか……ん?」

 するとイチモンジは運転席と助手席の間に配置しているエアディスプレイに映るマップ情報を見て首を傾げた。

「どうした?」
「いや……多分自分の思い過ごしだと思うッスけど」
「言ってみなさい」
「この先ナギサブリッジを越えたらスイモンキョウのインターチェンジがあるじゃないッスか?」
「ああ、確かにあるな」

 オキナミはエアディスプレイを見ながら答える。

「しかしそれがどうしたんだ?」
「まあその……後方は固められても、先にあるスイモンキョウから下道に逃げられる可能性があるんじゃないかと思ったもんッスから」

 イチモンジが心配の種を吐露すると、オキナミはそれを聞いて笑ってみせた。

「フッフッ……何の心配かと思いきや。応援を出した時点でインターの封鎖などやってるに決まってるだろう? 我々もバカでは無いのだからな」
「……何かフラグっぽいッスね」
「フラグ?」
「一応確認してみたらどうッスか?」
「心配性だな君も」

 と、余裕を見せながらも、オキナミはスピーカーマイクを持って確認を入れる。すると――

「なにっ!? スイモンキョウを封鎖出来てないだと!!」

 イチモンジの不安は的中。警察はまだスイモンキョウインターチェンジの封鎖に乗り切れておらず、オキナミはその知らせを聞いて寝耳に水だと吠えた。

「クソッ、本部は何をチンタラ油売ってるんだ!」

 怒り狂うオキナミと、それを見て「あーあ」と落胆するイチモンジの事など知らない前方を走るレンタロウ達は、未だ打開策を模索しているところだった。

「フブキさん、後ろの車線全部埋められちゃいましたよ!」
「マズイな……車が無くなっちまったらこっから先、盾が無くなっちまうぞ」

 今までは一般車両の合間に入る事で、相手からの武力行為を敬遠していたのだが、それらがパトカーの封鎖により無くなってしまうと、レンタロウ達は丸腰同然となり、動く的と化してしまう危機に瀕していた。

「もしあっちが攻撃してきたら、こっちも反撃したらどうにかなりますかね?」
「んな訳あるか。あっちは乗り手が鉄板の装甲に守られてて、こっちは丸出しだぞ。撃ち合いにすらならねぇよ」
「だったらどうすれば……」

 直にやってくる絶対絶命の状況に為す術無く、二人が悩み込んでいると、前に見えてきたのはナギサ海峡を跨ぎ、ウィローシティのあるウィロー半島までを繋ぐ吊り橋、ナギサブリッジだった。

「橋か……あれを渡ったら下り口があるな」

 レンタロウはエアディスプレイに映るマップを見る。ナギサブリッジを渡った先にはスイモンキョウインターチェンジの表記があった。

「追手から逃げるなら下りた方が良さそうですが、下りた先で待ち構えられてる可能性もありますからね……」
「そうだな……だがこのまま走り続けても、ウィローシティまであっちが待ってくれるかどうか」

 スイモンキョウを越えた先には終点以外他に下り口は無く、レンタロウ達にとって、まさにこのナギサブリッジを渡るまでが捕まるか逃れるかのターニングポイントだった。

 そしてそれはイチモンジ達警察も同じであり、本部が頼りにならない今、現場ではついにある決断を下そうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...